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BTB 第4回「株式分割、配当」

今回のBTBは、「カンタンもの」を2つほど・・・

<株式分割>

言うまでも無く、株式分割は、価値と価格の交換にあてはまりません。
株式分割とは、単なる「両替」に過ぎないからです。
1万円札を、10分割すれば、千円札が10枚。
枚数が増える分だけ、一枚あたりの価値が減少する、ただそれだけです。
しかし、
現実の市場では、
株式分割直後に株価が「一時的に」上昇する傾向があります。
その理由は、

(1)単なる両替であることを知らない者が、「株式分割=株価上昇」と思い込み、
  需給バランスが(一株あたり価値とは無関係に)需要過多になることによる
  一時的株価上昇。

  あっという間に、元の水準まで戻ります。
  ちなみに、
  「売買単位の変更」は、株式分割と需給面においては全く同じ効果なのに、
  株式分割のような「一時的株価上昇」は、ほとんど起こりません。
  これは、株式分割=株価上昇」と短絡的に思い込んでいる者が、
  結構たくさん居ることの証でしょう。

(2)単なる両替であることは知っていても、(1)が起こりえることによって、
  そのチャンスを投機に利用する者の需要による一時的株価上昇。

  このような方々は、株価上昇に伴い、さっさと売り抜けるので、
  なおさら、「一時的な」株価上昇という結果を招きます。

(なお、分割後?50日間ほど、流通株式数が減少する結果を招く制度は、
 現在は修正されています。)

いずれにしても、「価値増加」を伴わない「価格上昇」は、常に「一時的」です。

と、ここまでは、このサイトの読者であれば、「当たり前」となると思いますが、
株式分割は、実は、企業価値を破壊します。(←少しですけど)
分割により、総発行済株式数が増加することによって、
「管理コスト」が増大するからです。

たとえば、株式分割の大御所(笑)ライブドアの場合、
上場廃止後も、臨時株主総会通知など、株主への連絡のために、
書類の印刷?封書の作成?送付?回収?処理と、
そのコストが、分割前に比べ相当に高くついています。
実は、
「ケーススタディー用」に、僕はライブドアの株式を「数株」保有しています。
わずか数株(=投資金額にして数千円)の株主のために、
決算報告だとかの書類が送られてきます。
その書類を送るだけでも、彼らの株主「数」から見て、
相当なコストになっているはずです。
毎度、「ご苦労様です」と、株主であることを忘れ、哀れに思います。

つまり、株式分割を行うことによって、管理コストが増大し、
投資家に帰属するキャッシュフローが「食われる」結果、
企業価値は破壊される、というわけです。
当然ながら、分割後の一株あたりの価値も破壊されます。

さらに、
以上の「株式分割による企業価値の破壊」を理解できない者を、
株式分割によって「呼び寄せてしまう」という弊害もあります。
結果、大多数の株主が「分割しろぉ!」などと騒ぐようになり、
仮に「議決権の過半数」が株式分割を求めれば、経営陣は分割を余儀なくされ、
さらに企業価値は破壊されることになります。

いつも書いているとおり、
株式投資とは、資金を持ってその企業という「チームに入る」わけですから、
自分以外の株主など、その企業の利害関係者が真っ当でなければ、
チームとしての「価値(=勝ち)」は見込めないわけです。
株式分割をやりすぎるような企業は、要注意。

株式分割よりむしろ、「最低売買金額」が大きい企業のほうが、
わかっている投資家によって株主が構成される可能性が高いですから、
少なくとも僕は、株式分割を望みません。

<配当>

配当については、過去に結構たくさん書いていますので、
是非、左フレームの「サイト内検索」にて、検索してお読みください。
(たとえば、KISS第108号「配当と時価総額」など)

カンタンにまとめると・・・
配当とは、株主価値の、株主による取り崩しです。
よって、
「配当前株主価値」=「配当額」+「配当後株主価値」
となります。
(「株主価値=企業価値?有利子負債」ですから、
 有利子負債の増減が無ければ、
 上記の式の「株主価値」を「企業価値」としても式は成り立ちます。)

「配当=株価上昇」ってのは、あまりにも「おばかさん」な理解です。

2006年10月23日 板倉雄一郎

PS:
突然ですが、
12月3日(日曜日)に、「レディース・セミナー・デイ」を開催予定です。
お留まり無し、パソコン持参無し、男子禁制(ただし僕やパートナーはOK)。
詳細が決まり次第、この場でご案内したしますので、よろしくお願いいたします。
また、過去の合宿セミナーの女性卒業生は、ディスカウント価格での参加OK。
(あのぉ?、変な目的で開催するのではありませんので、あしからず)

PS^2:
今日は、あいにくの雨ですが、今週もお仕事楽しみましょう!