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BTB 第11回「最適D/E比率実現のケース」

2007年2月27日の日経金融新聞13ページに、
「日本触媒(4114)、資本コスト抑え株価上昇狙う」という記事がある。

この企業の経営陣は、「資本コスト」について非常に良く理解している。
「株主資本コスト」 > 「有利子負債コスト」 であることから、「一般的に」、有利子負債による資金調達をある程度行った方が当該企業の加重平均資本コスト(WACC)を抑えることができ、結果として投資家から観た企業価値の最大化が実現できるのは明白だが、「なら、どういったオペレーションをすればいいか?」という点において、少なくとも日本企業の経営者は、理解と実践がほとんどできていない。
しかし、この企業の場合、D/E比率調整のために、有利子負債で新規に資金を調達し、その資金で自社株買いを行うことによって、D/E比率を調整すると言う「極めて合理的なオペレーション」を実施している。
すばらしい!

詳しく書くとエッセイが極めて長くなってしまうので、以下の過去のエッセイを参照していただければ幸いです。

参考エッセイ:(しっかり読んでくださいねぇ?)
DeepKISS第54号「最適D/E比率」
BTB第2回「自社株買い
DeepKISS第61号「真っ当な経営者の株価対策」
KISS第39号「配当と株主価値」
他多数。
(左フレームの「サイト内検索」にて、適当なワード・・・「自社株買い」とか「配当」とかによって検索いただければ、その他にもたくさんの関連エッセイを閲覧することができます。)
WEB上で読むのが面倒なら、こちらやこちらや、先日リリースしたばかりのこちらをどうぞ!

とは言え、このオペレーションの「本当の意味」を、資本市場のどれほどの人が理解できるか・・・

いずれにしても、このような「合理的な資本政策」を行う企業が出てきたことをうれしく思います。
さらに、日本経済新聞(本誌)は、かなり間違った理解の元に書かれた「とんちんかん記事」に溢れていますが(笑)、それに比べ、この「日経金融新聞」は、記者の知識や視点が真っ当です。
株式投資に絡んだ記事を読むなら日本経済新聞ではなく日経金融新聞です。

<注意>
以上の内容は、日本触媒に対する投資を斡旋するものではありません。
短期での株価変動について、僕は全く保証できません。

2007年3月2日 板倉雄一郎

PS:
強いて「いちゃもん」をつけるとすれば、なぜ割安だと認識しているのに「配当」を行うのか!ってことです。
まあ、細かい話ではありますが。