板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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IR物語 第27回「IRを活用しよう!実践編(3)」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。
本年もどうかよろしくお願いします。

今年は年初から世の中に元気がないですねぇ・・・。
明日にでも日本が終わってしまいそうな勢いです。
確かに不安を覚える問題は多々あるものの、「ピンチはチャンス」と捉えて前進していきたいと思う今日この頃です。

さて、本日のエッセイは久しぶりの「IRを活用しよう!実践編」です。

今回は、このエッセイで2回目となるSHOEIの株主総会リポートです。
(SHOEIの詳細はこちらをご参照下さい)

私が前回のエッセイでSHOEIを取り上げた際に、当事務所コミュニティの中で「SHOEIの株主になりましたよ」という声を多数頂きました。

それを聞いて、実はプレッシャーを感じていました。
「エッセイを読んで投資したのに、株価が下がった。どうしてくれる!」
なんて言われたらどうしようと・・・。

まぁ、当事務所コミュニティの皆さんは自立心に富んだ方ばかりなので、そんなことを言うはずがないのですが・・・(さりげなく牽制)

そんな心配をよそに、昨年は日本株が不振の中、SHOEIの業績及び株価は堅調に推移したので、ひと安心でした。

今回の株主総会もSHOEIの状態の良さが表れた素晴らしい総会だったので、皆さんに株主総会の模様をご紹介したいと思います。

<会場の雰囲気>

前年と同様に株主総会会場は神保町の日本教育会館
(→リンク先の右上写真にて起立して質問している男性が私です(笑))

相変わらず質素な運営ぶりで好印象。
前年は30人前後だった参加者が50人前後に増えていました。

<株主総会の内容>

基本的な構成は前年と同様でした。
前回のエッセイをご参照下さい。)

相変わらず山田社長はサービス精神旺盛な説明ぶりで、2時間にわたり様々な説明を頂き、とても勉強になりました。
それを全てお伝えすると相当長くなってしまうので、今回は特に印象に残った点についてお伝えしたいと思います。

1.利害関係者間のバランス

今回、改めて感じた点として、SHOEIは利害関係者間のバランスの取り方が非常に上手であるということです。

株主総会という場では、とかく株主に対する利益配分の話ばかりになりがちです。
しかし、山田社長の説明からは「様々な利害関係者に配慮しているな」ということが強く伝わってきました。

会社が存続・成長するためには、株主だけでなく、得意先・従業員等の利害関係者に対してバランスよく満足を提供することが必要になります。
そして、そのためには各利害関係者との対話が重要になります。

これが言葉にするとカンタンなのですが、実行するのは非常に難しい・・・。

今回の説明により、「SHOEIが株主、従業員、販売代理店、ヘルメットを購入する一般顧客、金融機関等の利害関係者に対してどのようなスタンス(事業方針)に基づいて経営しているのか」という点がより深く理解できました。

2.資本政策の意図

SHOEIは昨年末に1:2の株式分割を実施しました。
最近、株式分割が全く流行らなくなった中で、なぜこの時期に株式分割をしたかというと・・・東証1部上場を見越しているからと推察しました。

昨年東証2部に上場したSHOEIが東証1部に上場するために唯一欠けている形式基準は「株主数」です。現在の1,392名から少なくとも2,200人まで株主数を増やす必要があります。

この点について、「今回の株式分割で09/3期末の株主数が2,200人まで到達しなかった場合、何か他の資本政策を考えているか?」という質問をしてみました。

これに対して山田社長は、
「今回の株式分割が東証1部上場を目的としたものであることはお察しのとおりです。

まずは株式分割だけで2,200人に到達すればそれに越したことはない。
もし、到達しなければ現在保有している機関投資家に立会外分売をお願いすること等で株主数の増加を図りたいと考えており、公募増資は考えていない。
個人株主を増加させたいので、皆様の周りにもSHOEIの株式を是非勧めてください(笑)」との回答でした。

東証1部に行くためだけに公募増資を行うとすればナンセンスだな、と思っていたので、今回の回答にひと安心でした。

東証1部に上場するだけで企業価値が向上するわけではありませんが、信用力・ブランドのさらなる向上、流動性の向上等を考えると、SHOEIにとってはポジティブな材料だと思います。

3.今後のマネジメント体制

今後のマネジメント体制について、ちょっと冗談めかした質問をしてみました。
質問の内容は「山田社長を筆頭に現経営陣を大変信頼しているのだが、いつまでやってもらえるのか?」というものでした。

これに対する山田社長の回答は次のとおりでした。

「適切な時期に経営者の交代を考えている。
会社の強さは最終的に人材で決まる。
経営者が変わったからといって、会社が傾くことのないように人材育成を進めており、07年10月に若返り人事を実施した。
昔、SHOEIが経営危機に陥り、(山田社長が)管財人に就任して以来、15年が経過した。その当時に採用した人材が順調に育っており、重要なポジションに就任する時期になっている。
三菱商事(資本提携先)からの人材と内部昇格の人材を活用することで、経営陣が交代しても質の高い経営ができると考えている。」
とのことでした。

「自分が採用した人材が15年かけて育ってきた」というあたりに、よちよち歩きのベンチャーではない歴史が感じられます。

この質問に限らず、山田社長は「人材(組織)の重要性」に関する説明がとても多く、人材・組織作りに注力している印象を受けました。

<最後に>

SHOEIは事業運営・資本政策・IRどれをとっても優秀だと思います。
また、株価もそれに伴って評価されてきました。
そのため、現在の株価水準に割安感はなく、妥当な株価だと思います。

しかし、
「まずまずの企業を素晴らしい価格で買うよりも、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うことの方が、はるかに良い」
(「バフェットからの手紙」より引用)

ということで、私は引き続きホールドの予定です。

この元気のないご時世において、前向きかつ明快な経営者が率いる会社の株主総会に出席すると、こちらも元気をもらえる感じがします。

前年に引き続き、晴れやかな気持ちで株主総会会場を後にしました。

2008年1月24日  S.Yoshihara
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