板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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IR物語 第37回「株主総会の質疑応答を盛り上げる3つのコツ」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの吉原です。

6月下旬は3月決算企業の株主総会シーズンですね。
皆さんの中にも株主総会に参加される(された)方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回、私は残念ながら日程が合わず、1社も参加することができません・・・。
ここ数年、モノ言う株主の活躍が目立つ中、今年の株主総会もアデランスの事例のように波乱が起こる会社も増えるのでは、と思っているだけに残念です。

過去、「株主総会」については何度かエッセイでも取り上げました。

(主な参考エッセイ)
 IR物語 第13回「株主総会の楽しみ方~議決権行使編~」
 IR物語 第14回「株主総会の楽しみ方~IR編~」
 IR物語 第27回「IRを活用しよう!実践編(3)」

そこで、今回はちょっと趣向を変えて、
「株主総会の質疑応答を盛り上げる3つのコツ」
というテーマを取り上げてみたいと思います。

株主総会の醍醐味のひとつに「質疑応答」があります。

「質疑応答」のデキの良しあしで、株主総会に対する(出席者の)満足度は大きく変わります。
(ちなみに、イマイチな質疑応答の事例はこちら

そして、質疑応答の主役といえば「個人株主」です。

運用のプロである機関投資家のほとんどは議決権を郵送(インターネット)にて事前に行使するため、株主総会には出席しません。
そのため、質疑応答のデキは個人株主による質問の内容によって左右されます。

私は、ある上場企業の株主総会では個人株主から「質問を受ける」立場として、また、他社の株主総会では「質問する」個人株主の立場として、数多くの質疑応答を経験させていただきました。

その経験に基づいて、「株主総会の質疑応答を盛り上げる3つのコツ」をご紹介したいと思います。

【1.質問は簡潔に】

何だかいきなり「当たり前だろ」って内容ですが、意外とこれが守られていないケースが多いです。

よくあるのが、「一度に相当な数の質問をする場合」「質問がやたらと長い上、趣旨が不明確な場合」です。

どちらの場合も質問のポイントが絞りにくく、かつ、回答者は何とでも答えられるので、議長及び他の役員から面白みのない回答が帰ってくる可能性が高いです。

このケースは、質問する株主側の自己顕示欲が強過ぎる(オレはわかっているんだぜ、というアピール)ため起こることが多く、質問することそのものが目的になっていたりもします。

そのため、周囲の株主からも「おいおい・・・」という雰囲気が発せられ、全ての株主に取って有意義な時間にならないことが多いです。

個人的には、一人当たりの質問の数は多くても3つぐらいが良いと思います。

【2.十分な下調べにより経営陣を唸らせる質問を】

十分な下調べによりその企業の重要な論点を的確に突いた質問が出ると、回答する経営陣としては緊張感が高まります。
そして、周囲の株主も「なるほど、この質問の回答は聞きたいな」という感じで雰囲気が引き締まります。

こうした時、議長の立ち振る舞いがその場の盛り上がりを決めます。

議長の立ち振る舞いが質問に正面から向き合ったのかどうか、株主は敏感に感じ取るので、それによって株主総会の雰囲気が良くも悪くも変わります。

ある意味、経営陣のキャラクターを見極める良い機会になります。

【3.周囲の株主を巻き込む】

様々な株主の方による質問を拝見していると、周囲の株主を巻き込むのが非常に上手な株主がいらっしゃいます。
周囲の株主が「そうだ、そうだ!」と賛同するような質問は、下記のような特徴があります。

 (1)多くの株主にとって関心の高いテーマである
 (2)質問の内容及び仕方にユーモアがある

このような雰囲気になると、経営陣も株主に向き合って誠実に回答する度合いが高まるため、質疑応答も盛り上がります。

【まとめ】

結局、上記3つは「上手なプレゼン」に共通する要素とも言えます。
「質問者」が仕掛け、「回答する経営陣」及び「周囲の株主」との共同作業によって盛り上がり度合いが決まるということですね。

皆さんも株主総会で質問して、質疑応答を盛り上げてみてはいかがでしょうか?今後、皆さんが株主総会で質問する際に少しでも参考になれば幸いです。

P.S.
いよいよ今週末に迫ってまいりましたオープンセミナーですが、おかげさまで今回もお申込み者数が100名を越えました。
お申込み頂いた皆様、ありがとうございます!

「有価証券報告書の読み解き方」セミナーは、「アデランス」を題材にした面白いコンテンツに仕上がりました。
アデランスの経営陣の再任が、なぜ株主総会で否決されたのか?
その裏側に迫ります。
公認会計士の木村パートナーによる解説にご期待下さい!

一方、代表の板倉による講演は、「失格社長の10年」がテーマです。
正直、私もその内容については知らされていません。

ただ、これまでの講演では聞くことのできなかった(10年の経験が凝縮された)興味深い内容になると思うので、個人的にも非常に聞いてみたいです。

2008年6月26日  S.Yoshihara
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