板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「釣られているのは誰?」

釣道具を買出しに行くと、結構いろんなモノを買ってしまいます。
ひとつの道具でも、実際に釣具屋に行くと、さまざまな「グレード」があり、ハイグレードなモノは、買う者の目を惹きます。
グレードの違いは、それが並べて陳列されていればなおはっきりします。
ついついハイグレードなモノが欲しくなってしまいます。
しかし、そのハイグレードは、所有する喜びを満足させてくれるだけで、釣果にはほとんど影響がない場合も少なくありません。
そんな道具に投資する人(まれに自分の場合もありますが)を見るたび、
「釣られているのは魚じゃなくて、人間だな」
と思ったりします(笑)
もちろん、その人を釣っているのは、企業という名の別の人間(の集団)です。
所有する喜びを完全に否定するつもりはありませんが、釣果が上がって初めて釣行に満足できるわけですから、投資すべきは、
「高価な道具」ではなく、
対象魚や釣りをする場所に関する「情報」と、
情報を分析し、魚の居場所を判断するための「知識」であるべきです。
だって、
「どんなに高価な道具を使っても、魚が居ないところでは釣れない」
わけですから。
魚の居場所を特定するために必要な情報は結構たくさんあります。
季節、水温、日照量(時間帯)、風の強さと風向き、
水深の変化など地形、水のにごり具合、水生植物の状態、
対象魚の捕食対象の種類や状態や居場所、
他の人の釣果情報、自分の過去の釣果実績、
釣り人が魚に与えるプレッシャー、
(↑どれほど好条件の場所でも、たくさんの釣り人が居れば、魚は散るので釣れなくなります。)
それらを持てる知識によって分析し、最終的には「勘」も動員して、釣る場所と釣り方を選び、釣りに望まなければ満足する釣果は得られません。
釣りを継続的に楽しんでいる人が最も満足する釣果は、
「自分が推測したポイントで、実際に大物が釣れた時」であって、
「他人の言葉を鵜呑みにして、連れて行かれたポイントでの大物」ではありません。
少なくとも僕の場合は、そうです。
しかし、情報を集め、それを分析し、その分析を信じて釣行に望むことは、カンタンなことではありません。
かくして、「○○という場所が大物が出るよ!」という他人の釣果情報を鵜呑みにすることになります。
果たして、「プレッシャー」が釣果を左右することを知っている釣り人が、本当に大物がホイホイ釣れる場所を見ず知らずの他人に教えるでしょうか?(笑)
その場所は、確かに過去に実績があった場所かもしれませんが、今はもう季節はずれだったりするのではないでしょうか。
以上の「釣り」に関する話は、株式投資に非常に似ていると思いませんか?
機関投資家の決算期などの「季節」、
各国の経済状態、金利動向?為替の先行きといった金融的な「地形」、
投資家のレバレッジやインフレ率など市場の「温度」、
投資家から観てどれほど好条件の企業でも、皆が殺到した結果、割高になってしまっている企業では満足する投資結果が望めないという「プレッシャー」、
これらの情報を集めなければ、投資実績は上げられません。
しかし、どんなに情報を集めたところで、その情報を分析する「知識」がなければ、情報の持つ価値を十分に投資に生かすことはできません。
確かに、「知識」を簡単に習得することはできません。
かくして、「○○○株式会社が上がる!」なんていう他人の言葉に翻弄されてしまうわけです。
皆が殺到する「プレッシャー」は、それ以前の「おいしい時」に投資した人のおいしさを、一層引き上げるだけであって、新規参入者にとっては、すでに季節はずれだったりするわけです。
皆が殺到した頃には、「ここが上がるぜ!」と言った人は、もうそこに居ないわけです。
自ら情報を集め、自ら知識を磨き、自ら出した結論に基づく行動ができるようになることは、釣りにおいても、株式投資においても、とても大切なことです。
だって、利害を共有していない見ず知らずの他人の言葉を、「信じ続ける」ことなんてできないですから。
自分で判断し、自分で行動することができるようになって初めて、
「釣られる側から釣る側に成れる」のだと思います。
2007年9月21日 板倉雄一郎
PS:
先週末から19日(水曜日)まで、裏磐梯は桧原湖にてスモールマウスバスフィッシングを楽しんでいました。
おかげで、19日のエッセイをサボってしまいました。
ゴメンナサイ。
釣果には満足しました。
皆が「ディープだ!(←水深の深いところが釣れるという意味)」と連呼し、水深の深い場所の湖底に起伏がある場所に殺到していました。
僕も最初のうちは、「他人の言葉」に従い、ディープを攻めましたが、釣果はいまひとつでした。
で、他人の言葉より、自分の分析を信じようと思い直しました。
この季節、ターンオーバーと言って、気温が下がることによって冷えた表層の水が落ち込み、その代わりに深層にあった水が浮き上がり、湖中の水が引っ掻き回される現象が起こります。
ターンオーバーが起こると、釣れなくなります。
その原因は、「酸素」の少ない深層の水が、湖全体に行き渡ってしまい、魚の「活性」が下がるからです。
「ならば酸素があるところを探せばいい」
植物は、光合成によって酸素を発生させますから、ウィード(←水生植物)が枯れずに残っている場所を見つけることができれば、釣果は上がるはず。
幸い、シャロー(浅瀬)にウィード群を見つけることができ、その場所で、ほぼイレグイすることができました。
2日目の午前中、その場所を見つけてからの1時間強で、スモールマウスバスとしては割りと大きい35cmを含む10匹。
このときは、同行したセミナー受講生たちとの「なんちゃってトーナメント(笑)」をやっていたのですが、結果は、数もサイズも僕が優勝です。
(↑ 過去の経験がもっとも豊富だったので、当たり前といえば当たり前ですが、前日に行われたプロトーナメントの優勝者の釣果より、この日の僕の釣果の方が上回りました。)
自分のこの眼で観た「バスが捕食しているであろう海老」や「ワカサギ」にもっとも似ているルアーを探し、
自分の知識や経験によって判断したポイントでの釣行の結果です。
あのまま、他人の過去の釣果情報を頼りにしていたら、満足する結果にはならなかったと思います。
株式投資においても、釣りにおいても、自分を信じる(=信じられる自分を創る)ことが、満足する結果につながるのだと思います。
自分の判断を信じて失敗したなら、責めるべきは自分以外にありません。
そのときは、
「あいつの言うことを聞いていればよかった」という反省ではなく、
自分自身の失敗から何かを学べばいいのです。
僕は、船長がポイントを探し、船長が対象魚の居る水深を指示し、船長の支持のまま行う「乗合船」の釣りが大嫌いです。
思考なく、ただただ釣り糸を垂れるなんて、まるで奴隷だと思います。
ただ「食べるため」なら、魚屋に行くのが最も合理的です。
ただ「食べるため」の稼ぎなら、知識が十分でない人にとってリスクの高い株式投資より、普段の労働によるインカムのほうが遥かに合理的です。
PS^2:
ちなみに、僕たちが提供するセミナーでお伝えするのは・・・
「どこが釣れるのか(=どの銘柄が上がるのか)」ではなく、
「どこが釣れるのかを自ら分析するための知識」です。
「今、○○が上がる」という情報は、それが本当だとしても、その情報の価値は、「今」にしか存在しません。
しかし、「どんな企業が株主価値を増大させうるか」という知識は、(資本主義経済が続く限り)いつまでも有効です。
しかも、「知識」は使えば使うほど、その価値が増大します。
だからこそ、「一生モノの知識」だといえるのです。
今週末の第1回大阪セミナーは、「ほぼ」満員にて募集を締め切りました。
次回開催は、第27回合宿セミナー(東京開催)です。
「釣り教室」ではありませんので、あしからず(笑)
PS^3:
また釣りの話に戻りますが・・・
僕は、8年間ほど、バスフィッシングをやっていませんでした。
けれど当時から、「自分で情報を集め、自分で判断し、自分の判断を信じて釣行する」というスタイルを行っていたので、8年ぶりの釣行でも、満足の行く結果になったわけです。
あの当時鍛えた知識は、8年たった今でも、情報さえアップデートすれば、十分に価値がありました。
もし、あの当時、「あの場所が釣れる」なんていう他人の情報を頼りにした釣りをやっていたら、8年ぶりの釣行は、ゼロからのスタートになっていたでしょう。
でも、釣果との引き換え、というわけではありませんが、ひとつ大切なものを失いました。
この場では、場違いなので、失ったものへの記述は避けますが、これも失敗のひとつ。
せっかくの失敗は、その失敗から「何を学ぶか」によって、将来の成功の糧になりえます。
僕は、何かに失敗するたび、学習意欲が増すのです(笑)





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