板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「バフェット氏の提案と株価」

先ほどのエッセイのPS部分で記述した「バフェット氏の存在感」について・・・

バフェット氏がモノライン数社が保有する「再保証契約」の内、割とリスクの低い地方債などに対する保証契約などを買い取る提案をした(←つまりバークシャーが先日設立した再保証会社の事業活動)、というわけであって、一部で誤解のある「モノラインの買収」または、「モノラインへの純粋投資」ではありませんのであしからず。
そして、「モノラインに対する救済策」という表現も、特に日本のメディアで見かけますが、これモノラインにとっては全然救済策になっていませんからね(・・・この下の文章をお読みください。)


米メディアの報道によると、概ね、
「バフェット氏の提案によって、金融業界のリスクが軽減されたと認識され、株価が上昇した」
と伝えられています。

確かに株価(ダウ)は上昇しましたね。

これ、
(1)バークシャーの再保険への参入によって金融証券リスクが下がった。
(↑ バークシャーのビジネスによる実質的な経済効果)
という認識と、
(2)バフェットが動くのだから、もう底じゃないだろうか。
という認識と、
(3)(2)と思う投資家がたくさん居るだろうから、株価は上昇に転じるだろう。
という認識によって、株価が多少上昇したのであって、様々な企業の株主価値が「増大した」、または、「減少が止まった」ということとイコール「ではない」という点に注意が必要です。

バフェット氏は、彼自身のビジネスとして、そのチャンスを生かした(←リスクに対しリターンの高い金融商品を買おうとする提案をした)わけです。
バフェット氏のその行為が、「結果として」金融システム全体にプラスに働く可能性があるとは思いますが、北米の実体経済の減速、もしくは後退の懸念(←つまり企業の株価ではなく、その担保であるところの株主価値が減少する懸念)を、直接的に食い止めた、というわけではありません。
この点、注意が必要です。

バークシャーの株価は、発表同日、0.18%下げました。
上げたか下げたか、という仕訳では確かに下げましたが、Yahoo!への買収提案を行ったMSの株価の下げ具合から見れば、「変わらず」というところです。

一方、バフェット氏が買い取ってくれない「CDOなどヤバイ保証契約」だけが残ってしまう可能性のある既存のモノライン各社の株価は下げました。
(↑ ね。全然救済になってないでしょ)

結局のところ、金融工学をバリバリ使って「儲けたぞぉ!」って言っていた方々は、調子に乗りすぎ、足元を見られた、というところですよね。

世界規模でも、「イスラムのお金」などに頼らざるを得ない欧米企業の姿も、なんだか上記と同じような感じですよね。

2008年2月13日 板倉雄一郎

PS:
僕自身の話で恐縮ですが、もう既に「価値 > 価格」の日本企業はたくさんありますから、僕が持つ運用されていない銀行預金を証券口座に移転して買い始めても良い「価格帯」だとは思うのですが、自分の価値評価についても、その一つの因数であるところの経済見通しについても、なぁ?んかしっくりこないので、買えないのです。
こういうときは、何もしないでいるのも一つの手ですね。
結果的にチャンスを逃すことになったとしても、しょうがないですからね(笑)

スージ、や、理論は、「必要な道具」であることは疑いが無いのですが、それだけじゃないんですよね。
僕の語彙では、「勘」としか言いようが無いのですが、それも大切ですよね。
(「勘」があれば、数字も理論も要らない、って事では全然ありません。
 ただ一度のルーレットで、赤か黒かという場合の「勘」と、
 割と長期に渡る株式投資の「勘」は、全然性質が違います。
 後者の場合、その「勘」を研ぎ澄ます道具として数字や理論が必要ですから。)
しっかり調べ、しっかり評価し、「こりゃいけるでぇ!」と自信を持った上での失敗なら、諦めることもできますが、「なぁ?んかしっくりこないけど、一応買っておくか」なんて考えで失敗したら、お金を失うだけではすまないですからね。

投資リスクが軽減される「もう一手」がなにか欠けている感じがします。
欠けているのは、自分の知識や情報なのか、それとも経済指数なのか、それとも個別企業の足元の業績なのか、それとも各国政府の金融に対する取り組みなのか、その辺ははっきりしませんが、投資判断において、何かが足りない感じなんですよね。
以上、独り言でした。すいません。





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