板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「理念か、計画か」

たとえば、資金調達を必要とする事業を始めようとするとき、
多くの事業者は、「計画」をひたすら練ります。
そして、「金が集まりますように!」と、
「金が集まりやすいような計画」を作り、資金調達に奔走します。

本来、資金調達より、その後の「運用=事業」の継続のほうが、
遥かに難しく、遥かに価値があると言うのに。

一方、資金を提供する側も、
「どれどれ、どんな計画なのかな?=どれほど儲かるのかな?」と、
その計画を重点的に見ようとします。
結果、「結構儲かりそうだ!」となり、「作られた計画」に対し、
「儲け」を唯一の目的として投資したりします。

経営理念のチェックはおろそかになりがちです。

以上の結果、
投資家の期待収益率は高く、よって、事業効率はもっと高く要求されます。
事業者は、投資家の高い期待収益率に追い回され、
なんとしてでも計画を全うしようとします。

計画遂行が最優先となり、
いつしか、当初の事業理念は薄らいでゆきます。
計画遂行のために、がむしゃらに働くことになります。
最悪の場合、違法なことまでするようになります。
すべては、事業者が「金を集めるために作った計画」の功罪です。
多くの場合、このようなスタートをした事業は、失敗します。
なぜなら、投資家の高い期待収益率を満足させるために、
本来とる必要の無いリスクを取るハメになるからです。

以上のような事業スタートを、少なくとも僕は嫌います。
少なくとも僕の場合、何かの事業を行うとき、
それには、金儲け以上の目的があります。
すなわち「事業理念」です。
計画を重視するあまり、「理念より計画」が優先されてしまい、
いつしか投資家の奴隷となることを嫌うからです。
(どこかの有名ファンドの結果と同じです。)

「計画より理念」であるべきだと思います。
計画など必要ない、と言っているわけではありません。
理念に合致した計画であるべきだし、
不測の事態には、計画より理念を優先すべきだと思います。
その点を強調した上で、それでも集まる金によって事業をすべきです。

世の中、事業を始めれば、不測の事態ばかりなのですから。

人は、意外と、「儲けより理念」を尊重して投資するものです。
「儲けだけ」を目的にした金を引き受けた者は、
「儲けだけ」を目的にせざるを得なくなってしまいます。
そんなことに、人生の貴重な時間を使うのは、馬鹿げています。

計画をトレースする人生より、
理念を貫徹する人生に、より高い価値を感じます。
そう思える人間に、出資していただくことが、
理念を貫徹する事業を実現する上での必要条件です。

事業の成否は、資金の運用面より調達面によって決まるのです。
資金の調達面で、過去に大失敗した僕が言うのですから、
きっと間違いはありません。

2006年6月20日 板倉雄一郎

PS:
そろそろ「事業」を始めたくなりました。
もちろん、今の活動理念を全く変えることのない事業です。
理念を曲げてまで、人生の貴重な時間を浪費したくはありません。
筋の通った理念の構築こそ、投資においても、経営においても、
最も重要なことなのです。
その理念に賛同しない者を、利害関係者に入れてはなりません。
すべての利害関係者の理念の一致が、
少なくともスタートアップにおいては、最も重要なのです。

PS^2:
ご案内している「実践・企業価値シリーズ」第18回合宿セミナーは、
来週月曜日26日で、その募集を締め切ります。
今回は、再受講生を受け入れるため、初受講生の人数を制限します。
あと数名の席が空いております。
ご興味のある方は、是非「この機会」に。

8月が夏休みのため、合宿セミナーは実施いたしません。
また、9月以降は、夏休みの「インプット期間」の結論によって、
これまで同様に開催するか否かを検討いたします。
止めてしまう可能性がある、ということではありません。





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