板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「もっともっと」

何かがうまく行っているとき、人は「もっともっと」と今以上を追い求めようとします。

たとえば・・・
株式投資において「価値と価格」に着目し、自分の下した価値評価に自信を持てれば、評価損益という株式を買った過去の価格と「他人(=ミスターマーケット)が付けた現在の価格」の「価格と価格の比較結果」に翻弄されることがなくなります。
結果として、「その価値算定が正しければ」、時間経過と共に価値と価格は均衡し、買収時の裁定利益と時間経過による価値創造の恩恵を受けることが出来ます。
しかし、以上がうまく行くと、「もっと儲ける方法は無いだろうか?」などと欲が出ます。
「多少不安のある企業でも、価値と価格の乖離が大きい企業を探そう」とか、
「価値把握が出来ているのだから、そのうえでチャート分析などテクニカル分析によって、売り買いを煩雑にやればもっと儲かる」とか、
まあ要するに、人は、せっかくうまく行っているというのに、もっとうまく行く方法を探そうとするわけです。
そして、その欲の結果、痛い思いをする場合が極めて多いわけです。

たとえば・・・
彼女(彼氏)との2回目のデートでは、
「一回目がああだったから、今度は少し進めて、こんなところに誘って、んでもって・・・」などと、欲を出すわけです。
なんというか、「今回でたたみ込もう」みたいな(笑)
しかし、2回目のデートを互いに約束したということは、初デートが成功だったわけで、せっかく成功だったわけだから、2回目も余計なことを考えず、一回目と同じような気分で望めばよいわけです。
それを繰り返せば、気が付いたときには、それなりの関係になるものです。
(ちなみに、ベッドの上でも同じことが言えますが、ここでは具体的には書きません(笑))

以上は、「改善」を否定しているわけでもなければ、「変化」を求めるべきではない、ということでもありません。
物事がうまく行っている「その原因」を正確に把握することがもしできれば、「その原因以外」の部分に対するある程度の変化を試すことは合理的だと思います。
しかし、うまく行っている「その原因」を正確に把握することはきわめて難しいのです。
デートでも、株式投資でも、企業経営でも、うまく行っている「その原因」は、本人の自覚のないところにある場合が多いのです。
本人は「あの台詞がよかったんだ」とか、「俺ってかっこいいからさ」とか思っていても、その実、単に「ガツガツしない姿勢」が冷静な分析と判断を実現させているだけだったりします。なのにちょっとうまく行くと「もっともっと」と、「ガツガツ」が始まり、すべてが失敗したりするものです。

うまく行っているときに、
「もっともっと」と、それまでの方法を変えるリスクは、
うまく行かないときに、
何かを変えてみることによるリスクより遥かに大きいのです。

かく言う僕の過去は、まさに「もっともっと人間」でした(笑)
企業経営においても、恋愛においても、ワンナイトスタンドにおいても・・・・
うまく行っているその原因は、割と単純に「ガツガツしない」ことに起因する場合が多い、そんな風に思います。
事実、ガツガツをなくしたら、あらゆることが好循環を始めました。
「急がば回れ」も、
「無欲は大欲」も、
「慌てる者はもらいが少ない」も、
すべて、以上を簡素にまとめた格言ではないかと思います。

ウォーレンバフェット氏の資産増加におけるCAGR(=年平均複利成長率)は、高々30%強です。
ある年の投資パフォーマンスが30%なんていうのは、ちょいと勉強して、ちょいと運が良ければ誰でも達成できるパフォーマンスです。
しかし、そのパフォーマンスを60年以上安定して継続することは、至難の業です。
何が至難の業なのかといえば、「ある一定の手法を飽きずに繰り返し、決して焦らないこと」が至難の業なのです。
当たり前のことを、当たり前のように繰り返す・・・これ、人間にとって結構難しいことだとおもいます。

継続は力なり。

2006年5月17日 板倉雄一郎

PS:
同じ方法を繰り返しているうちに、それが通用しなくなったら、新しい方法を模索する前に、「実は同じ方法だと思っていたけれど、なにかを変えてしまったのかな?」と考えてみることです。
気が付かぬうちに「ガツガツ」していたのではないか?
とかね。
それでも駄目な場合、初めて大きな変化に望むべきです。
そのときは、あっさり過去の成功を捨て、新たに望むべきです。





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