板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「割高スクリーニングのススメなど」

<割高企業スクリーニングのススメ>
このところ、新興企業をはじめとする株価低迷が続いています。
新興企業ばかりではなく、TOPIXや日経225なども昨年に比べればかなり安くなっています。
なのに!
投資家にとって条件の良い企業は、依然「割高」の状態が続いている・・・というより、そのような企業に資金が集中する結果、相場全体のトレンドとは逆に、むしろどんどん高くなっています。
ちなみに、「投資家にとって条件の良い企業」とは・・・
(1)過去から継続的に株主価値を増大させてきた企業
(2)今後も継続的に株主価値を増大させうるであろう企業
(3)合理的な財務オペレーションを継続して行っている企業
(4)商品付加価値が高く、よって、原材料価格の上昇を商品価格に転嫁できるであろう企業
といった条件を持つ企業です。
こりゃ参った!
しかし、
「ならば、割高企業を探そう!」
という考えにチェンジしましょう。
つまり、現在の相場下落トレンドの中でも資金が集中し、株価が上昇を続けている結果、明らかな割高になっている企業は、投資家から観て、「それなりに投資に値する価値がある」という場合か、「単に話題性がある」という場合か、「単なる仕手株」のどれかだからです。
もちろん、探すべきは、「投資に値する価値がある企業」なのはいうまでもありません。
一つ一つの企業を企業価値評価して、割高/割安を判断する必要はありません。
あくまでスクリーニングですから、ざっくり・・・
?PERでもかまいませんし、
(2)配当利回りでもかまいませんし、
(3)フリーキャッシュフローから継続価値計算式を使う方法でもかまいませんし、
(これ、と、これ、と、これにて説明しています。)
(4)株価チャートが急速な右肩上がりになっている場合でもかまいませんし、
まあどんな方法でも良いわけですが、とにかく資金が集中している企業を探しましょう。
これぞ!という企業を見つけたら、次はしっかり企業価値評価を行ってみましょう。
「割高だとわかっている企業の企業価値評価なんてやりたくね」
と早合点しないでください。
なんどもエッセイを通じて表現していることですが、
「割安企業を見つけて投資する」のではなく、
「投資家にとって良い条件の企業を探し、
      大幅な割安になるのを待ち、
      チャンスが到来すれば集中投資する」
このほうが遥かに合理的な投資手法なのです。
なぜなら、
ある瞬間の割高/割安は、売買タイミングを図る上で非常に重要なことですが、その企業が時間経過と共に、株主価値の創造/破壊とは、「まったく無縁」なことだからです。
やってみる価値はあると思います。
「こんないい企業があったのかぁ!」と見つけたら、
後は、何ヶ月でも、何年でも、その企業の株価が、
「大幅な割安(=一株辺り価値 >> 株価)」になるのを気長に待ちましょう。
「待つのも相場」とは、よく言ったものです。
<再評価のススメ>
このところの下げ相場で、評価損が膨らんだ!という方、たくさんいらっしゃると思います。
こんなときこそ、冷静に、企業価値評価をするすばらしいチャンスです。
何度も表現していることですが、「評価損益」とは・・・
過去に自身が投資したときの株価と、現在の市場株価の「差」でしかなく、そこには「価値」の概念が基本的にありません。
したがって、評価損益に翻弄された売買を繰り返すということは、いくら投資時点で企業価値評価を行っていたとしても、「価格(ミスターマーケット)に翻弄される投資」といわざるを得ません。
保有銘柄の企業価値評価を、「現在の情報(・・・たとえば為替見通しや米国経済の行方など)」に基づき、今一度冷静に行うことをお勧めします。
その上で、当初評価したときより、株主価値が下落していて(つまり当初の評価が間違っていて)、現在の株価より低い価値が算出されたのなら、勇気を持って「投資の失敗」を認め、損切りすることを強くお勧めします。
自分の失敗を認めることは、簡単なことではありませんが、失敗からは、成功から得られる以上の知恵や知識を学ぶことができます。
経済的に失敗した分、知恵を得ることができれば、その失敗は後に成功の原因となりえます。
失敗であることが薄々わかっているにもかかわらず、それに目を向けないとすれば、失敗が継続し、且つ、失敗から何も得られないでしょう。
今日100円損したら、明日100円以上稼げばいいのです。
今日100円損したおかげで、たくさんの知識と知恵を吸収できれば、
明日300円稼ぐことだって不可能ではありません。
僕も、このところひとつの投資に大失敗しました。
理由は、明らかに「調査不足」でした。
ある重大な問題(=企業価値に大きなインパクトを与える事象)を、見逃していました。
かなり痛い金額(マイナス利回り)でしたが、失敗を認め、あっさり損切りしました。
清々しい気分です。
同じ失敗を2度と繰り返さなければそれで良いのです。
<じゃあ、どうしたらいいんだよ!>
人間関係においても、自分自身の精神状態においても、
「じゃあどうしたらいいんだよ!」
と言ってしまったら、それは「お終い」を意味すると思います。
部下が、「じゃあどうしたらいいんですか!」と言い出したら、もうその部下は、少なくともあなたの下では十分な価値を提供しないでしょうし、
恋人が、「じゃあどうすればいいんだよ!」と言い出したら、もうその恋人は、少なくともあなたの恋人ではないと思うのが無難です。
どうすればいいのか?は、自らが考え提案すべきことですし、それこそが「人間としての生きる意味」なのだと思います。
株式投資においても、恋愛においても、普段の仕事においても、
自分自身が、心の中で、「じゃあどうしたらいいんだよ!」と投げやりになっていないかどうか、常にチェックする必要があると思いますし、自分自身の周りに安易に「じゃあどうしたらいいんだよ!」という態度の人間が居ないかどうか、常にチェックすべきだと思います。
2007年9月28日 板倉雄一郎
PS:
今週末は、夏季休暇でお休みしてしまった、当事務所プレミアムクラブ向けストリーミング、および、セレクテッドエッセイの収録です。
ついでにものすごく久々の都心のホテルでの時間を楽しみたいと思います。
この半年、テントばっかりでしたから(笑)
病み上がりの療養にはうってつけだと思っています。まだ咳が止まらないけど。
皆様も良い週末を!





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