板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「ミスターマーケットなど短編」

<ミスターマーケット①>

あなたは、
一ヶ月前に100万円の株価を支払って手に入れた株式を持っています。
今日、あなたを訪問したある人が、
「あなたの株式を50万円で譲ってくれませんか?」と、言いました。
あなたは、売りますか? それとも売りませんか?

多くの人は、「売りたくない」と思うでしょう。
しかし、その「理由」は、それぞれに違うのではないでしょうか。
たとえば、
「100万円で手に入れたから50万円では安すぎる。」と思う方、
意外と多いのではないでしょうか?
このサイトにいらっしゃる読者の場合、違うかもしれませんが。

たとえば、
「100万円以上の価値があるから50万円では売らない。」と思う方、
世間では、けして多くはないと思うのです。
もし、たくさんの方がそう感じたとしても、
その場合の「価値」の根拠が、
「一ヶ月前に100万円という価格で買ったから。」と言う場合、
結構多いと思うのです。
しかしこれは、本質的に、
「100万円で手に入れたから50万円では安すぎる。」
という理由と変わりません。

さてでは、価値に注目したあなたへ。
明日、ものすごくたくさんの人が、あなたを訪問して、
一様に、「あなたの株を、50万円で譲ってください」と言っきたら、
どうしますか?

「そんなに多くの人が、50万円が妥当だと言うのなら・・・」という理由で、
「100万円以上の価値があるから」という、あなたの心は揺らぎませんか?

「心揺らぎ、しぶしぶ売ってしまう」と思うあなたは、
投資にあまり向いていないかもしれません。
しかし、
「そんなに多くの人が、50万円で欲しいと言うなら、
 50円で売ってもいいと思う人も居るだろうから、
 そういう人から50万円で、もっと買おう!」と思うあなた。
あなたは、自分の価値算定を信じています。
多くの人が、あなたの思う価値の半分以下の価格が妥当だ、
と示しているにもかかわらず、
あなたは、貴方自身を信じています。

きっと投資で成功すると思います。
多くの人は、そのうちその価値に気がつき、
価値以上の価格で欲しいといってくるでしょう。
ただし、その価値算定が間違っていなければ、の話ですが。

<ミスターマーケット②>

あなたの元に、ある人が訪問し、
「この株を100万円で買いませんか?」と、言ってきました。
あなたは、一度断りました。
一ヵ月後、その株は120万円まで値上がりしました。
あなたの元に、別のある人が訪問し、
「この株を130万円で買いませんか?」と、言ってきました。
さらに一ヵ月後、その株は140万円まで値上がりしました。
あなたの元に、さらに別のある人が訪問し、
「この株を150万円で買いませんか?」と、言ってきました。
あなたは、買いますか?
それとも、その価値を「自分で判断」してから、
買うか買わないかを決めますか?


<経済は人間の心にある>

小腹が減ったので、パンを買ってきた。
僕が食べていると、いつもの様に、
口からは、よだれだらぁ~~~~~、
目は、じっとパンを見つめている2匹のワンコが居る。
部屋着のポケットに、パンを買ったお釣りが300円ほどあった。
パンは、200円。
だから、「買いに行く手間」という経済価値を無視すれば、
パンより300円の方が、経済価値が高い。
しかし、散歩大好きの彼らにしてみれば、
「買いに行く手間」など、ないどころか、それ自体にプラスの価値がある。
だから、なおさら、パンより300円が欲しいはずだ。
僕は、彼らの鼻先に100円玉3枚をちらつかせた。
不思議なことに、彼らは100円玉には、何の興味も示さない。
彼らは、パンの方に、より大きな価値を感じるというわけだ。

さて、以上の文章を「馬鹿馬鹿しい」と思っているあなた。
あなたは本当に、
このストーリーが比喩するところのワンコではない、
という自信がありますか?


<貧乏暇なし>

「貧乏暇なし」という言葉は、その状態を形容した言葉です。
貧乏になる理由を示しているわけではありません。
僕が過去にも何度か書いている、「暇がないから貧乏」という言葉は、
貧乏になる理由を説明した言葉です。
暇がないと、知識を吸収したり、考えたり、
「自分の過去を振り返ったり」する時間が得られないのです。
自分の過去以上の、学ぶべき価値が他にあるでしょうか?
「社長失格」を読み、そのストーリーに感情移入したとしても、
実際に現実として経験した身には、その経験値は及びません。
しかし、誰でも「価値ある自分自身の過去」は持ち合わせているはずです。


<本当に金がほしい人>

世界で最もカネが大好きな人が居たとします。
3度の飯よりカネが好き、
異性とのコミュニケーションよりカネが好き、
そういう人は、以下のどちらを選ぶでしょうか?

A 「カネ」
B 「継続的にカネの生る木」

答えは、読者の自問自答にお任せするとして、
ところで、なぜ、「継続的に金の生る木」を得られるのでしょうか?
それは、
「継続的に金の生る木」を手に入れる代わりに支払う「カネ」が、
「継続的に金の生る木」を通じて、社会に役立っているからです。


<カネもち>

得られたカネは、あなたが社会に対して貢献した見返りとして、
社会から頂いた感謝の「カタチ」です。
僕なら、可能な限り、社会に対して還元します。
その手段は、消費や投資。
社会の役に立っていないカネをいくら持っていたところで、
何の役にも立ちませんから。
カネは、持っているだけでは、役に立ちません。

2006年3月8日 板倉雄一郎

PS:
本日も、PHP研究所の方々と「新刊本」についてのミーティング。
僕は現在、何本の執筆依頼を受けているのでしょう・・・
どうしよう・・・・(ちゃーんと策はあるんだもんね!)





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