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ITAKURASTYLE「DI社株主総会」


昨日(2007年6月5日)、DI社の株主総会に出かけてきました。
株主総会ポイント(1)「株主総会は貴重な機会」
質疑の前半では、B/Sの各項目に関する会計上の一般的な質問や、
事業報告にて既に説明された回答を再び聞くような質問、
そして、株価下落による評価損に対する不満など、
「それってこの場で聞く必然性があるんでしょうか」
と思うような質問が目立ちました。
言うまでもなく、株主総会は、年に一度、
株主と経営陣の直接対話を行う「貴重な機会」です。
この機会を有効に利用するためには、株主の側も、
「おいらは株主だぜ! 何でも答えろよ!」
という姿勢ではなく、株主自らが事前に調べられるような事柄については、IRに問い合わせるなり、WEBを閲覧するなりして、ちゃんと調べておくのが「株主としてのマナー」だと思います。
DI株主総会感想(1)「割と真っ当な株主が多い」
とは言え、質疑も中盤以降は、
1、業績下方修正のタイミングが期末ぎりぎりであることへの不満
2、DIの基本方針「株主価値の最大化」に関する具体的質問
3、市場の状態に関わらずポートフォリオを売却すべきか否かという意見
4、機動的な自社株買いの提案
5、事業の性格上、短期の業績予想を発表することを敢えて止めるべきではないかという提案
などなど、真っ当な質問や提案が増えてきました。
質疑で面白かったのは、議長の堀会長が、
「質問は簡素に手短にお願いします」と株主にお願いするのですが、
質問に対する堀会長の回答は、
「非常に長く」、「手短ではない」といったところです(笑)
しかしながら、「株主としっかり向き合おう」という姿勢の表れですから、好感を持てました。
僕の場合も、何か質問を受けると、その質問から派生する事柄まで、延々と話す傾向があるので、堀会長の気持ちがものすごく良くわかります。
<僕から経営者への質問>
そして、僕の質問は・・・
第一号議案「取締役4名の選任」に関することとして、
非常勤取締役の井上猛氏が、株主総会の議決権個数決定後にDI社株式を大量に売却(2007年3月末時点で、8,254株 (8.3%)を保有する第2位シェアの株主でしたが、その後、この株主総会までの期間に、井上氏個人の持ち株の内およそ30%にあたる2907株を市場外で売却し、DI社における井上氏のシェアがおよそ3%ほど下がった)に間する「資金使途」を井上氏個人にしました。
質問をした理由は以下の通りです・・・
もし、(極端な比ゆですが)フェラーリが欲しいとか(笑)、豪邸を購入したいとかの「個人の楽しみのための創業者利益の獲得」であるならば、誰もそれを否定できないから、かまわないが、DI社の株式を売却した資金を、「他の事業会社への投資として資産運用する」ということならば、同社の経営者として認めるわけには行かない、と思うからです。
本来、経営者とは、
1、当該企業に関わる情報を最も有している立場であり、
2、経営に関する重要な議題について意思決定できる立場であり、
3、よって、経営者自らの資産運用において、リスクに対するリターンが最も高い投資対象であるはずです。
その経営者が、自らが経営する企業の株式を売却し、その資金を他社への投資にまわすとしたら、僕以外の株主もきっと納得いかないだろう、と思うわけです。
幸い、僕の質問に対する井上氏の答えは、
「資金使途の詳細は、この場でお話しすることはできないが、他社への投資による資産運用が目的ではない」という、真っ当な答えでした。
株主の中には、個人資産の大部分をDI社に投資している人が居ないとは限らないので、このような経営者の自社株大量売却については、しっかり話すべきですよね。
このような質問は、さすがにIRに問い合わせるべきことでもなく、ましてや事業報告書には記載されていないことですから、株主総会で本人に対してダイレクトに聞くに値する質問だと思います。
「株主と同じ目線に立つ経営者」とは、要するに、
「経営者個人の資産に占める同社の株式の割合の高低に依存する」
と少なくとも僕は思います。
ちなみに、ウォーレンバフェット氏は、個人資産およそ4兆円強の97%以上を、自らが経営するバークシャーハサウェイ社の株式として保有しています。
DI社株主総会の感想(2)「最も会場が沸いた質問」
質疑の後半、あるご年配の女性株主から・・・
「田原さんは、一株もDI社の株式を持っていないが、どうして一株も持っていない人が取締役になれるんですか」
この質問の直後、会場から(質問に対する)拍手喝采が(笑)
上記の僕の質問と同様、「株主の目線に立てない経営者はいらん!」という趣旨ですが、おそらく株主の大部分が、「なんで田原さんが取締役なんだ? その上一株も持ってないぜ」と疑念を持っていたのだと思います。
当然、僕も、僕と一緒に総会に出たセミナー卒業生も、この質問には「思いっきり拍手」させていただきました(笑)
そもそも田原氏は、(本人はそうは認識していないだろうけれど)かなりの経済オンチです。
その上、しつこいですが、DI社の株式を一株も持っていません。
過去のエッセイでも、このことについて言及しましたが、田原氏が取締役である必然性は、「全くありません」。
顧問で十分です。
ちなみに、先日の「配当政策に関する堀会長と僕のやり取り」については、このサイトとDI社のサイトの両方に記載されているので、会場では特に提案も質問もしませんでした。
それこそ、「既に議論していること」ですから、せっかくの貴重な株主総会の時間を有効利用したかったわけです。
株主総会ポイント(2)「質問の質次第」
経営者から直接回答をいただきたい、と株主が思うなら、経営者が「自ら回答したい」と思うような質問を株主がすべきだと思います。
具体的には、
1、当該企業について真剣に詳細に調べていること(を匂わせる質問)
2、企業経営に関する真っ当な知識に基づいた(と認識させる質問)
ができれば、経営者も「対話する価値がある」と認識し、しっかり回答してくれるでしょう。
「次の株式分割はいつんだぁ!」なんていうお馬鹿な質問をしているようでは、先方も答える気にならないのはいうまでもありませんよね(笑)
DI社株主総会の感想(3)「最もむかついたこと」
株主総会が終わった後、隣接する会場にて懇談会が開かれました。
時は、12時・・・昼食の時間です。
誰でも、「食事」を期待しますよね。
ところが!!!!!!!
人数の割りに狭い会場。
人数の割りに少ない料理。
で、ほとんどの株主が、料理をお皿に取るために列を作っていました。
僕も、10分以上は並んだと思います。
いよいよ食事にありつける・・・と思ったら、料理はすっからかん。
生ハム数枚でおしまい。
ちょーむかついた(笑)
そもそも、ここに並べられている料理は、「株主のお金」を使っている。
なのに、先に並んだ者がしっかり食べられて、少し遅れた者は、全然食べられない。
しかも、昼食時なのに!!!!
と言う不満は、料理にありつけなかった大部分の株主の不満でした。
「だったら最初から、サンドイッチとコーヒーにすれば良いのに!」
(↑ 費用も最小限、個数も多少多めに用意できる)
そうすれば、懇談会のために使う経費も削減できたはずなのに・・・
株主総会ポイント(3)「株主総会の経費は最小限に」
言うまでもなく、配当も、株主優待も、株主総会の開催費用も、
すべて株主による株主価値の取り崩しに他なりません。
そのことを、株主はしっかり認識し、貧乏臭い会場であればあるほど、株主は喜ぶべきです。
都心の立派なホテルで、一部の株主しか食事にありつけない懇談会となれば、経費はかかるし、不平等だし、いいこと何もありません。
株主総会ポイント(4)「議案採決」
僕は、第一号議案「取締役の選任」にて、この総会で井上氏からの回答を聞くまで、「NO!」を決め込んでいましたが、採決では、しっかり拍手にて「YES!」の意を表明しました。
「誠実で真っ当な対話」は、投資家のリスク認識(=企業にとってのWACC低減)になりえます。
だから株主総会は、極めて重要な機会です。
これから始まる株主総会シーズン、読者の皆様が株主総会に出席する上での参考になれば幸いです。
以上、DI社株主総会に関するレポートでした。
お粗末さまでした。
参考エッセイ:
ITAKURASTYLE 「堀会長への手紙」
ITAKURASTYLE 「堀会長からの回答」
2007年6月6日 板倉雄一郎
PS:
懇談会の会場で、おばちゃん株主が僕に近寄って・・・
「あなたね、配当がだめだって言ってる人。新聞で読んだわ。でも私、たくさん持ってるから何十万っていう配当がないと困るのよ!」
とのたまっていた(笑)
ほとんど、何の合理性もない意見だけれど、僕は、「はいはい」と聞いていました。
だって、懇談会の場で、「企業価値評価セミナー」をやるわけにも行かないですからね(笑)
もちろん僕個人も、持ち株数から言って「何十万の配当」を受け取る立場ですけれど。
ついで、このオバちゃんは、「他にも100社ぐらい持ってるのよ」と。
このおばちゃん、ほんと、株式投資がお分かりではない。
個人で100社も持つなら、個別企業のチェックは不可能。
それに、100社も持つなら、インデックスに投資したほうが良いんじゃない(笑)
おそらく、「株主総会ファン」なのでしょう。
インデックス投資では、株主総会には出席できませんからね。
PS^2:
キャンプ生活一ヶ月半後の久しぶりの「社会」は、結構疲れました(笑)
最も後ろの席から質問した僕に、会場の株主から注目が集まったときは、少々動揺しました。
だって、この2ヶ月ほど、彼女とワンコにしか接していなかったわけですから。
でも、仕事があるってのは良いことです。
いつまでも亡くなったワンコのことばかり考えているわけにはいかない、社会活動に復帰しなくっちゃ!と思わせてくれます。





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