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ITAKURASTYLE「スティールパートナーズ(2)」


スティールパートナーズ(2)の今回は、
彼らの主張の「真っ当な部分」についてです。
そもそも買収とは、敵対的とは、ナンでしょうか?
以下のエッセイをお「是非」読みいただきたいと思います。
SMU第137号「誰と誰が敵?」
KISS第91号「買収防衛策」
Deep KISS第15号「企業買収で得を得る者、損をする者」
以上をお読みいただければ、お分かりになると思いますが、
新株予約権発行や、
なにやら定款に規則を書き込むことによる「作為的な買収防衛策」とは、
「無能な経営者が経営者の椅子を確保するための手段」
に過ぎないわけです。
一方、「真っ当な経営者の買収防衛策」とは、
「資本効率の良い経営を行うこと」に尽きるのです。
資本効率の良い経営を行うことによって、
(市場が割りと効率的であれば)株価はフェアバリューを維持します。
そうなれば、誰も「無理して買い集めよう」とは思わなくなります。
そうなれば、誰も「経営者の交代」を求めなくなります。
以上から、僕は、買収防衛策という、
「主語の抜けた言葉」に違和感を感じますし、
(巷で言われている)買収防衛策には断固反対です。
この部分で、スティールの「買収防衛策」に対する主張は、
「至極真っ当」だと思います。
ある観測者(たとえば投資家)から観て・・・
1、「割安」で放置されていると思われる企業があるとすれば、
  それは、資本市場の参加者が賢くない、ということであり、
  それは、賢い投資家にとって投資のチャンスです。
2、現時点での経営を前提にした場合、フェアバリューではあるが、
  資本効率を向上させる他の現実的な経営手法によって、
  企業価値を増大させうる可能性があるとすれば、
  それは、経営者の怠慢であり、
  それは、賢い「投資家且つ経営者」にとって、投資のチャンスです。
1の手法を長年続けているのがウォーレンバフェットです。
彼は、ポートフォリオの経営に口を出すことは、めったにありません。
むしろ、「誰が経営してもしっかり儲かる企業」を好みます。
そのような企業が、「大幅な割安」になることは、めったにありません。
だから、彼は、そんなチャンスに恵まれれば、大量に投資をするわけです。
資本市場(=ミスターマーケット)と自分の価値評価の「違い」を、
投資チャンスとするわけです。
一方、2の手法は、いわゆるアクティビストの手法です。
もちろん、グリーンメーラーとしてのアクティビストではなく、
「経営改善を求める株主」という真っ当なアクティビストの場合です。
もしかしたら、あくまで「もしかしたら」ですが、
スティールは、「真っ当な部類のアクティビスト」なのかもしれません。
しかし本当のところは、
彼らのこれからの行動を見て見なければなんともいえません。
たとえば、
ブルドックソースを100%買収し、非上場化し、
資本効率を向上させ、企業価値を向上させ、
その上で再度上場させてキャピタルゲインを得るということであれば、
(資本効率アップの手段にもよりますが)真っ当な投資家と言えるでしょう。
しかし、
そもそも100%買収が現実的に不可能だと認識した上で、
単に「脅しのパフォーマンス」としての100%TOBを宣言し、
ブルドックソースにホワイトナイトを探させ、
グリーンメーラーとなるのであれば、
「資本の力によって他者から経済価値を奪うだけの悪質なアクティビスト」
ということになります。
このあたり、彼らの行動をウォッチすることは大切です。
2007年6月15日 板倉雄一郎
PS:
ブルドックソースやサッポロをはじめとする彼らのポートフォリオに、
資本効率を改善する余地が、「ものすごくある」、とは思えないけれど、
一方で、
現在の経営が、「ものすごく」効率がいい、とも思わない。
たとえば、ここで、彼らのポートフォリオが見れます。
残念ながら、5%超のポートフォリオだけですけれど。
でも、正直な話、調べれば調べるほど、
「もしかしてスティールって、真っ当なのかも」って気持ちになっています。
彼らの本意の手がかりは、彼らへの出資者が誰であるかですが、
それは僕にはわかりません。





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