板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「ゼロ金利解除」

「ゼロ金利解除」について、何か書こうと思いました。
けれど、「既に書いたこと」以外に新しいことが思い浮かびません。
(↑それだけ経済を先読みし、しかるべき事を過去に書いているからです。)

大衆メディアでは、
「金利上昇で住宅ローン金利はどうなる?」
「預金金利はどうなる?」
「物価はどうなる?」
「株価はどうなる?」
とかいう内容が報道されているようです。
(↑ ちらっとTV見ただけですから詳しい内容を承知していません。)

意味の無い内容、とは言いませんが、「今更」」とは思いますよね。

「経済を理解する」ということの目的は、
1、今、経済的にどうなっているのか?
2、今、何をすれば、将来どうなるのか?
を、
「可能な限り現実的に知る術を身につける」ということです。
おそらく、それ以外の大きな目的などありません。

この観点からすれば、
「超低金利時代」とか「史上最低金利」など現状認識に関する表現だけでも、
(特に経済の知識がなくても)文意から、
「今後、金利は上昇するのだろうな」ということは、わかるはずです。

すると、
「じゃあ、いつ頃、どんな状態になったら金利が上昇するの?」
という疑問が沸くのが、「当然」と、僕は思うわけです。

すると、
「そもそも金利調整ってのは、何のためにやるの?」
という疑問にも到達できるはずです。
このとき、ネットや、その手の書籍などを手に取り、
多少の「知識へのお金と時間の投資」を行えば・・・
「ああ、なるほど、金利とは、経済のブレーキの役目があるのね。
 金利を下げれば(一般的には)経済活動が活発化する。
 しかし、それを放っておけば、経済が過熱し、
 経済成長以上のインフレが起こり、経済が混乱する。
 なので、経済状態を先読みし、
 経済が過熱する兆候を掴み、
 早めのブレーキ(=金利調整)を踏む必要があるわけね。」
と、大筋の理解が出来るはずです。

すると、
「なら、経済が成長を始めた頃に、金利は上昇するのね」
と、結論が得られるわけです。

後は、以上の知識から、
「なら自分は今、どんな対策をとればよいのだろうか」
と、具体的な行動を模索することになります。

以上の思考を進めてゆけば、たとえば、
「住宅ローンは、変動金利より、固定金利のほうが、
 今日現在の金利負担は高いけど、いずれ金利が上昇すれば、
 超低金利時代に借りた固定金利の金利の方が安くなるし、
 そもそも住宅ローンは長期に渡った有利子負債だから、
 足元の金利より、長期金利に目を向けた方が得だね!
 だから、今のうちに固定金利で借りた方がいいね。」
と、わかるはずです。
(↑ 以上は、僕の著書「おりおば」にもしっかり書いています。)

「え~、いわれればわかるけど、フツーわからないことだよ」
という意見も中にはありますが、
そもそも「住宅を購入する」という行為は、
多くの人にとって「一生に一度の大きな買い物」なはずです。
ならば、その行為が失敗しないためにも、
相当の学習をして、相当に検討を重ね、その上で行動するのが、
「当たり前」だと思います。
普段のインカムを稼ぐために、相当努力しているのに、
そのインカムで買うモノに関しては、割とイイカゲン、というのでは、
普段のインカムのための相当な努力は、水の泡になってしまうでしょう。

(もっと正確に書けば・・・
 住宅の「間取り」や「立地条件」などには相当に神経を使うのに、
 購入資金の調達に関しては、
 「ローンが通ればそれでいい」とイイカゲンなわけです。
 しつこいようですが「運用より調達」が大切なのです。
 個人であれ、企業であれ。)


何度も書いていることですが、貧富の差を分けるのは、
今の収入でもなければ、今の財産の額でもなく、
今の「知識」に依存するのです。
どれほど、汗水たらして働いたとしても、
そこで得られたインカムの「使い方」を知らなければ、
いつまで経っても搾取される側から抜け出すことは出来ません。
「知識」が自身を無用な努力から開放し、
自身の活動を自分と社会に役立てることに使うことが出来るのです。

「ゼロ金利解除を機会に、行動を考える。」では、遅いわけです。
変動金利が上昇する頃には、固定金利も上昇しています。
慌てて、有利子負債を切り替えても遅いのです。
なぜなら、多くの「おりこうさん」は、経済を先読みし、
それなりの対策を既に取っているからです。
おばかさんは、いつも、おいてきぼり、です。

「今、どうなっているのか?」
「だから、今後どうなるのか?」
「なら、今、自分自身と社会のために何をすべきか?」
これを考える「ツール」が経済に関する知識というわけです。


ちなみに、企業を評価する2大指標があります。
一つは、「信用格付け」、
もう一つは、「企業価値評価」。
「信用格付け」は、当該企業の「過去の実績」により評価され、
当該企業の「資本調達コスト」を決定します。
「企業価値評価」は、当該企業の「将来の業績予測」により評価され、
当該企業の「投資家から観た価値=妥当な価格」を決定します。
企業を買う場合(=株式投資をする場合)、
その「妥当な価格」は、「未来からやってくる」のです。
将来を予測することなしに、
あらゆる経済価値の「妥当な価格」を把握することは不可能です。
株式であれ、債券であれ、不動産であれ、住宅であれ・・・
すべての「経済的な妥当な価格」は、
対象が生み出す「将来のキャッシュフロー」に担保されています。
これ以外の方法など、この資本主義経済の中に存在しません。
(いくつかの簡便な方法は、そのサブセットに過ぎません。)

つまり、「未来を現実的に予測する術」なくして、
経済的な成功を長期に渡り得ることなど不可能なのです。
予測可能な「何か」が起こってから対処していたのでは、遅いのです。
自身を守るのは、自身の「知識」以外に無いのです。


僕は、僕自身が暮らすこの国が平和で豊かであって欲しいと思います。
平和で豊かであるためには、
多くの人が、今居る環境(=資本主義経済)について、
全うな知識を持つことが大前提です。
さもなければ、
「どうせ国民の大多数はおばかさんだから」と思うような、
インチキ政治屋を政治家として選ぶことになり、
一時の平穏と引き換えに、
暗く危険な将来を手に入れてしまうことになります。
その影響は、子々孫々に渡り続いていくことになります。

ゼロ金利という「歪な政策」は、
80年代のバブルとその崩壊に端を発しています。
それまで順調に高度成長を続けてきた日本経済に、
周期的な「波」を発生させることになったきっかけが80'バブルです。
バブルは、常に、経済に対する知識の無い者が創り上げます。
(妥当な価格が投資対象の将来キャッシュフローに担保されていることを知っていれば、法外な値段をつけることはありません。)
全体の知識向上を行わなければ、再びバブルは発生するでしょう。
そして、いつまで経っても「安心して労働できる環境」は得られません。
だからこそ、制度改革と同時並行で、
「新しい制度や環境に適応可能な教育」が必要なのです。

どのようなシステムでも、
そのシステムの参加者が、
そのシステムについて十分に理解していなければ、
そのシステムの利点は機能せず、
一部の「おりこうさん」の懐を肥やすだけとなり、
社会は不安定になってゆくのです。

参考エッセー:KISS第33号「お金の仕組みを教える理由」

2006年7月14日 板倉雄一郎

PS:
住宅ローンを組んで、住宅を購入寸前のご夫婦の実話です・・・
昨年のある日、奥様が、 「おりおば」を書店で立ち読みし、
その翌日に、
(夫婦の打ち合わせなく)旦那様が「おりおば」を買ってきたそうです。
夫婦で読み漁り、「危うくおばかさんになるところだった」と気がつき、
住宅購入について再検討することになったそうです。
このご夫婦は、第18回合宿セミナーに御二人で参加されました。

わずか1200円の本によって、「再検討のチャンス」を得ることができ、
わずか数十万円のセミナー価格を支払うことによって、
資産をローリスクで運用する術を得ることができたわけです。
ちょいと計算しただけでも、このご夫婦は、
「知識に対する投資によって、それ以上の価値を手に入れた」
(↑ 知識のために差し出したキャッシュより、その知識によって得られた将来キャッシュフローの割引現在価値の方が大きいという意味です。)
といえるでしょう。
そればかりではなく、
このご夫婦の知識は、ご夫婦の長い一生に生かされるでしょうし、
何より奥様の「子供に真っ当な知識を伝えたい」という受講目的は、
このご家族の子々孫々に受け継がれてゆくでしょう。

PS^2:
こんな意見がありました・・・

「国民の多くは、おばかさんだから、平穏で居られる。
 もし、おりこうさんばかりなら、財政パニックが起きる」

まるで・・・
「うちの会社、どうせ馬鹿社員と経営者ばっかりだから、
 波風立てず、適当にやって、給料もらっておこう!」
と言っているようなものですよね。
こんな社員ばかりになれば、その会社はぶっつぶれるでしょう。
(というか、おばかさんが多いから、財政危機が起こるわけであって、
 おりこうさんばかりなら、そもそも財政危機に陥るようなオペを行う者を、
 政治家として選んだりしないわけですからね。)

僕は、自分自身が暮らすこの国がぶっつぶれるのは嫌です。
だから、小さな力であっても、ぶっつぶれないように行動しているわけです。
社会をさておき、自分だけ甘い汁を吸う・・・そんなこと不可能です。
なぜなら、自分自身が社会の一部だからです。

未来は、予測するためにあるのではありません。
私たちの今の言動によって「創る」のが未来です。

参考エッセー:KISS第31号「お金とは」





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