板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「ミクシィ上場~初値付かず!」

ミクシィの株価、楽しみですね。
株価が倍になれば、株価は百数十万円の上昇に過ぎませんが、
株式時価総額で見れば、1000億円!も増えるのです。
すごいですね!(笑)

価値に対して大幅に乖離した価格は、
それが割高であれ、割安であれ、経営者を苦しめることになります。
割高(=中身が無いのに価格ばかりが高騰)なら、
慌てて中身を詰め込まなければなりませんし、
それが実現できなければ、株主が大損を被ります。
また、
割安(=中身があるのに価格が低迷)なら、
買収の恐れがあります。

真っ当な経営とは、当該企業のあらゆる利害関係者が、
継続的に価値を提供し、その価値に見合った価格を享受できる経営です。
株主に対しては、
「IPOで株式を買った株主に、その後も利回りを得てもらえる株価」
を維持することが大切でしょう。
したがって、
株主にとっても、経営者にとっても、その他の利害関係者にとっても、
「価値と価格が均衡している状態」が、最も合理的なのです。
果たして、2200億円で掴んだ株主は、1年後、
しっかりプラスの利回りを得られるのでしょうか?
(まあ、長期保有を考えている投資家によって
 同社の株価が高騰しているわけではないでしょうけれど(笑))

ある意味ミクシィのサービスは、「時代の逆行」と思います。
(↑ だから駄目だ、と言っているわけではありません。)
あのサービス、昔の「パソコン通信」にそっくりです。
パソコン通信のサービスとは、
「一つの事業者との利用契約」を行った者同士が、
パソコンと通信を使ってコミュニケーションするサービス「でした」。
特定の話題についてのフォーラム掲示板や、
登録されている会員をプロフィールから検索して連絡を取ったりと。
その後、
「違う事業者(=ISP)との利用契約」を行った者同士でも、
まったく同じプロトコル(TCP/IP)によって、
コミュニケーションが図れるようになりました。
それがインターネットというわけです。
ミクシィのサービスは、インターネットの上で、
パソコン通信サービスを実現しているわけですね。
会員数が、あんまり大きくなると、それこそ、
「結局インターネットそのものじゃないかよ」って話になったりして(笑)

懐かしいです。
AOL、CompuServe、NiftyServe、PC-VAN・・・
僕、NiftyServeの事業開始当初の会員でした。
しかし、
「一つの事業者の技術に依存するサービス」であるパソコン通信は、
残念ながら、
オープンな(=複数の事業者の技術を取り込める)インターネットに、
置き換わりました。

あくまで一般論ですが、
「差別化されたサービスは、
 それが一般化したときに、価値を失う可能性があります。」

たとえば、当事務所のセミナーでも、
その卒業生(または同等の知識を持つ者)が、
世間の大多数を占めるようになれば、
セミナーの価値も失われ、卒業生のコミュニティーも価値を失います。
だって、そうなったら「特別なコミュニティー」じゃなくなっちゃいますから。

しつこいようですが、ミクシィに価値が無い、と言っているのではありません。
過熱気味だ、と言っているだけです。
「馬場抜きゲーム」は、トランプか、お食事会(←失礼)で十分です。

ちなみに、500万人を超える利用者の内、
「少なくとも一人(=僕)」は、
ミクシィ経由でメールが届いたときに「だけ」、彼らのサイトを訪問します。
そういう人は、僕だけではないと思います。

2006年9月15日 板倉雄一郎





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