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ITAKURASTYLE「政府財政悪化の本質」

このところ税収増加と社会保障を削る結果として、
プライマリーバランスは、
大幅なマイナスから、わずかながらゼロ方向に向いている。

ところで、財政悪化の原因について、様々な議論がされているが、
多くの議論は、その断片に過ぎないと思う。

本質的には、
「個人が社会から受ける便益」 > 「個人が社会に提供できる便益」
であることが原因だ。

それでもなお、少なくとも「一見」平穏で居られる理由は何か?

それは、
この国が「純債権国」であること。
つまり、借り手も貸し手も国内であるから、国家全体を海外から見れば問題ないという点。
しかし、国内に目を向ければ、
上記不等式の問題を「国債」という名の下に、
子々孫々の世代へ先送りしていることによって、
一見平穏で居られるに過ぎない。

社会を構成する小さな単位「家族」に焦点をあてれば・・・
祖父が孫に小遣いをあげると、孫は喜ぶ。
そして、その喜ぶ姿を観て、祖父も喜ぶ。
しかし、結局のところ、その小遣いの幾分かは、
孫が将来支払うであろう税を担保にした金に過ぎないのだが。

もちろん、上記のケースは、多くの場合、孫も祖父も、
そんな事実があろうことを、認識していない。
しかし、認識していないことが問題の根源である。

社会保障の理想は、10年程度の「同世代間で補完する」だと思う。
「際限なく人口が増加し、経済が成長する」といった非現実的な予測に基づいた社会保障や税の仕組みは、とっくの昔に崩壊しているのですから。

政治家に対し、「企業にたとえれば・・・」という出だしで何かを語ると、
「企業と政治は違う」と、その意見を切り捨てる。
しかし、
どちらの場合も、「同じ資本主義経済の構成要素」という共通点はある。
首長にしろ、官僚にしろ、国会議員にしろ、
「経営感覚」は、「最低限」必要なのではないだろうか。
最低限の経営感覚を持つものが、それを踏まえ、
様々な経営以外の要素に関して、政治を行うべきだと思う。

政治家が、「配分の取り合いのための代表」であった時代は、
当の昔に「継続不能だ」との結論が出ているのだから。

2007年1月23日 板倉雄一郎

PS:
どこかの地方都市で、「観覧車」を作るらしい。
すぐ近くに、観覧車がもう一基あるにもかかわらず、
観覧車から眺める風景には、特別なものがないにもかかわらずだ。
まあいいさ、その事業が単独であれ、波及効果を考えてであれ、
もし失敗すれば、その債務を背負うのは、現地住民なのだから。





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