板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「インカムゲインとキャピタルゲイン」


たとえば、
現在、年収500万円、貯蓄100万円の方が居るとしましょう。
ちょっと節約すれば、年間100万円を貯めることができるとすれば、
最初の1年は、100万円の貯蓄が、200万円になるわけですから、
資産増加「率」は、100%(つまり倍)です。
なんだか、資産が「増えた!」って感じがしますよね。
株式投資で「1年で倍にする」ことは、もちろん不可能ではないですが、かなりのリスクをとる必要がありますから、確実ではありません。
労働によるインカムゲインに頼ることの方が合理的です。
2年目は、(年収に変化がないとすれば)、
200万円の貯蓄が300万円になるわけですから、
資産増加「率」は、50%になり、1年前の100%に比べ「激減」します。
3年目は、(年収に変化がないとすれば)、
300万円の貯蓄が400万円になるわけですから、
資産増加「率」は、34%になり、1年前の50%に比べ「ちょと減少」します。
4年目は、(年収に変化がないとすれば)、
400万円の貯蓄が500万円になるわけですから、
資産増加「率」は、25%になり、1年前の34%に比べ「またちょと減少」します。
・・・
10年目にもなると、年間の資産増加「率」は、
わずか10%に下がってしまいます。
この頃になると、インカムゲインを溜め込むだけでは、
「節約して貯めたはずなのに、なんだか増えた感じがしないなぁ」
と感じることになります。
一方で、株式投資などによる資産運用を行えば、年率10%は、
1、投資対象のリスクにもよりますし、
2、投資に関する知識や経験にもよりますし、
3、その年の経済状況(主に長期金利)にもよりますが、
割と現実的な利回りですから、
資産運用「だけ」に着目すれば、この例の場合、資産1000万円に到達する頃には、インカムゲインによる資産増加より、キャピタルゲインによる資産増加を考えることが合理的となります。
極端な例ですが、金融資産10億円ともなると、インカムゲインによって年間1000万円を運用資産に追加しても、資産増加「率」は、わずかに1%。
日本国債の利回りより低い結果になってしまいます。
インカムゲインから、節約に節約を重ね、さらに税を納め、その結果として年間1000万円の余剰資金を生み出すことは、一般的にはかなり難しいでしょうから、
「一生懸命働いて、その上節約しても、資産は1%しか増加しない。やってられない」となってしまいます。
以上のケースから得られることは、
1、おおよそ年収分程度の資産が形成されるまでは、「働くこと」によるインカムゲインを中心に考えるべき。
2、おおよそ年収分程度の資産が形成される頃には、真剣に「資産運用」によるキャピタルゲインを考えるべき。
ということがいえると思います。
「なら、年収分以上の資産が形成されたら、働かない方がいい、ってことなのか」と思わないでください。
せっかく持って生まれた「時間」や「能力」を、証券口座の数字を大きくするため「だけ」に費やすのは、もったいないことです。
そもそも「投資」とは、
「(自分の代わりに、過去の自分が働いた結果の)お金に仕事をしてもらうこと」ですから、
1、投資対象の価値評価をしっかり行い、
2、「価値 > 価格」のタイミングを計り投資を実行し、
3、その後、投資対象のスージをチェックするということを忘れなければ、
資産運用のために使う「時間」を、(利回りを減らすことなく)少なくすることができます。
その結果「作られた時間」を、労働という「社会に対する価値提供」に使うことができるわけです。
僕の場合、毎年の労働によるインカムから、生活や事業のための経費を差し引き、諸税を納めた結果のフリーキャッシュフローを運用資産に加えても、「なんだか増えた感じがしない」わけです。
(↑ なんだか生意気な感じですが、事実ですから仕方ないです。お付き合いください。)
だから、資産増加「だけ」を目的にしたら、日々の労働など「やってられない」となってしまいます。
しかし、少なくとも僕は、証券口座の数字がいくばくか増えること「だけ」では、それこそ人生を「やってられない」と思うのです。
だからこそ、日々の労働には「楽しさ」を執拗に求めます。
「楽しさ」を得られる労働は、よい結果をもたらします。
「社会に対する価値提供」は、「証券口座の数字が増えること」と同等かそれ以上のハッピーが得られます。
この楽しさを資産運用の合理性「だけ」の視点から、捨てる、なんてことはありえないわけです。
ところで、
「30万円しか余裕資金がないのですが、どうすれば1年で100万円にできますか?」
なんて質問を「エッセイをろくに読んでいない方」から受けることがあります。
僕の答えは、以上から明確です・・・
「働いて、節約してください。きっと100万円の資産を作ることができるはずです。」
世の「仕事がない」と不満をこぼす人の多くは、
楽して儲かるという「ありえない仕事」を探しているに過ぎません。
世の「お金がない」と不満をこぼす人の多くは、
収入に見合った生活をしていないに過ぎません。
世の「環境が悪い」と不満をこぼす人の多くは、
都合の悪い環境にばかり着目しているに過ぎません。
どんな仕事にも、「楽しさ」はあるはずです。
仕事を楽しんでいるうちに、気がつけば、「資産運用をかんがえなくっちゃ」という状態になるものです。
もちろん、経済や投資について真っ当な知識を得ることは、日々の労働においても、資産運用においても、必要最低限のことですが。
(注意:以上の内容は、「100万円からの株式投資」を否定しているわけではありません。)
2007年7月4日 板倉雄一郎
PS:
インカムにおいても、キャピタルゲインにおいても、
「自己投資」ほど大切な行為はありません。
当事務所のセミナーは、「最も時間とお金の効率のよい学習手段」だと自負していますが、(だからこそやっているわけですが)、当事務所のセミナーでなくても、かまいません。
とにかく、「自己投資」なくして、効率的なインカムの増加も、キャピタルゲインも得られないことだけは確かです。
PS^2:
今日は、大平洋に飛び込む予定(←なんだそれ(笑))





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