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ITAKURASTYLE「ルックスルーで考える団塊世代の退職」

団塊世代の退職が2007年あたりから始まります。
聞くところによると、この3年間で700万人が定年退職をむかえるようです。

悲観的な意見について、ルックスルーで簡単に考えて見ましょう・・・

「貴重な労働力が失われる」などと言われます。
しかし、
彼らが退職と同時に死んでしまうなら、その通りかもしれませんが、
おそらく別の職場で労働力の提供を継続するでしょう。
この国全体をルックスルーすれば、
退職と同時に労働力が大きく減少する、とは思えません。

「企業から多額の退職金が流出する」などとも言われます。
確かに、
退職金の積み立て不足のある企業にとっては問題でしょうが、
多くの企業は、過去のキャッシュフローから積み立てを行っています。
07年から突然、退職に伴うキャッシュアウトが増加するわけではありません。
また、
支払われる退職金のフローについてルックスルーすれば、
その退職金が「この世から消えてなくなる」わけではなく、
信託されていた資金が、個人に移転するだけですから、
退職金を受け取った個人が余裕を感じれば、消費や投資に向けられます。
よって、
団塊世代が求める商品やサービスを提供する企業のキャッシュフローが増加する可能性が十分にあります。
また、
その積立を運用していたファンドが、退職金支払いのためにポートフォリオを取り崩しても、資金が退職金として個人に移転した段階で、再び資本市場に戻ってくるはずです。
(↑金融機関もしっかり獲物を狙っていますから)

団塊世代の大量退職については、
他にもいくつかの「悲観的意見」が見受けられますが、多くの悲観的意見は、
「ある会計単位に限定された観測」によってなされていますから、
そんな意見を受け入れ、「お先真っ暗」な感じになる必要などありません。

お金とは、経済価値取引における「媒介」に過ぎないわけですから、
誰かの元から、別の誰かの元へと、日々移転しています。
つまり、経済はグルグル回っているわけです。
グルグル回っている経済の「ある部分だけ」を取り出して観ても、
本当に起こり得ることを予測することはできないわけです。

「ルックスルーで考える」・・・これ今年のエッセーのテーマにしようかと思います。
皆様も、議論や意見の、
1、「スタートはどこ?」
2、「エンドはどこ?」
を是非考えてみてください。
1か2が明確に存在する考え方は、そもそもいただけません。
1も2もなく、グルグル「ループ系」を表現している内容を探して見ましょう。
きっと、その観測がより現実的な意見だと思います。

2007年1月10日 板倉雄一郎





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