板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「思い込み」

人間は、思い込みの動物です。
たとえば、「交通事故」に遭遇した人の体験談に・・・
「あの日の朝、なんか嫌な予感がして、旅行を取りやめようと思ったのに、気にせず旅行に行ってしまったのが事故の原因だ」
などという台詞を聞いたことありますよね?
このような体験って、本当に「虫の知らせ」なのでしょうか?
僕は、単なる思い込み、だと思っています。

人は何か行動しようとするとき、あらゆる可能性について無意識の内に「想定」していると思うのです。
上記の「旅行」の場合、旅先での楽しい時間も、旅先での面倒な出来事も、予定以上の支出も、予定以下の支出も、無意識の内に「想定」していると思うのです。
その上で、旅先で現実に「面倒なこと」が起きれば、たくさん想定していた中で、現実に的中した「面倒なこと」を想定していた過去を思い出し、
「やっぱそうだったかぁ・・・あの予感を信じて居ればよかった」と、
自分の「勘」を信じたりするのではないかと思うのです。
実は、楽しい旅行も、面倒なことだらけの旅行も、どちらも想定していただけなのに・・・

株価変動においても、同じことが言えるのではないかと思います。
それなりの大枚を差し出し、投機に勤しむとき、
「絶対に1週間で、株価が上昇する」とだけ信じて投資する人など居ませんよね。
実際には・・・
「金利動向がほにゃららで、消費者物価指数の発表がほにゃららだから・・・
 大きく下げるかもしれないよなぁ~~。
 でも、この企業の業績は良いし、需給バランスも良いから、
 大きく上がる可能性は否定できないし・・・」
などと、結局のところ、上がるかもしれないし、下がるかもしれないし、変わらないかもしれない、と「すべての可能性」について想定した上で投機に望むわけです。
よって、その後現実に、大きく下げようが、上げようが、かわらなかろうが、
「やっぱ、あの時、そう思ったんだよなぁ~」という結論になるわけです。

2005年の相場は、TOPIXでさえ40%も上昇しました。
馬鹿げた企業への投資さえしていなければ、「どのような投資手法」でも、「どのようなタイミング」でも、2005年は「誰でも」儲けられたわけです。
にもかかわらず、「やっぱ俺の投資手法は確実だ!」と思い込み、その手法をブログで披露したりする人が急増しました。
思い込み、って怖いですよね。

さて、ついでに「思い込み」を利用した「悪徳商売」の手口をご紹介しましょう・・・

1、「私は株価の将来がみえる」と嘘をつき、騙す人を100人集めます。
2、50人ずつ、AとBの2つのグループに分け、
  Aグループには、「この企業の株価は明日上がります」と伝え、
  Bグループには、「この企業の株価は明日下がります」と伝えます。
3、翌日、株価は、上がるか下がるかのどちらかになりますが、
  仮に下がったとすると、
  Aグループのメンバーは、「この嘘つきめ!」と去ってゆきますが、
  Bグループのメンバーは、「確かに当たったが、まだ信頼できないので引き続き検証しよう」と思います。
4、残ったBグループを、25人ずつ、CとDの2つのグループに分け、
  Cグループには、「この企業の株価は明日上がります」と伝え、
  Dグループには、「この企業の株価は明日下がります」と伝えます。、
5、以上を繰り返すことによって信者の「数」は毎回半数に減少していきますが、
  残った者が、イカサマ氏を信じる度合いは、増して行きます。
  何せ、残ったグループのメンバーにとっては、彼の言葉は「毎度当たる」わけですから。
6、最後の2人になったあたりで、
  「私のように明日の株価が当たるようになりたいかね?
   なりたければ、このツボを買いなさい。」

こんな話、「自分は引っかかるわけ無いじゃないかよ!」と、
多くの人は思うでしょう。
でも、本当に「自分だけは引っかからない」のでしょうか?
上記のような「典型的でわかりやすいケース」ばかりが詐欺ではないですよぉ~
ほら、デイトレ情報とか、買ったこと、無いですかぁ~~~

以下は、あるデイトレ情報に実際にあった記述です・・・

『先週の日経平均は、一時2年ぶりとなるXXXXX円の大台を回復しましたが、その後は、日足、週足上の短期下値抵抗ラインを下抜きました。来週の相場レンジは、大きくブレる展開が予想されます。売り圧力が強まるとの見方がある一方、日足の上値抵抗線が走るXXXXX円前後をトライする可能性もあります。ただ日経平均が既に買い転換して 押し目もないまま上昇してきていることや、短期の下値抵抗ラインを下抜いてきたため、多少調整する可能性があります。週足では、下値抵抗ラインがXXXXX円前後に走っており、XXXXX円前後が止まりやすいポイントとなりそうです。』
皆さんは、これを読んで、どう感じますか?
僕には、内容がさっぱりわかりません。
しいて言えば、「上がるかもしれないし、下がるかもしれないし、変わらないかもしれない」って事ですよね(笑)
つまり、「どれかには必ずなる」わけです。
だから、後に、この文章は、信者から観れば「当たり」となるわけです(笑)
で、信者と言う名の「騙される人」が増えたりするわけですね。

このあたりの話は、新刊「真っ当な株式投資」板倉雄一郎事務所著(日経BP社)に、しっかり記述しています。
発売は、3月中旬~下旬です。
こちらもよろしくお願いいたします。

2007年3月5日 板倉雄一郎





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