板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「価値評価と信用格付け」

「企業価値評価(=バリュエーション)」は、
未来を予測し、現在価値を求めるアプローチです。
あらゆる金融商品の投資家から観た経済価値は、その投資対象が、
将来生み出すであろう投資家に帰属するキャッシュフローによって
担保されています=価値評価されます。
価値評価において、過去の明確な業績は、
未来の業績予測の「非常に重要な」参考データではありますが、
少なくとも価値評価の「直接的な因数」にはなりえません。

一方、「信用格付け」の場合、「企業価値評価」と異なり、
主に、過去のデータの推移および現時点での確実な数値を因数として
格付けがなされます。

つまり、
「信用格付け」は、
過去の明確なデータを因数にした「計算」であるのに対して、
「企業価値評価」は、
未来の不明確な予測を因数にした「アート」といえます。

したがって、
「信用格付け」の信憑度は、財務上のどの数値を、どの程度の重みで、
信用格付けに配点にするかという
マスターデータの良し悪しによって決まりますが、
このマスターデータでさえ、「過去の統計」から作られますので、
マスターデータが固定されていれば、信用格付けは、
ほぼ「誰がやっても同じような値」になりえるわけです。

しかし、価値評価の場合、それが「アート」である限り、
「誰が、どの程度の知識と経験と『センス』によって評価を行うのか」によって、
その結果は、大きく異なります。
だからこそ、投資活動におけるパフォーマンスの違いが歴然と現れるわけです。

たとえば、
価値算定を基準にしたファンド運営などの場合、
ファンドの運用成績に大きなバラつきが生じます。
顕著な例は、バークシャーハサウェイ社のように、
バフェット氏個人の「アートセンス」に依存した投資活動の場合、
そのセンス次第で、
パフォーマンスがインデックスを長期で上回ることがあるわけです。
もちろん、センスや知識や経験が足りなければ損失のリスクも増大します。
一方、
信用格付けを頼りにする債券投資(=つまり融資)の場合、
大手コマーシャルバンクの業績が、
ファンド運営に比べれば、おおむね「横並び」であることが示すように、
個人の「価値観」の入り込む余地が小さく、
ファンド運営に比べ、「アートセンス」が業績に与える影響は少なくなります。

ただし、
信用格付けの極端に低い、いわゆる「ジャンクボンド」の場合、
その評価には、企業価値評価と同等の「アートセンス」が求められます。
なぜなら、ジャンクボンドの場合、ジャンクだと広く評価されているが、
評価者によっては、「とても信用がある」とか、「ぜんぜんだめ」とか、
その評価が分かれる度合いが大きくなるからです。

あまり知られていませんが、バフェット氏は、
「世間ではジャンクだと評価されているが、
 =高リスクだと判断されているが、
 =債券価格が額面より相当に安いが、
 =利回りが表面利率を大幅に上回って大きいが、
 自分の評価では、世間で評価されているより確かな債券だ」
という「ローリスク・ハイリターン」の債券の発掘能力に優れていて、
このジャンクボンドへの投資でも、かなりの成功を収めています。
また、
いつかこのサイトで問題として提示した
「バークシャーのキャッシュ作り=投資原資作り」の答えは、
ジャンクボンドへの投資によるリターンです。
債券は、多くの場合、株式投資と違って、「満期」があり、
よって、満期時にキャッシュインとなるからです。

(未来からやってくる)価値評価は、「評価者の能力」によって結果が異なり、
(過去からやってくる)信用格付けは、
「マスターデータの良し悪し」によって結果が異なるわけです。


帝国データバンクが、企業価値評価のサービスをはじめるらしいです。
一体、どんな知識と、どんな経験と、どんなセンスを持った「人間」が、
その評価を行うのか・・・とても興味深いです。
過去の明確なデータを基にした評価を行ってきた同社が、
未来の不確実な予測を基にした評価に、どれほど優位性があるのか?

板倉雄一郎事務所の価値評価でも依頼してみようかと思います。
そして、
それぞれの因数の根拠について、散々質問してみようかと思います。
その上で、彼らの評価を「評価」してみたいと思ったりします。
(きっと、断られるな(笑・・・だからやめとこ。
 そもそもたくさん質問しているうちにノウハウ渡してしまうかもだし))

板倉雄一郎事務所でも、代理店を通じて、
企業のバリュエーションサービスを開始します。
バリュエーションがアートであるからこそ、
競争における企業規模の優位性は、ほとんど得られないわけですから。

2006年9月5日 板倉雄一郎

PS:
本題とは、まったく関係がありませんが、
最近、「お食事会」の予定が多いです。
けれど、まるで「映画鑑賞」までたどり着けません。
あららぁ~~~と思って、
自分自身の「明確な過去のデータ」を思い浮かべてみました。
すると、実は僕、「お食事会が苦手」って事が判明しました。
「懲りないくん」活動においては、パーティーにて、
「懲りないくん」以前は、「(六本木や銀座などの)クラブ活動」にて、
その「調達」(?)が上手だっただけで、
「お食事会」での調達は、実は下手なんですね(笑)
成果が出ないはずです。
(以上、だからどうしたって話で、すんまそん)





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