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ITAKURASTYLE「価値観の多様性?」

「価値観という曖昧な言葉ほど、
人の思考停止に効果的な言葉はない。」

「あなたと私では価値観が違う」や、
「いろんな価値観の人をまとめなければならないから」や、
「それは価値観の違いだよ」などの言葉は、
問題解決や理想の追求を、一瞬にして終わらせてしまう。

その問題は、本当に価値観の違いなのだろうか?

特に資産運用のように、
「数字」が重要であるときに生まれる「意見の相違」は、
「価値観の違い」ではなく、
「知識のあるなし」によることが少なくありません。

知識が不足しているがために、
本来、自らが求めている結果に対し、
極めて不合理な選択をしている場合が多々あります。

個人が勝手に「俺はこれでいいのだ!」と思うのであれば、
それこそ、「勝手にどうぞ」と思います。
しかしながら、「企業」とは、明らかにチームプレイです。
チーム全体が求めている目標に対し、
「知識が不足しているがために」間違った意見を主張する者がいれば、
チーム全体の足を引っ張ることになります。

今一度、昨日のエッセーのPS部分を以下に記します。
以下の文章は、すべての内容の論理積によって、
初めて主張の本質を理解できるように書いています。
どうか、しっかりお読みください。

なお、再掲載の下に、さらにコメントを書いています。

===以下再掲載===

それでも数パーセントの配当利回りが欲しい!という読者の方へ、
ならば「株式投資」ではなく「債券投資」をお勧めします。
債券の場合「配当=利払い」は、法的に約束されています。

配当が「悪」ということではありません。
その企業が「成長期(=再投資対象を見つけられる状態)」にある場合、
配当より再投資による複利効果を得た方が、
株主価値の最大化になるということなのです。

たとえば、
「繊維会社」のような「成熟期」または「衰退期」の企業であれば、
配当可能利益の大部分を配当すべき(=配当性向を高める)ですし、
東証マザーズに上場している企業のような「成長期」の企業の場合、
配当ではなく、再投資によって、株主価値を高めるべきなのです。

もし、同社の投下資本利益率が年率50%もあるのなら、
今回配当する3億円は、
10年後には、173億円もの株主に帰属する内在価値になります。
(もちろん、年率50%を今後も維持できればの話ですが)

理想的な事例をご紹介しましょう・・・

マイクロソフトは、2004年まで配当を行っていませんでした。
また、バークシャーハサウェイは、1967年に一株あたり10セントの配当を、たった一度だけ「間違って」行ったことがあります。
このことについて、同社の会長ウォーレンバフェットは、「トイレに行っていたんだよ」と表現するほど、間違った資本政策であった事を認めています。
マイクロソフト(MSFT)やバークシャー(BRK-A)の超長期の株価推移をご参照ください。
長期の株価推移は、一株あたりの株主価値をトレースします。
また、下記の株価チャートは、
日本の証券会社がデフォルトで設定している「リニア」表示ではなく、
米国の証券会社が主に採用する「ログ(対数)表示」なので、
後半、株価が「伸び悩んでいる感じ」がすると思いますが、
違いますので、ご注意ください。


バークシャーハサウェイ(1990~2007)株価チャート

 

マイクロソフト(1986~2007)株価チャート
これは、理想論ではなく、「現実に起こっている理想」なのです。

バークシャーが理想を現実化させた一つの大きな原因は、
同社会長のウォーレンバフェットによる継続的な「投資家教育」にあります。
同社ウェブサイトからバフェットの言葉が発信されるばかりではなく、
ネブラスカ州オマハ(のド田舎)のスタジアムで毎年行われる同社の株主総会には、万という単位の株主が集まり、6時間以上、株主とバフェットの質疑応答が繰り広げられます。
バフェットが「今期も配当は行いません」と発言すると、スタジアムは株主からの「歓声と拍手」に包まれるそうです。
(注意:バークシャーは、配当は行いませんが、余剰現金があり、且つ、自社の株価が割安だと判断すれば、直ちに自社株買いを行います。極めて合理的な経営判断です。)

僕は、「財務理論ゲーム」をしているのではありません。
ドリームインキュベータには、
以上の理想を現実化させる「可能性」があると思うからこそ、
こうしてしつこく主張しているのです。

最後に、僕の同社に対する投資姿勢について・・・

「年率50%が得られる投資対象だとすれば、
 その権利を誰かに譲渡するつもりはありませんし、
 その投資対象から1円たりとも引き出そうとは思いません。」

後段については、「極少数株主」の僕の一存では決められず、
同社の株主総会議決権の過半数が必要なのです。
(今回の配当政策を、いまさら取り消すことはできませんが、
 来期以降の可能性について書いてみました。)

===以上再掲載===

たとえば皆さんがご自身で事業を始めようとして、
そのための資金集めに奔走していたとします。
そのとき、本当に、
「金を出してくれるなら誰でもいい」と思いますか?

少なくとも僕は、そうは思いません。
自分の理念、経営方針、活動目標・・・
それらを理解してくれる方からの資金に頼りたいと思います。
そうでなければ、経営はうまく行きません。

僕の過去の失敗は、
そんなことを気にせず、単に急いでいたことに原因があります。
失敗からたくさんのことを学びました。

確かに、上場企業の場合、
どのような考え方や知識の方が株主になるかわかりません。
しかし、
経営方針や理念をしっかり打ち出せば、
それをやらないことより、
理想的な株主が集まるはずです。
しつこいようですが、以上の理想は、現実に起こっています。
それも、世界的にみて、
効率的な株主価値創造を行う企業の場合ほど、
その傾向は強くなります。

企業経営は、その利害関係者によるチームプレイです。
それを忘れてしまうことは、自らの足を引っ張ることになるのです。

自分の子供が成長し、成人し、社会で立派に稼げるようになる前に、
「家に金入れろ!」という親ほど、馬鹿な親はいないでしょう。
このような親は、二つの大きな損失を犯しています。
ひとつには、子供の成長の足を引っ張ってしまうこと。
ひとつには、そんな金より、もっと大きな金や名誉や満足を、
遠い将来、受け取れるチャンスを失ってしまうことです。

「配当直前株主価値」=「配当額」+「配当直後株主価値」

何も失わずに、何かを得ることなど、不可能なのです。

2007年4月11日 板倉雄一郎





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