板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「読者からのメール」

今日は、読者からのメールの中から、気になるメールを紹介します。
(もちろん、ご本人の掲載許可を頂いています。)

<お客様は神様>

(前略・・・家庭の主婦についての意見)
で、ある程度の年から、スーパーとかにパートに出るんだけど、そこでは、お客様が神様と教育される。
無理難題を言うお客様にも、「はい、はい」。

それがサービスと思い込む。

というからには、お客様である限りは神様なのだ。
私も、お客様になったときには、神様!
という感じの人が多い。

良くも悪くも、世間知らず、というか、友人知人とは上手に付き合えるのだけど、
社会的動物として、あまり訓練されていない。
社会の中で自分のポジションを見極めるのが下手。

なんたって、家に篭れば、一国一条の主なわけで、そこにいる子供たちは彼女たちの臣下・・・
王様がすることはすべて正しい。

学校の担任?
あの人、どこの大学?
あら、私のでたところよりも、格下じゃない?
うちの子に文句を言うなんて、百年早い!

というわけで、その家の王様に子供は裁かれ、育てられる。
(後略)


この方のブログは、結構人気があります。
僕の文章のように「理屈っぽく、難しそう」な感じがしないし、
それで居て本質を表現できています。

資本主義は、僕たち日本人が生み出したシステムではありません。
僕たちは、資本主義を輸入しました。
学校教育現場に居る「資本主義を良しとしない方々」のおかげで、
なんちゃって資本主義に関する理解が広まりました。

「金を払う側は神様。金を頂く側は奴隷」
そんな「金の側面」しか見えていない人をたくさん輩出しました。

たとえば広告代理店。
僕は、ハイパーネット当時、彼らと煩雑に接しました。
彼らは、「クライアントは神様、取引先は奴隷」と、ヘーキで発言します。

雑誌や民放など広告収入によって成り立つメディアに、
「ちょうちん記事」が多いのは、彼らの間違った考え方の現われでしょう。
彼らは、わずか6兆円ほどの市場が「世間のすべて」だと思い込んでいます。
(すべての広告代理店と、その利害関係者のことを指して表現しているわけではありません。)

金を頂くと言うことは、一方で何らかの価値を提供しているわけです。
金は、価値交換の媒介に過ぎないのです。
金を頂くときに、「へーこら」しなければならないのは、
頂く金に見合った価値を提供していないからです。

上場株式取引の場合、
金を頂く場合(=株式を売る場合)、
金を支払う人に対して、へーこらする必要はありません。
また、
金を支払う場合(=株式を買う場合)、
金を支払うからって、偉そーにすることもありません。
この環境は、間違った教育による間違った資本主義経済から、
一時的に開放される瞬間なのでしょう。

株式取引であれ、普段の消費活動であれ、
どちらも、価値と価格の交換に過ぎないというのに。

企業の価値交換と価値創造の仕組みについては、こちら。


<価値提供の伴う仕事>

いつも楽しく拝見させていただいております。
私事になりますが、先月いっぱいで会社を退職いたしました。
入社から2ヶ月ちょっとでの退職でした。
某大手IT企業で営業をやっておりました。

退職理由は「明らかに価値のないものを顧客に売らなければいけないこと」です。
絶対に効果が出ないと分かっているモノを、都合の良いデータだけ提示して、説得して売るのって、ほとんど詐欺ですよね(笑)。

どの営業の仕事にも、ある程度はそういった側面があるのかも知れませんが、その程度があまりにも酷いのは絶対に間違っていると思いました。

どの程度酷いかというと、新入社員12人中5人が、私とほぼ同じ理由で既に退職しています。

しかし、あまり早い段階で退職するのも如何なものかと思い、さんざん悩み、いろんな人に相談したり、いろんな本を読みましたが、その際に板倉さんのブログが非常に参考になりました。

「世の中に価値を提供して、その対価としてお金を貰う」という考え方です。
そのとおりだと思います。
私の扱っていた商材は、「世の中に価値を提供するモノ」ではなく、明らかに「お金を吸い上げるための仕組み」でしかありませんでした。

こんなものでいくらお金を稼いでも嬉しくありませんし、そんな営業は絶対に間違っていると確信し、退職に至りました。

会社の偏った価値観・考え方に染まりつつあった自分を、板倉さんのブログはあるべき正しい道に引き戻してくれました。
とても感謝してます。

今は「本当の価値を提供できる」営業もしくはサービス業の仕事を探しているところです。
でも、そういう会社を探すのって意外と難しいんですよね(笑)。
実際に入社してみないと分からないことも多いですし・・・。
(後略)


こんなメールは、とてもうれしいです。
僕の文章が、誰かのためなるのであれば、うれしいです。

金の側面だけに着目し、あらゆる手段で金を稼ぐ・・・
その結果、運よく金をたんまり稼ぐことができたとしても、
爺さんになって振り返る自身の人生とは・・・
何かの事故や病気で死ぬ瞬間に振り返る人生とは・・・
どんな感じでしょうかね。


僕は、この世に「神」が存在すると思っています。
しかし、その「神」は、我々個々人と全く独立した存在ではなく、
我々の意識の集合体が「神」なのだと思っています。
自分自身の意識も「神の一部」であり、
街で通りすがる他人の意識もまた「神の一部」なのだと感じます。
僕たちの「神」が、僕たちをハッピーにしてくれる存在であるためには、
自分自身が、自分自身や社会にとって「ハッピーの理由」であることが欠かせないと思うのです。
そのための手段は、人それぞれだと思います。
僕は、「ウンコとカレーの違い」を、訴え、時に嫌われ、時に感謝される手段を用いています。

Give and Given
自分と社会の関わりにおける根本的な哲学だと思います。
自分自身も社会の一部です。

2006年6月13日 板倉雄一郎

PS:
オマケですが、先日のエッセー削除に関して、これまでに無い程多くの読者からメールを頂きました。
その中の一つを引用させていただきます。

いつもエッセー楽しく読んでいます。今回、苦労して復旧した”ITAKURASTYLE「New LEGACY Press Conference」”が削除されたということで、メールしました。
いやー、非常に残念!
非常に力作で、思わず熱中して読みました。
企業の目指す方向性とブランド価値の関係を車作りというものを通して分かりやすく書かれていたと思います。
(あまり車には詳しくない+すこーしだけしか興味がないぼくでも、一気に読みました)

今回ふと思ったことは、板倉さんのスタンスって、ロックやヒップホップの人と同じノリだなぁ、と。
レコード会社とかTV局の意向なんて無視して自分が思ったこと、感じたことを表現する。
それと同じように、自分に正直に表現する。
(そういえば、この間”<街角ミュージシャン>”って話を書いていましたね。)


板倉さんがぼくに対して提供してくれる最大の「価値」は、カレーとウンコを正直に表現してくれているってコトだと思ってます。
もちろん、ファイナンスの知識や資本主義の思想的なことも、とっても役に立っていますけど。(合宿セミナーにも今年中には参加したいなぁ、と[お金ためちゅデス・・・])


その後、この件に関する出版社の担当者から、ネチネチ「追加のご意見」を頂いています。
出版社の意向を受けて、通常ではありえない「エッセーの削除」をしたというのにです。
何しろ僕は、この取材に関する「すべての利害関係者」に対して迷惑をかけたそうです。
確かに僕は、彼らに「多大なるご迷惑」をおかけしたのでしょう。
だって、その雑誌の「月に一度」の発行「実売」部数と、このサイトの「毎日の」ユニークユーザ数を比べれば、その影響の違いがわかりますからね。
ああ、クライアントは神様(笑)





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