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ITAKURASTYLE「渋滞を作っているのは自分自身」

昨日、NHK=BS1の番組「経済羅針盤」のゲストとしてエフピコの小松安弘社長が出演していました。
エフピコという会社をご存じない方でも、いわゆる「食品トレー(←コンビニやスーパーなどの食材を包装するプラスティックのトレーと透明なカバー)」の製造販売会社といえば「ああ、あれね」となるでしょう。
エフピコは、食品トレーのシェア業界トップ。

小松社長の話の中で、最も興味深かったことは、食品トレーのリサイクルについてでした。
食品トレーのリサイクルに取り組む初期の段階では、「儲からないが必要なことだ」という姿勢で取り組み、実際に赤字垂れ流しでしたが、トレーの原材料である原油の価格高騰の結果、「リサイクルの方が儲かりつつある」という状況になってきた経緯をお話されていました。
原材料価格が上昇した結果、利幅が減少したが、一方で、リサイクルによる利幅が改善した、というわけです。

この話を聞いていて思ったことは、極めて純朴で素人っぽい感想ですが、「将来を見据えて、正しいと思ったことは、足元では儲けに繋がらない場合が多いが、それを継続していれば、いずれ儲かる時が来る」ということ。
つまり、「現在の確かな価格を差し出し、将来の不確かなキャッシュフローを手に入れる」という投資の原理原則です。
こういうシンプルな話は、非常に説得力があると思います。
そして、こういうストーリーは、(それがどれほど同社の企業価値の最大化に貢献するかは現段階ではわかりませんが)、何かを信じて活動を継続している人の励みになりますよね。
いい話でした。

が!小松社長の発言の中で、一つ気になることがありました。
それは、原油価格高騰に関して、
「私が価格を高騰させたわけではない。原油価格が勝手に高騰した」
という表現です。

この言葉に引っ掛けて、エフピコや小松社長を批判するつもりはありません。
しかし、原油価格を高騰させているのは、原油を事業や生活に利用している「私たちすべて」の仕業です。
特に、原材料の大部分を原油に依存した事業を行っている方が、「僕が原油価格を高騰させたのではない」と言い切ってしまうことに、少々違和感を感じたというわけです。
もちろん、だからこそリサイクルなのだと思いますが。

「渋滞を作っているのは、自分自身」

僕自身も、特に昼食などは、さっさと済ませようという思いからお弁当を食べる機会があります。
食材そのもの以外にも、原油を原材料にした食品トレーを消費しますし、出先であれば、割り箸も、コンビニ袋も消費してしまいます。
ほとんど自宅での仕事ですから通勤はしませんが、レジャーなどで出かける時は、ガソリンを大量に消費する車を利用します。
そういった自分自身の反エコ生活をさておいて、こんな話を書くのはいかがなものか、という認識もありますが・・・

「環境関連企業への投資をしましょう!」

と思うのです。
たとえば、CO2排出削減技術を持ったベンチャーがあったとして、その企業の活動に株主として参画することは、株主としての「儲け」だけではなく、環境に対してお金という議決権を行使することができるわけです。
ベンチャーに限らず、いわゆる大企業の場合でも、たとえば、自動車を作っている企業であれば、他社より環境にやさしい自動車を作っている企業の株主になる。

(もちろん、損を覚悟で投資しろなどというつもりは、全くありません。
明らかな割高での投資や、時間経過と共に株主価値が減少すると予測される企業への投資は、それが環境関連であったとしても絶対にするべきではありません。
環境関連企業が育って欲しいと思う投資家が実際に儲けることができなければ、投資を継続できませんから。)

皆がそんな投資を継続すれば、
(1)今より環境にやさしい社会になりえる。
(2)そして現実に儲かる。
(3)儲かるからさらに環境にやさしい企業への再投資を実現できる。
(4)(1)への好循環になりえる。
と思います。

仕事を選ぶとき、「お金儲けだけ」で、やりたくない仕事をやるなんて、いやですよね。
投資の場合も、「お金儲けだけ」で、本当は成長して欲しくない企業への投資は、するべきではないと思うわけです。
そして、何より、「投資のテーマ」を明確にすることによって、「(お金という)議決権の有効な行使の仕方」ができると思います。
たとえば、投資対象のスクリーニングにおいても、投資対象の企業価値評価においても、投資のテーマがはっきりしているほうがやりやすいですよね。

PBR 1.0倍以下の割安企業を探して、片っ端から簡易価値算定を行って、その中のいくつかの企業に投資して、ただひたすら「価格」が上昇するのを待ち、増えた証券口座の残高を見て「にんまり」する・・・そんなのつまらない(というか気持ち悪い)と思うわけです。

私たち一人ひとりの活動が、未来の社会を形成するのであって、政治家や経営者が未来をデザインするわけではないのです。
私たち一人ひとりは、消費者としても、従業員としても、株主としても、企業に関わることができます。
どんな立場で関わったとしても、その言動に「一貫性」があることが、最も効率よく社会に影響を及ぼすことができるのではないでしょうか。

「渋滞を作っているのは自分自身」
これ、忘れないようにしたいと思います。

2008年2月18日 板倉雄一郎

PS:
今週の僕は、「インプットモード」です。
アウトプットばかりしていると、いつも同じことばかり表現してしまうので、たまにはインプットモードにします。
よって、水曜日のエッセイはお休みいたします。

PS^2:
本文とは基本的に関係ありません・・・鍋の食べ方についてですが(笑)
最近、たとえば、フグを食べるときでも、いきなり「鍋から」という食べ方が好きになりました。
いわゆるお決まりコースで、フグ刺⇒から揚げ⇒鍋⇒雑炊とやると、食べきれない場合って多くないですか?
鍋に限定したの場合でも、白菜などの野菜まですべて食べようとすると、肝心のフグを食べられなくなったりしませんか?
なので、「いきなり鍋」しかも、「いきなりフグ」という食べ方が好きです。
この方法だと、フグのダシが十分に出たスープも、(おなかに余裕があるので)しっかり雑炊でいただけます。

豚キムチ鍋でも、いわゆる「見た目」を重視して、豆腐、長ネギ、白菜、きのこ類などなど、鍋となると定番食材を入れたがる傾向にありましたが、キムチスープを煮立たせたところに、「長ネギスライスと豚肉だけ」を箸でつまんでしゃぶしゃぶして食べるのって、結構いけてます(笑)

なんというか、私たちって、気がつかぬうちに、「誰かが仕立てたスタンダード」に支配されているような気がするんです。
そのスタンダードを捨てたときに、「おお!これだ!」って発見があると思うんです。
ただそれだけです(笑)

そういえば、先日、「クエ鍋」を食べました。
おいしかった。
テレビ番組などで、タレントがクエを食べながら「フグみたい!」とか言って喜んでいる様子が良く見られますが、クエはフグとは違います。
クエの方が、身を大きく切れますから、「ガッツり」かじることができて、且つ、(部位によっては)フグ以上のプリプリ感が味わえます。
でも、いわゆる「背骨周りをじゃぶりつく旨さ」は、フグの方がはるかに上です。
食番組のタレントによる「?みたい!」という表現は、いけてないですよね。
「?みたい!」なら、はじめかから「?」を食べればよいわけですからね。

フグに関しては、天然とらふぐを扱う「秘密のお店」があります。
この店、安くて旨い。
そのうちご紹介しますね。

以上、「脳内メーカー」をやると、頭の中「食」だらけの僕でした(笑)





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