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ITAKURASTYLE「若さは価値」

僕は、「若き起業家」と話をする機会が結構あります。
昨日も、あるマネー関連雑誌編集者の紹介で、若干25歳の起業家を交えた
「お食事会」でした。

(断っておきますが、若い起業家なら誰でも会うということではありません。
 起業家自身の能力と行動の結果、
 それなりに、経営理念を持ち、
 それなりに、ビジネス上のネットワークを構築し、
 それなりに、社会に価値を提供できるビジネスモデルを実施し、
 それなりに、すーじ、を作り上げている人でなければ、会いません。
 アイデアだけの段階でお会いして、時間を無駄にしたこと多数ですから。)

若き起業家に会うたびに、「若さって、それだけで価値だよな」と思います。
(いや、そう思う歳に、僕自身が成ったということでしょうか)

言うまでも無く、若さには価値があります。
しかし、若さに価値があるということは、一方で、
時間経過と共に「若さの価値」は減少して行くということでもあります。

このことを、無理やりファイナンス的に解釈すると・・・
その人が「社会に価値を提供する」と仮定し、
その人の一生のキャッシュフローを予測し、
現時点での割引現在価値(=PV)を算出するとしましょう。
すると、
学生時代には学費など親のすねかじりによって、キャッシュフローはマイナス。
しかし、20代にもなると、それまでの投資分に対してリターンが生じ始め、
30代~40代~50代と、そのキャッシュフローが増大することが予測されます。
以上の予測に基づき、PVを求めると・・・
たとえば、0歳の時点でのPVには、
1歳以降平均寿命までのキャッシュフローすべてがPVの因数となり、
たとえば、20歳の時点でのPVには、
21歳以降平均寿命までのキャッシュフローすべてがPVの因数となります。
よって、
「割引率」を無視すれば、「若ければ若いほど現在価値が高い」となります。
しかし、「割引率」を無視した現在価値など何の意味もありません。
将来キャッシュフローの割引率とは、
予測されたキャッシュフローに対する「リスク認識」ですから、
若ければ若いほど、将来の「不確定さ」が大きくなり、
リスク認識は大きくなります。
したがって、若ければ若いほど、
PV算出において、
織り込む将来キャッシュフローの「単純総和」は大きくなりますが、
一方で、その「割引率」も大きくなります。
予測される将来キャッシュフローと、その割引率によって、
PVが決まるわけですから、
時間経過(=歳をとる事)によって、PVが増大する場合もありますし、
また、時間経過によって、PVが減少する場合もあります。
時間経過によってPVが増大する条件は・・・
1、予測されたとおり、キャッシュフローが増大する。
2、1の予測に対する「リスク認識」が、
  歳をとることによる信用の増大によって減少する。
が満たされる必要があるわけです。

つまり、
時間経過によって「若さの価値」は減少するが、
一方で、時間経過の中で、経験や知識を習得し、
社会からの信頼が増大(=リスク認識が減少)すれば、
トータルとしての人の価値が「時間経過と共に増大」することになります。
ちなみに、
PV=FCF(1)/(WACC-g) に無理やりあてはめれば、
人の現在価値=
(「若さの価値」+「知識経験の価値」)/(「社会からの信頼の逆数」-「成長率」)
ということになるでしょう。
(生み出すキャッシュフローが、人の価値のすべてだ、
 と言っているわけではありません。
 あくまで、ファイナンス理論にあてはめれば、という意味です。)

刻一刻、我々すべての人間は、間違いなく「若さの価値」を失います。
失った「若さの価値」以上に、素晴らしい経験と知識を身につけることによって、
時間経過による「若さの価値の減少」以上に、
他の価値を手に入れることができます。
逆に言えば、
素晴らしい経験のチャンスや、知識習得のチャンスを逃していれば、
ただただ、時間経過による「若さの価値の損失」だけで終わってしまいます。

私たち人間のすべては本来、
「若さを差し出す代わりに知識や経験を得る」という「投資家」なのです。
投資家として成功するためには、
「差し出す時間以上の価値を手に入れる」を死ぬまで繰り返すことでしょう。
もちろん、
得られた知識や経験を社会に還元して初めて、
「社会にとっての価値」となり得、当人のキャッシュフローと成り得るわけです。

つまり、「One for All and All for One」ってことです。

2006年10月27日 板倉雄一郎

PS:
「若き起業家」を前に、つい説教してしまう僕も、
その若さに敬意を払うようになりました。
これもまた、僕自身の時間経過による価値増大の一つだと思います。

いいなぁ~、20代。
うらやましいなぁ~、人生の時間。

PS^2:
一般的には、歳をとると共に収入も増えます。
が、「若さを金で買う人間」には、絶対になりたくないですよね。
僕は、20代のころから、いわゆる「クラブ活動」に専念していましたが(笑)、
「クラブ員」に、40過ぎのおっさん(←今の僕)がたくさん居るのを見て、
「自分は40過ぎのクラブ員にはなりたくない」と思ったことを思い出します。
なので今は、「クラブ活動」より、「お食事会」だったりします
(↑ 笑・・・大して変わらない?)

 





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