板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「Microsoft TOB Yahoo!」

(米)マイクロソフトによる(米)ヤフー!の買収提案が発表されました。

概要・・・

・マイクロソフトがヤフーの取締役会に全株取得の提案
・総額446億ドル(約4兆7千億円)
・Yahoo株主は、1株あたり、31ドルの現金、もしくは、マイクロソフト0.9509株のどちらかを選択
・ただし、マイクロソフトの支払いは、50%の223億ドルを現金で、残りの50%を株式で支払うものとする。
・31ドルの価格は、Yahooの1月31日の株価に62%のプレミアムを付与した。
・2008年下半期のクローズを予定
・買収後のシナジーは10億ドル(1060億円)を想定
(以上、マイクロソフトオフィシャルページより抜粋)

発表当日の株価推移は・・・

マイクロソフト : -6.6%
(↑ 買収価格が高いんじゃないの! もしくは、年間10億ドルもシナジーあるですかぁ?という市場の声)
ヤフー : +47.81%
(↑ TOB価格へのサヤ寄せ)
グーグル : -8.58%
(↑ 強敵出現かぁ!という市場の声)

と言ったところですが、おまけでヤフーの大株主リストは・・・

Yahoo株主(2月1日付ブルンバーグより)
1. Capital Research and Management Co   11.4%
2. Legg Mason Capital Management Inc         6.0% 
3. David Filo      5.9%
4. Softbank Corp      4.1%
5. Jerry Yang      4.0%
6. Barclays Global Investors UK      3.0%
7. Vanguard Group Inc      2.7%
8. Janus Capital Management Inc      2.7%
9. State Street Corporation             2.6%
10. Clearbridge Advisors LLC      2.2%

ということで、ソフトバンクについてですが、ソフトバンクは、マイクロソフトの株式を受け取るのか、現金を受け取るのか、その両方かはわかりませんが、ヤフー株式の(ソフトバンクの株主が考えるところの)価値に対してTOB価格が割高なら、月曜日のソフトバンクの株価は上げるでしょうし、そうでなければ下げるでしょうけれど、おそらく上げるでしょう。

TOB価格が、2007年10月末につけたヤフーの過去1年の最高値34ドルを下回っているという事実もありますが、いくら短期の株価が34ドルだったとしても、時価総額の4.1%、金額にしておよそ2000億円分もの株式を短期で売却したら株価は大幅に値下がりしますから、ソフトバンクにとって、マイクロソフトによるTOBに応じるほうが確実に現金(またはマイクロソフトの株式)を手に入れることができます。

面白くなってきましたね!

以下は、僕個人の過去の行動や考えなので、ご興味のある方は読み進めて下さい。


僕が最も興味があるのは・・・

?MS+Yahoo!が具体的にどんなサービスを一般利用者と広告主に提供するつもりなのか
(2)(MSが言うところの)年間10億ドルのシナジーとは、シナジーを得るためのコストが差し引かれた純シナジー効果なのか
(3)反トラスト法的にはどうなのか(←もちろんMSは十分に検討したでしょうけれど)
その結果、
(4)グーグルの業績にどのようなインパクトがあるのか
です。
特に(4)は、グーグルの株式を買い増ししようとそのタイミングを探っていたところなので、とっても興味があるわけです(笑)

ぶっちゃけ、2007年11月上旬に、僕は保有するグーグル株式の2/3を「一時的に」売却していました。
結果的には、めちゃめちゃ良いタイミングでしたが、当時としては、「そろそろ大幅に下落する」なんて予測があったわけではありません。

北米のファンダメンタルズがどうのこうのとか、グーグルの業績がどうのこうのとか、株式市況がどうのこうのとか、そういう「環境への危惧」ではなく、「自分自身の評価への不安」による一時的な売却でした。
時々こういった自分自身への不安を感じることがあるわけです。
そんなときは、「わからないのなら買わない」をちょっとだけ進歩させて、「わからないのなら(少しだけ)売る」ということもやるわけです。
お気に入りの株式をこのような理由で手放すときは、いつも自分に言い聞かせます・・・
「自分への不安が原因で売るのだから、売った後で大幅に上げたとしても、絶対に後悔しないように」と(笑)

最初にグーグルへ投資したのは、2006年3月でした。
当時は、グーグルの四半期決算の内容が悪く、株価が一時的に下げたときでした。
結局、本日までのグーグルに関するトレードは、2006年3月から本日までのおよそ2年間でたった2回。
2年間でおよそ2倍になったわけですが、これ、はっきり言って「運」です(笑)
上記の通り、グーグル株式の売却は、「一時的」という認識でしたから、そろそろ買い増ししたいな、と思っています。
けれど、やはりそのタイミングは、上記のように「市況面」からではなく、「自分の評価に自信が持てたとき」なので、それがいつなのかはわかりませんが、大幅な株価下落は、多少の自信喪失をカバーしてくれます。
MS+Yahoo!による市場占有率が大きくなることをグーグルの企業価値評価(←グーグルの企業価値評価は、当事務所プレミアムクラブ配信分として、昨年12月に公表しています。)に組み込み、その評価に自信が持てて、且つ割安であると判断すれば、一時的に売却した分を買い戻したいと思います。

「ファンドやれ!」という声を時々いただきます。
きっと、それなりに資金は集まるのではないかと思います。
けれど、僕も、板倉雄一郎事務所も、ファンド運営という「他人のお金の運用」をする予定はありません。
なぜなら、以上のような「勘」を頼りにした個人資産による売買の結果が、「運」良く成果を収めることが過去にあったとしても、それが他人のお金だった場合、もろもろ心の制約が生まれ「勘」が鈍り、良い結果が見込めるとは、(少なくとも現在の僕の経験や知識では)、思えないからです。

しかしながら、売買における基準であるところの企業価値評価については、その理論体系がしっかり出来上がっているので、価格をいただきながらお伝えする自信があるというわけです。

(言うまでも無いことですが、「勘」だけで資産運用をしているのではありませんからね。あくまでグーグルに関する売買が結果的に良いタイミングであったのは、「勘」に依存するところが大きいという意味であって、基本はあくまで企業価値評価による投資判断をしています。)

もし、株式投資における知識と経験を今以上に積んで、本当の自信を持つことができるようになれば、他人のお金を運用する事業の可能性もありますが、まだまだです。
今以上に自信が持てた段階では、まず、自身の資産の株式運用比率を高めます。
その上で、さらに自信が高まって初めて、他人のお金の運用という順番で考えています。
なんだかすごく気の長い話ですね(笑・・・その前に死んでしまわなければよいのですが)

以上の意味で、このところの世界同時株安(?)は、僕にとって非常に価値ある経験です。
この局面をどう捉え、どう市場に向かうのか・・・自分自身の経験値が増えていることを嬉しく思います。

2008年2月2日 板倉雄一郎

PS:
僕個人の投資パフォーマンスについて興味のある方もいらっしゃると思います。
が、僕は、少なくとも後7年(50歳になるまで)それを公表するつもりはありません。
なぜなら・・・

(1)企業価値をPERやβ(ベータ)などの「たった一つの指標」で表現することができないことと同じように、わずか数年(僕の場合、1997年にガラガラポンでゼロからのスタート)のパフォーマンスでは、投資手法の評価はできない。特に、一株辺りの価値に着目した割と長期の投資手法であればなおさら数年間のパフォーマンスから投資手法の評価をすることは難しい。
よって、パフォーマンスが一人歩きするのが困る(笑)
(いわゆる「デイトレ手法」の評価を行うのであれば、その期間は1年もあれば十分だと思いますし、1年で十分高いパフォーマンスが得られないのならば、そのデイトレ手法はイケテナイってことになります。)

(2)ここ5年程度の期間では、評価損益ベースで年率100%を超えるパフォーマンスの年もあったし、2007年のように「かろうじて」プラスのパフォーマンスになった年もありましたから、それなりの長期(少なくとも10年以上)に渡るCAGR(年平均複利利回り)でしか評価不能と考えている。

(3)そもそも投資に対する考え方として、「ある年のパフォーマンスを極端に高めることより、マイナスパフォーマンスの年を無くすほうが長期でのパフォーマンスが良い」と考えているので、多くのリスクを取らないようにしている。
などが僕自身のパフォーマンスを公表しない理由です。

良く聞かれることに、「そのセミナーを受けるとどのぐらい儲かるの?」というのがありますが、これに対する答えは・・・
「投資家自身が、どれ程リスクを許容するかによって、パフォーマンスの評価基準が変化する」
です。
つまり、全く同じ企業価値評価手法を用いても、それによってベンチャー企業への投資を行うのか、それとも東証一部上場企業への投資を行うのかによって、パフォーマンスの「評価基準」に違いが生じるというわけです。
それを理解できる人が、市場参加者の大多数だとは思えないので、「一つの数字」の公表を差し控えているというわけです。
お分かりいただけますかね?


僕たちがセミナーで伝える企業価値評価手法は、

「短期でがっぽり儲けることより、損をしないこと」

に重点を置いています。

僕のパフォーマンスを知りたい方の多くは、それが「高ければ高いほど認めてやる」という姿勢なのだと思いますが、それって根本的に間違っています。
もし、僕自身がブログやセミナーで伝えている投資手法を自らも採用しているとすれば(いやそうしているわけですが)、
「10年間の年平均複利利回り200%以上!」
なんて言っていたら、(わかる人には)「こいつインチキ言ってるな」とわかるはずです。
僕の手法では、年率200%は絶対に無理ですから(笑)
しつこいようですが、「短期でがっぽり」より、「損をしないこと」が大切なのです。
その意味がわかる人にとって、当事務所が提供している実践・企業価値評価シリーズは最適なセミナーだと自負しています。
だって実際、僕の株式投資全体におけるマイナス利回りの年は、2007年も含め、少なくとも現時点までありませんから。
(ただし、個別銘柄の投資の失敗によって損切りしたことはありますし、株式投資資金の小さい範囲で、ちょいちょいやってしまう短期トレードでも損切りしたことはあります。)

簡単手法でがっぽり儲かる!をどうしても求めたい方には、当事務所のセミナーはお勧めしません。
もっと投機的手法に特化した知識を求めればよいと思います。
そうすれば、年率300%も夢ではありません。
ただし、翌年ゼロになってしまう可能性もあるわけですけどね(笑)

つまるところ、投資家自身が努力して知識と経験を得なければ、市場は(人生は)常に、「ハイリスク・ハイリターン=ローリスク・ローリターン」なのです。
「リスク < リターン」を実現するのは知識です。

株式投資の場合には、投資対象(←つまり企業)についてよく知ることに尽きるのです。
DCF法の利点は、理論株価の算出という「仮のゴール」を置くことによって、その過程で、当該企業について「よく知ることができる」ことです。
理論株価は、一つのおまけに過ぎないのです。





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