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ITAKURASTYLE「利息制限法の弊害」

皆さんもご存知かと思いますが、利息を制限する法律は・・・
出資法・・・上限を超えた利息を取ると「刑事罰」になる。
利息制限法・・・上限を超えた利息は「民事上無効」になる。
と二つがあり、これまでこの二つの法律の「上限利率」が違っていて、そのグレーゾーンが問題になっていましたが、この上限利率を同じにしていく方向になっています。
この法律の「弊害」について考えてみました。
ひとつには、いわゆる「サラ金」を傘下に持つ企業の企業価値破壊です。
ほら、サラ金を買ったと思ったら、その後に上限利率が変更になり、慌てて処分しようにも買い手が無く、仕方なくその企業の代表者が個人で引き受けたなんていうアホな会社、というか経営者(?)も居たりします。
この経営者の面白いところは、そもそも「インターネットベンチャー(と名乗っている上場企業)」なところです(笑)
確かにこの企業の行う「ネット広告」には、「あなたは利息を払いすぎていませんか」なんていう「サラ金常套句」ばかりです。
こんな変な経営を行う企業ではなくても、いわゆる「サラ金」を傘下に持つ、いわゆる「コマーシャルバンク」の株価も、結構下がっていますよね。
法律によって、企業価値が増減するのですから、企業価値評価を行ううえで、法律について知ることは欠かせません。
(話しそれますが、税制の変更は、企業価値に大きなインパクトを与えますので、このあたりは要チェックです・・・金融系メディアが政治を取り上げる最も重要な理由です。)
しかし、そんなことより大きな弊害があります。
それは、「個人のフィナンシャルリテラシーの向上を妨げる」という弊害です。
僕の友人が、利息制限法を越えた利息を支払ってきた個人の「清算処理」を行う司法書士のお手伝いをしています。
聞くところによると、1000万円ほど借金があり、毎月利息制限を大幅に超える多額の利息を返済していたが、整理したら借金がチャラになるばかりか、逆に500万円戻ってきた!なんていうケースもあるらしいです。
この方の場合、「お金を扱う知識の欠如」が、年率30%を超える資本コストのお金に手をつけた原因ですよね。
その原因そのものを解決しないまま、「お金が入ってくる」わけですから、再び同じような境遇になる可能性は十分に高いわけです。
宝くじで高額当選した人の多く(確か数十パーセント)が、数年後に自己破産することと同じように、「自らのお金を扱う知識によって得られたお金以上のお金」を与えてしまうことは、むしろ「害」にしかならないと思うのです。
トヨタ自動車が初代「セルシオ」を開発するときのテーマとして「源流対策」がありました。
たとえば、「騒音」が発生したときに、「防音財」でそれを吸収するのではなく、「騒音源そのもの」に対策を施すという考え方です。
20年前、非常に合理的な考え方だと思いました。
これと同じように、「お金に困ってしまう人」の「源流対策」・・・
つまり、「お金を扱う知識を学習させること」が、「お金を与えること」より、大切なのです。
「個人の債務制限」なる法律も検討されているようです。
この国の政治家や官僚の「馬鹿さ加減」を如実に表しています。
そんな「制限」より、本質的な「教育」を直ちに実施しなければならないと思います。
たとえば、小学校の数学の時間に「複利」を教えますよね。
100万円の年率30%複利では、1年後に130万円ですが、10年後には、なんとおよそ14倍!(1400万円)にも成るわけです。
これを教えるときに、「借りる側になってみましょう!」とやれば、年率30%の金利がいかにヤバイかがわかるはずです。
義務教育というのは、実社会で役に立つ知識を伝えるべきだと思います。
「お金の話を子供にするなんて!」という馬鹿で間抜けな親は無視するべきです。
なぜなら、義務教育後、社会に出て、お金に関係の無い生活ができる人間など居ないわけですから。
国力というのは、つまるところ国民の知識と勤勉さの集積です。
特に「自然資源」の乏しい日本の場合、それが国力のすべてと言っても過言ではありません。
政治が取り組むべきは、国民の知識の向上なのです。
どうにも、わかっていない経済オンチばかりが当選するので、しかたありませんけれど。
彼らを選んでいるのは、国民ですからね。
2007年10月1日 板倉雄一郎
PS:
このところ突然寒いですよね。
おかげで風邪が直りません。
でも本日は、久々の「お呼ばれ講演」なので、それでも思う存分楽しんでみたいと思います。





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