板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「売買機会の判断」


(昨日の、パートナーエッセイと内容がダブりますがお付き合いください。)
2007年に入ってから、株式相場は、サブプライム問題に始まる「好ましくないニュース」が出るたびに、ジリジリと下げています。
何を隠そう、僕自身のポートフォリオについても、当然ながら、評価損が膨らんだり、評価益が減少したりするケースの方が多いわけです。
しかし、評価損益「だけ」を見て、慌てて損切りしたり、(上げている時は)喜んで余計なものを買ったり(笑)を繰り返していれば、資産はどんどんなくなってしまいます。
こんなときにも、
「支払う価格以上の価値を手に入れる」という考え方が大切です。
まずは、極めて基本的なことですが、
「Aさんが、1年前に一株1000円で投資した株式が、今日現在1200円だとします。この場合の、Aさんの『今日現在』の投資額は一体いくらでしょうか?」
1000円でしょうか?
それとも、1200円でしょうか?
答えはもちろん、1200円です。
「えっ? だって投資したのは1年前の1000円じゃないの?」
と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、今日現在、Aさんは、市場価格の1200円で株式を売却することができるにも関わらず、その機会を利用せず、引き続き保有し続けるわけですから、
「一旦1200円で利益確定し、直後に1200円で同じ株式に投資すること」
と、
「そのまま保有すること」
は、(売買手数料や税を除けば)、ほとんど同じことを意味します。
よって、
上記Aさんの今日現在の投資額は、
「その時点での評価損益がどうであれ」、
今日現在の株価*株式数ということになります。
以上の考えに基づけば、合理的な利益確定の基準をつくることができます。
多くの個人投資家の利益確定は、
「その時点での評価損益」によって判断する傾向があります。
しかし、以上の考えに基づけば、
「その時点での評価損益」より、評価損益がどうであれ、
「今日の株価で投資をするかどうか」を、
一株あたりの「価値」と「株価」を比較して判断することが合理的だといえます。
「今日の株価では、その価値に対して相当に割高だ」と判断すれば、
(評価損益がどうであれ)利益確定の良い機会になりえますし、
「今日の株価では、その価値に対して相当に割安だ」と判断すれば、
(評価損益がどうであれ)引き続き保有を続ける合理的理由になります。
つまり、
「支払う株価以上の価値を手に入れる」
という考えは、投資実行時点だけではなく、反対売買(=利益確定)の場合にも用いるべきだということです。
もちろん、
「買い」による投資に対する利益確定は、「売り」ですから、この場合、
「差し出す価値以上の価格を手に入れる」
という条件になります。
そもそも、「評価損益」とはなんでしょうか?
儲けや損を示す数値でしょうか?
違いますよね。
確かに、その時点で反対売買をするなら、評価損益が実損益になるわけですから、儲けや損を表すことになります。
しかし、反対売買をする前であれば、評価損益とは・・・
「過去に自分が投資した株価と、現在の市場株価の差」
でしかないわけです。
評価損益に翻弄されるということは、投資時点でどれほど価値算定を行ったとしても、「価格変動(ミスターマーケット)に翻弄される投資」に他ならないわけです。
以上のような合理的な売買機会判断を行うためには、当然ながら「価値算定」が必要になります。
特に、「保有し続けるかどうか」を判断するためには、現時点での情報に基づき、再度企業価値評価を行う必要があるわけです。
サブプライム問題に起因する「為替変動」や「米国経済の行方」は、当然ながら、「株価」だけではなく、「一株あたりの価値」にも影響をもたらします。
たとえ内需関連株であったとしても、(その具体的な影響を計るのは極めて難しいですが)回りまわって為替や米国経済の影響を受けます。
これらの「変化」を、企業価値評価に折込み、
その上で、株価と一株あたり価値を比較し、
「割安でしかも時間経過と共に価値が増大するであろう」
と判断するのであれば、
(評価損益がどうであれ)保有を継続すべきですし、
「割高でしかも時間経過と共に価値が増大するとは限らない」
と判断するのであれば、
(評価損益がどうであれ)反対売買(=利益確定)をするべきだと思います。
さて、皆様のポートフォリオは、いかがでしょうか?
これだけ下げ相場が続いても、
「その企業、欲しいが、まだまだ割高で手が出せない」
という企業、結構あります。
つまり、
下げ相場の時ほど、投資家から観て「いい企業」に、資金が集中するわけです。
逆に言えば、「いい企業」ほど、「下げ相場に強い」と言えます。
もろもろ書いてきましたが、要するに、
投資を実行する場合も、
投資を解消(反対売買=利益確定)する場合も、
「価値と価格の比較」による売買判断が必要ということです。
評価損益にビビる時間があったら、その時間を使って冷静に企業価値評価を行い、一株あたりの「現時点での」妥当な株価を再度算出した上で、売買判断を行うほうが、価格変動に翻弄されるより、遥かに合理的です。
2007年9月12日 板倉雄一郎





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