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ITAKURASTYLE「MS vs Google」

タイトルは、「MS Acquisition Yahoo!」としようと思いましたが、実質「MS vs Google」に成ってきているので、こうしました。

マイクロソフトによる(米)ヤフーの買収交渉が展開されています。
市場では、いろんな憶測が流れていますが、ヤフー側の主張・・・

「1株辺り31ドルは、ヤフーの価値を低く見積もっている」

という言葉が示すとおり、

「そんな価格じゃ嫌だ」=「もっと高ければいいかも」

という話ですから、要するに「価格交渉」のステージにあるわけですね。

GoogleによるYahoo!への提携提案(←これは、アフェリエイトモデルに当てはめれば、要するに、Googleにとってすばらしくトラフィックの多いアフェリエイターとしてYahoo!を囲い込むという話)は、それが実現されてもされなくても、そのアナウンスメント効果だけで、MSのYahoo!買収価格を引き上げる効果があるわけですから、MSにとって厳しい状況ですし、それは結果的にGoogleにとって都合の良い効果でもあります。
(とはいえ、MSは、買収価格交渉については、はなから想定してたでしょうけれど。)

しかし、MSを甘く見るわけにも行きません。
何しろMSは、自らが生き残るために「何でもやる」会社です(笑)
MS vs Appleのときも、
MS vs Netscape Communicationsのときも、
現在展開中の、MS vs (今は)NINTENDO(昔は)SCEでも、
とにかく、MSは、「力技」によって、勝利を勝ち取ってきましたし、勝ち取ろうとしています。
ですから、仮にMSがYahoo!を「高値掴み」する結果になったとしても、侮れません。

が!
過去におけるMSの「力技」の正体は、
(1)資金力
?OSのシェアを背景にした反トラスト法ギリギリの戦略
(↑つまり「押し売り」や、「恫喝」による販売戦略ってことです(笑・「」内の表現は誇張です。))
だったわけです。
つまり、「OSに強く依存した商品に関する争い」について「力技」が通用したのだと思います。
たとえば、Netscapeの場合、それは基本的にOSに無料添付されてもおかしくない「ウェブブラウザー」というアプリケーションのシェア争いだったわけですから、MSの力技が通用したわけですよね。
動画再生アプリケーションについても同様のことが言えます。
しかし、検索エンジンという端末から独立したウェッブサービスの場合は、同様の「力技」は通用するでしょうか?

仮に、MSによるYahoo!買収が実現したとしても・・・
(1)その買収価格がシナジーを織り込んでも高値になる可能性
(2)買収が成功した上での事業展開において「力技」が通用しない可能性
が十分にあると思います。

今、ネットでは、端末のアプリケーションさえ、SAAS(Software as a service)が示すように、「アプリケーションをネットでダウンロードして利用したいときにだけ利用する」という方向になっています。
Googleは既に、このサービスをいくつかのアプリケーションで開始しています。
(このSAASは、特にケータイ上のサービスにおいて極めて有効です。)
物理的パッケージをベースに事業拡大を行ってきた(←それを前提にした企業構造の)MSにとって、Googleは既に検索エンジンという狭義での競合企業ではなく、MSの企業存続において意識しなければならない競合になっているわけです。
(だからこそ、Yahoo!を手に入れたいわけですけどね)

最終的には、WEB2.0時代に対応できる「企業構造」、「企業文化」の勝負になるのではないでしょうか。
つまり、企業の構造上、
(1)最初からネットを前提に構築された企業構造
(2)成長過程で徐々にネットにシフトしている企業構造
では、高速ネット普及が前提となる今後の戦略において、(1)の方が遥かに有利というわけです。

MSによるYahoo!の買収が成功したとしても・・・
?SAASの戦場
(2)ケータイの戦場
で、その企業構造、企業文化がそれらの戦いに適しているのはGoogleではないかと、少なくとも僕は思います。

2008年2月12日 板倉雄一郎

PS:
本当は、以上のような議論を、
?MS、Yahoo!、Googleそれぞれの今回のイベントが無かった場合の一株辺り価値、
(2)今回のイベントにおいて考えられるケースそれぞれにおいて、それぞれの企業の一株当たり価値
をベースに、ケース毎に「どれを買ったらいいの?」という議論をするのが、楽しいですし、株式投資においてもチャンスを拾えますよね。
つまり、企業価値評価の知識をベースに議論をしたいですよね。
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