板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「GMOって、忙しいですねぇ」

GMOは、忙しい会社ですね。
「株主様のために・・・・」と発言していたと思ったら、
明らかに株主を毀損する(下方修正条項つき)MSCBを発行、と思ったら、
それを取り消して(コールオプションを行使して撤回)、と思ったら、
子会社を結構の割高価格で上場させたと思ったら、
今度は「配当性向のアップ」ですと。

つまり、
金を、集めたり、吐き出したり。
一体、どっちなんでしょうね。
金を集めて、それを出し手の期待利回り以上に運用できるのか、
それとも、
そんな自信がないので、再投資より、吐き出したいのか・・・
一体、どっちなんでしょうねぇ。
いや、そんなトンチンカンな状態になってしまっていることすら、
同社の経営陣は、把握できていないのでしょうか。
こういう状態を、企業の「迷走状態」って言うわけです。


確かに、配当額のアップによって、
最も(キャッシュとしての)懐が肥えるのは「筆頭株主」ですよね。
なるほど、確かに「今足元のキャッシュが欲しい株主様」のためにはなります。

配当を増やすということは、すなわち、
「再投資による将来のキャッシュフローの増大より、足元の現金を優先」
ということですし、
「自社は、成熟期~衰退期に位置します」と言っているようなものです。

もし、筆頭株主と経営者が同じ人物なら、配当増額とは、
経営者が、自身の総資産に占める同社の株式の比率を薄めたい、
と思っている証拠です。
それをどのように評価するかは、評価者次第ですが。


株式投資における投資家のリターンは、大きく分けて、2つ。
キャピタルゲイン、もう一つは、インカムゲインです。

「配当前株主価値=配当後株主価値+配当額」
であることからもわかるように、
この二つのゲインは、明らかにトレードオフになっています。

したがって、
「株主が期待するほどのリターンを生み出せない」
=「株主資本コスト以上の事業利回りを生み出せない」という場合に、
「ならば株主に金を返そう」というのが「配当」の意味です。

参考エッセー:
KISS第108号「配当と時価総額」
DeepKISS第60号「GMO MSCB撤回」

2006年9月8日 板倉雄一郎

PS:
でも、上場企業の経営者は、
「自分の名前」で勝負しているから立派です。
すべてのオペレーションが記録され、
後に本人の名前と共に評価されるからです。
その場合の評価基準とは、
「どれほど金を持っているか」ではなく、
「どれほど社会の役に立ったのか」という基準でしょうけれど。





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