板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURASTYLE「権威の怖さ」

世の中をミスリードする者はたくさん居ます。
政治家のように、
国民に対して「直接の影響」を与える職務の場合だけではなく、
他人に知識を伝える職務の場合も、
その人の知識によっては、教わる側のミスリードを引き起こします。

もちろん、僕の場合も例外ではありません。
僕が、間違った理解をしていれば、僕から教わる人は、
ミスリードされてしまいます。
だから、常に慎重に考え行動しなければならないと思うわけです。

(だからこそ、日本経済新聞の記事のような「安易な表現」を
 慎んでいるわけです。)

当事務所のセミナー受講生のある方が、
セミナー卒業後、ある大学院のファイナンス講座を受けています。
その過程で、ファイナンスを教える「教授」に対して、
当事務所のセミナーの「部分」を伝えて、評価してもらった結果が、
僕に送られてきました。
その内容は、愕然とするものでした。

この「教授」の意見には、
「価値と価格の裁定取引」と、
「投資対象の本質的な価値『創造』」の「違い」に関する理解の欠如
が見られ、
そして、
僕が「スプレッド」と言う言葉を使うとき、それは、
「投下資本利益率(=ROIC)」と「加重平均資本コスト(=WACC)」の
スプレッドとして使っていることを理解できず、
「株主価値」と「市場価格(=株式時価総額)」の「乖離」のことだと、
誤って解釈した上での意見でした。
驚くばかりでした。

(その上、この教授の「裁定」の解釈が、
 「ある対象の違った場所での違った価格」という、
 狭義での解釈でした。
 まるで「教科書以外は理解できない」という現実離れです。)

「スプレッド」に関する誤った解釈だけならたいした問題ではありませんが、
(広義での)裁定取引による投資家のリターンと、
時間経過による投資対象の価値創造による投資家のリターンの違い
について理解が欠如している者が、
大学院にて、ファイナンスを教えている現実に、
僕は、危機感を覚えます。

僕が自信を持って、「彼はわかっていない」と言える根拠は、
彼の主張の「言いたいことはわかる」という僕の受け止め方です。
相手の言いたいことは、わかります。
それがわかると同時に、
「ああ、この部分に関する理解が欠如しているから、
 こんな主張をするんだな」
と思うわけです。

相手の主張を全面的に否定するような主張は、
「相手が何を言いたいのかは、理解できる」という姿勢には敵わないでしょう。

この教授は、
「東大卒」であり、
「某大学の大学院のファイナンスの教授」であり、
「大手金融機関に勤務した職歴」の持ち主です。
しかし、一方の僕は、
「自己破産の過去」があり、よって、
「企業経営に失敗した人間」です。
この両者を一般大衆が比較したとき、
明らかに前者の主張を受け入れることになる事はあきらかです。

板倉雄一郎事務所の分析結果より、
日本経済新聞の分析結果の方を信じる方もまた、
一般大衆の大半を占めるでしょう。

どちらを信頼するか・・・
これは、読者自身の知識と感覚に依存します。
結局のところ、知識を習得する当事者の知識に、
すべては依存すると言うことでしょう。

権威とは、幻想に過ぎないのです。
少なくとも、「今」を評価された結果ではなく、
「過去」の評価の結果に過ぎないのです。

2006年9月27日 板倉雄一郎

PS:
学問より、「現場の経験」です。
自分を弁護するわけではありませんが(=今更弁護する必要もない)、
「失敗したことのない人」は、
ある意味、「何も経験したことのない人」でしょう。

そこいらの商店主の方が、遥かに現実を良く知っているものです。
こと経済に関しては、「現実」を越えるものは、ありえないのです。





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