世間では、「福井日銀総裁はしこたま儲けた」とか、「村上ファンドは高利回り」とか、そんなことが報道されたりしています。
多くの報道は、
村上ファンドの、ある取引における儲けの「絶対値」だけを見ているだけで、
「投下資本利益率」という観点および、
「お金の時間価値」という観点が、まるで抜けているわけです。
ある報道では・・・。
この5年間の運用利回りは、投資単位の一口1,000万円が、約2.2倍の2,228万円に膨らんでいたが、今年の第1四半期(1-3月)の利回りは、0.1%未満に急落していた。
となっています。
今年の第1四半期の利回りが急落したことを除き、
そもそも村上ファンドが運用する一つのファンドの利回りは、
(ファンドからその出資者に対する現金配当が無く複利利回りだとすれば)
5年間の平均で、わずかに年率17.08%。
一方、同期間のTOPIXの成長率は、およそ7%。
あれだけ、
「企業は株主のものや!」と大騒ぎして、
「儲けすぎたから嫌われたんだ!」と叫び、
その上、違法な取引までした「グリーンメーラー」の利回りが、
インデックスに対するプレミアムは、わずか10%。
あら・・・これって「高利回り」でしょうか(笑)
(また、村上ファンドの投資利回りは30%前後と書いているメディアもあります。仮に年率30%だとしても、上記のような「手間ヒマ」、そしてグリーンメーラーとしての悪評を鑑みれば、決して「高利回り」とはいえないでしょう)
ちなみに、
コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス(アメックス)、ワシントン・ポスト、
そして、ペトロチャイナなどの超有名企業の筆頭株主である(日本では)超無名上場企業の過去15年間の株価年平均成長率は、およそ21%。
(ただし、ペトロチャイナに関しては、中国政府保有分を控除した民間保有分の中での筆頭株主です)
この企業の投資手法は、
時間経過と共に株主価値を増大させうる真っ当な経営を行う企業を見つけ、
何らかの原因によって、
「株価 < 株主価値」となったタイミングで多額の投資を実施し、
後は、投資対象の経営を見守るだけです。
「おいこら配当よこせ!」とか言わないし、
「短期の株価高騰で売り逃げ」もしないわけです。
というより、そもそも、投資対象企業に「いちゃもん」をつけなければならないような企業には、端から投資しないわけです。
ちなみに、この超無名上場企業は、バークシャー・ハサウェイといいます。
バークシャー・ハサウェイの実に40%の株式を持つ筆頭株主で会長の御名前は、
ウォーレン・バフェットといいます。
この企業の運用額は、村上ファンドなど足元にも及ばない規模です。
村上氏は、その会見で、
「確かに、むちゃくちゃ儲けましたよ!」とか発言しておりましたが、
それって、「金額」の話しであって、「利回り」じゃなかったみたいです。
知りませんでした(笑)
「むちゃくちゃ儲けた」のは、
運用額に対して数パーセントの「運用手数料」と、
運用実績に対して10%~20%の「成功報酬」を得た、
ファンドマネージャとしての村上氏本人のことだったんですね。
たとえ、資産が2倍になったとしても、かかった期間が、
1年なら、年率利回りは、100%
3年なら、年率利回りは、およそ26%。
5年なら、年率利回りは、およそ15%。
時間価値を無視した「儲け」など、なんの意味もありません。
2006年6月22日 板倉雄一郎
PS:
年率17%で、「高利回り」と評価されるなら、
早速、1兆円ぐらい集めてファンド組成して、
んでもって・・・嘘(笑)
PS^2:
村上ファンドは、おそらく複数のファンドを運用しているでしょうから、
上記のファンドの運用実績が、
他すべての村上ファンドの運用実績にあたるわけではありません。
また、僕は、村上ファンドの詳細を知りませんので、
上記計算の「素」に間違いがあるかもしれませんので、あしからず。
あくまで、報道されている情報を素に計算しました。
PS^3:
僕個人の運用利回り実績ですかぁ・・・それは内緒です。
上記の計算による村上ファンドの利回りより高い、とだけ書いておきます。
しかし、僕の投資手法は、その利回りの高低より、
売り買いを煩雑に行う必要が無いことや、
そのおかげで、「相場とにらめっこ」をする馬鹿げた時間を、
もっと価値ある活動に使えること、
そして、運用資金規模に関係なく同じ手法が有効なことの方が、
遥かにメリットが大きいわけです。
価値を把握すること、は、あらゆる経済活動において有効です。