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Deep KISS 第74号「全く新しいビジネスモデル!!!」

自動車会社のビジネスモデルを考察してゆくと、ある視点では、
「フーゾク店もしくはパチンコ店 + サラ金」
の構図に似ていると気がつきます。

断っておきますが、
「自動車会社もフーゾクまたはパチンコ +サラ金と同じだ!」
と主張しているのでは、全くありませんので、あしからず。
あくまで、ビジネスモデルを「ある視点」で観た場合の話しです。

消費者にとって、自動車という消費財を、「キャッシュでポン!」と購入するのは、以下の点において合理的ではありません。
1、 資金が用意できない。
2、 資金を用意できたとしても、その資金を他で運用した場合の予定利回りが、ローン金利を上回る場合、運用の機会損失を受け入れ、(それ自体がキャッシュを生まない)自動車の購入資金に割り当てるのは合理的ではない。
などです。

そこで、GMやトヨタなど大手自動車会社は、その傘下に「金融部門」を持っています。簡単な話、自動車購入者に購入資金を融資する金融子会社があるというわけです。
また当然ながら、金融子会社は「資金運用事業」によって利益を得ているわけですから、財務が健全な自動車会社グループの場合、「キャッシュでの車購入」をあまり喜びません(笑・・・トヨタ自動車の場合、これが顕著です)

この、
「自動車を販売する企業に金融子会社がある」
というビジネスモデルは、
(それがグループ企業であるかどうかは知りませんが、)
「フーゾク店やパチンコ店の側にサラ金がある」
に似ていると、ふと思ったわけです。

これに似たビジネスモデルは、他の産業にもいくつか見当たりますよね。
皆さん考えて観てください。

しつこいようですが、
フーゾク店またはパチンコ店と自動車会社では、
社会に提供する価値に違いがありますので、
「同じ」に評価しているわけではありません。
また、フーゾク店やパチンコ店が「社会悪だ!」
と主張しているわけではありません。念のため。

ビジネスモデルを考察していくと、それを突き詰めて行けば行くほど、
「あのモデルと似てるね!」ってことが多々あります。
つまり、「全く新しいビジネスモデル!!!!」ってあまり見かけません。

ここで、「ビジネスモデルが成功の鍵!」という誤解も解けるでしょう。
GMの場合、
「価値ある自動車を作る」から、「金融子会社のビジネス」に、
いつの間にかその軸足が偏ってしまいました。
結末は、皆さんご存知の通りです。
ビジネスモデルは、「最低限の必要条件」に過ぎないのです。

ろくなサービスを行わないフーゾク店が、
出玉の悪いパチンコ店が、
いくら「金貸しますよ!」って言ったところで、客来ないですよね(笑)
また、フーゾクやパチンコにおぼれる客に対して(いくら高利でも)金を貸し続ければ、そのサラ金も潰れますよね。


「当たり前をしっかりやる」が、合理的なのです。
「たった一つの新しいアイデアで大成功!」なんて、めったやたらとないわけです。
そんな「魔法」にすがって失敗した僕が言うのですから、間違いありません(笑)

2006年4月23日 板倉雄一郎





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