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Deep KISS 臨時号「ナベツネ吠える」

阪神電鉄の村上ファンドによる株式大量保有および、その議決権を武器にした「阪神タイガース」の上場提案に対し、ナベツネが吠えた。

「あいつは、ハゲタカの手先じゃないか!」と。

さらに、ナベツネは、
「野球チームが上場すると、勝敗による『投機』が増える・・・八百長の温床となる可能性が高まる」と。

ほっほぉ?、ナベツネさん、良くご承知ですね。
(ただし、上記後者のナベツネ発言には、「フツーの上場企業でも同じ」という感じもしますが。)
ただ、ナベツネさんの、日本の野球リーグを「まるで自分のモノ」と思っているような発言には承服しかねます。

そのファンドの運営者が誰であろうが、その運営者自身が運営するファンドの「大部分」を出資していないとするならば、そのファンドの運営者は、「誰かの手先」であることに間違いありません。
そのファンドの運営者が、上場企業の株式を買い捲り、上場企業に何かを迫る様は、「自分自身が置かれている様」というループですからね。
ちなみに村上ファンドの出資者構成を僕は知りません。

参考エッセイ
KISS第126号「学習の方法」および、
KISS第92号「体のよい総会屋」

一方で、球団上場によって、「ファンと株主の一体化」というメリットも否定できないとは思います。
ただし、このメリットは、多くの投資家(=この場合投資家というより投機家であり、球団ファンであるわけですが)のフィナンシャルリテラシーが低い、現時点の日本においては、このメリットは、「野球が投機対象になる」というデメリットを超える事は無いと思います。
(ただし、八百長の温床になるかどうかは知りません。)

ってか、そもそも子会社の上場は、親会社にとって、「子会社の資金調達のために、子会社の収益の一部を他人に譲る」ということをダイレクトに意味しますから、親会社が上場企業で、資金調達が可能なのであれば、子会社の上場は、親会社の株主にとって、さほど合理的な手段では無いわけです。
もし、以上の理屈を理解した上で、それでも「子会社の上場」を、親会社の株主が迫るとすれば、上記の「ファンと株主の一体化」というメリットを都合の良いイイワケにして、「子会社の株価を実態経済価値以上に仕立て上げ、売り抜けよう」と思っている可能性を否定はできません。

とはいえ、あの程度の資金量のファンドが暴れてくれることによって、「寝ぼけた経営者に渇が入る」というメリットは、いつも感じています。
これが、バフェット率いるバークシャーハザウェイのように、20兆円を超える資金量を持っていたとしたら、由々しき問題です・・・いや、「そうじゃないから、そうはならないのですね。」(←意味深(笑))

2005年10月6日 板倉雄一郎





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