一人の天才による企業は、当然ながら成功しません。
企業が長期に渡り、価値創造を、し続けるためには、その企業を取り巻く環境が、とても大切です。
企業が価値を生み出す「仕組み」である以上、当該企業の利害関係者すべてが、当該企業のビジネスモデルや経営理念に賛同し、且つ、それぞれの利害関係者の利得を、それぞれの利害関係者が、現実的に捉えることができなければ、企業の本当の成功はありません。
前号(Deep KISS 第92号「オーソドックスか、奇抜か」)にて「Googleのような革新的なネットビジネスモデルは、この日本では育ちにくい」と書きました。
その原因こそ「環境」にあるわけです。
革新的なビジネスモデルを・・・
1、見極める「投資家」が存在し、
2、カタチにできる「技術者」が存在し、
3、無名ブランドであっても、それが理に適っていれば、
「よっしゃ使ったる!」という顧客や利用者が存在し、
4、それらをオーソドックスにマネジメントできる経営者が存在する。
そんな「柔軟性」を(例えば)シリコンバレーは「環境」として保有してます。そうカンタンに、真似できることではありませんよね。
これらすべてが揃って初めて、革新的な商品を提供する一つの企業が成功できるわけです。
以上は、日本がアメリカに対して「劣っている」という事を言及していません。優劣ではなく、あくまで環境の「違い」です。その証拠に、自動車や家電製品など、いわゆる「ものづくり」で日本は世界トップレベルです。
しかし、残念ながら(広義での)ハードウェアは得意でも、そのハードを利用する(広義での)ソフトウェアは不得意ですよね。
(↑ ただし、アニメやゲームなど、一部のコンテンツは優れています)
「社長失格」を御読みいただいた方は、当時僕が発明し当時の技術や環境の範囲で実現しようとしていた仕組みが、今日現在、Googleが実現していることと酷似していることが、お分かりいただけると思います。(尚、当時の発明は、特許庁のサイトで検索可能です。「発明者」のフィールドに「板倉雄一郎」で検索できます)
しかし、失敗しました。
最も大きな原因は、他でもなく「経営者(=僕)が馬鹿だった」からです。しかし「取り巻く環境」にも、失敗の原因があったとは思います。(↑ 失敗を他人の責に帰する意味で書いているのでは全くありません)
要するに、「実現不可能な環境」であったことを、その馬鹿な経営者は、しっかり認識していなかったということで、やっぱり僕が馬鹿だった、という結論になります。
今は、「自分でやると失敗する」と思うから、自分のセンスに合致したビジネスモデルと経営理念の企業に対し、投資家として接する、という手段を取っています。(ちなみに、僕にしては珍しく、他国の企業・・・Googleに投資しています)
今いる環境を、「何かを実現する上での障害」と捉えるより、「何かを実現する上でのアドバンテージ」と捉えられる事が大切です。そのためには、今いる環境を「上手に利用するビジネスモデル」を実現することです。
環境に適した無理の無いビジネスモデル。これこそ企業の成功の秘訣だと思います。環境にブー垂れていても環境は変わりません。環境を上手に利用してゆく過程で環境も変化します。
“Give and Given”と同様、環境に対しても、
“Drive and Driven”これ、とても大切なことですよね。
経営者の最も大切な仕事は、“調達”です。
経営理念と同じ方向を向いた「資源」を集めることに注意を払えば、自然な経営が可能になり、利害関係者の支援を得られるものです。
利害関係者すべてがハッピーになる(であろう)ビジネスは、利害関係者の支援の下でだけ成功します。
投資家としては、いつも書いている通り、「真っ当な利害関係者の集団=真っ当な企業」に資金提供という価値提供によって参加したいものです。
真っ当なオーソドックスな経営であるか否かは、ファイナンスの知識がなければ、判別できないということダケは、しっかりお断りしておきます。
2006年7月7日 板倉雄一郎