「カネさえあればなんでも手に入る」と、何とかヒルズの住人たちは主張します。
口に出さなさない人も、そう信じているかのようなオペレーションを実施します。
確かに、世の多くの「モノ」は、カネがあれば手に入れることができるかもしれません。
しかし、カネでは手に入れることが出来ないものも沢山あります。
カネでは手に入れることが出来ないのに、それが得られなければ、カネを生み出すことが出来ない・・・
それは一体何だと思いますか?(あくまで、経済に限っての話です)
こ
こ
は
考
え
る
時
間
で
す。
その答えは「信用」です。
これまで何度も書いてきていることですが、企業であれ、個人であれ、経済価値を生み出すための非常にシンプルな公式があります。
投下資本利益率 > 資本調達コスト
この状態が得られなければ、経済価値を生み出すことは不可能です。
(たとえば、株式投資で年率30%のキャピタルゲインを得られたとしても、元手をサラ金から30%のコストで調達していたとすれば、ツーペーチャラですよね)
このとき、多くの人は、こう考えるわけです・・・。
「じゃあ、投下資本利益率を高めればよいのだ!」
間違いではありません。
しかし、いくら投下資本利益率を高めたところで、資本コストがそれを上回っていれば、経済価値を「損失」してしまいます。
逆を言えば、今の投下資本利益率を向上させることが出来なくても、資本調達コストを低減することが出来れば、経済価値を生み出すことができます。
では、「資本調達コスト」は、どうすれば下がるのでしょうか?
チョイとファイナンスの表層を勉強した「なんちゃってコンサルタント」は、こんなことを言うわけです。
「最適資本バランスを得るためには、D/E比率(=有利子負債と株式の調達額比率)を調整すればよい・・・WACC(=加重平均資本コスト)が下がるのだ」と。
しかし、何度も書いていることですが、こんなこと嘘です。
もちろん、D/E比率調整において、有利子負債比率を増加させれば、税効果は得られますし、ビジネスのリスクに応じて・・・
ハイリスク・・・イクイティー比率を上昇させるべき
ローリスク・・・デット(=有利子負債)比率を上昇させるべき
であることを否定しません。
否定しないどころか、以上のような最適資本バランスを得ることは、経営者にとって「最も重要な仕事」の一つであることは、疑いの余地がありません。
つまり、最適資本バランスを得るのは、「あたりまえ」のことですから、それを実現した上で、「さらに」資本コストを下げる(WACCを下げる)には・・・。
「市場からの信頼を得る」以外にないのです。
市場からの信頼を得ることができれば、有利子負債の資本コスト(=金利)も、株主資本コストも、どちらも低減させることができる訳です。
つまり・・・
「信用は、カネでは買えない。しかし信用が得られなければ、カネを生み出すことが出来ない」のです。
(ただし、「掻っぱらい」「搾取」を除きます)
よって・・・
カネを生み出す上で最も重要なことは、「信頼を得る」なのです。
しかし・・・
信頼を得るためには、地道な努力(=時間)が必要なのです。
だから・・・
ビジネスの成長を急ぎすぎ、シナジー幻想に惑わされ企業買収に勤しむ経営者が実際に経済価値を生み出すことは、実はあまりないのです。
経済価値を生み出すためには、じっくり、信用を得るための努力を日々地道に重ねる以外にないのです。
2005年12月12日 板倉雄一郎
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