板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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Deep KISS 第8号「主体(楽天とTBS)」

経済的取引の「主体」についてです。
(もちろん、どこかの国の「チュチェ思想」の話しではありません(笑))

このところの経済ニュース・・・
「楽天の資本による、TBS株式の大量保有とその後の提携」、
「村上ファンドによる、阪神電鉄株式の大量保有とその後」、
などを、起源にした・・・
「敵対的」とか、「防衛策」とか、「友好的」とか、「提携」とか、「所有とか保有」とか、「売るとか買う」とか・・・・
その現象の表現の仕方を見ていて、いつも「アホか!」って思っています。
なぜなら・・・
「一体誰と誰の関係なのか?」ってことが、全く無視されているか、曖昧になっているからです。

一体、誰と誰が「敵対」しているのか?
一体、誰が、誰からの「攻撃」に「防衛」しているのか?
一体、誰が、その会社の議決権を保有しているのか?
一体・・・・

あらゆる経済的取引は、
「誰かの経済価値と、他の誰かの経済価値の交換」なのです。
ある人は、「キャッシュ」を失う代わりに、他の経済価値を手にいいれる。
ある人は、経済価値を失う代わりに、キャッシュを手に入れる。
ある人は、他のある人の経済的取引の影響を受け、経済価値を得(または失)するわけです。

ファイナンスの「理論」におぼれると、以上の本質を見失ってしまいます。

たとえば、TBSに関するニュースとして、
「楽天側」とか、「TBS側」とか表現がありますが、
じゃあ、楽天側ってのは、誰のこと?
三木谷のこと?
楽天の株主全体のこと?
楽天の顧客のこと?
楽天の従業員のこと?
さあ、一体誰のことだ。

TBSってのは、誰のこと?
視聴者のこと?
従業員のこと?
TBSの株主全体のこと?
それとも、TBSの株主の一部の「楽天」のこと?
この場合の「楽天」とは、三木谷のこと?
間接的に、楽天の株主全体のこと?

本日は、「日曜日」とあって、午前中のテレビの報道番組は、おそらく、上記のニュースに時間を割いて扱うでしょう。
このWEBの読者の方々に置かれましては、「それは一体誰のこと?」という視点、つまり、「主語」に注目して考えてみてください。
この視点で報道を見ていると、「こいつ馬鹿だな」とか、「こいつわかってないな」とか、すごく良くわかるようになるはずです。
(参考エッセイ:KISS第126号「学習の方法」)

もう一つ・・・
コメンテーターとかの「言葉」を、鵜呑みにしてはいけません。
彼らには、必ず「ポジション」があります。
つまり彼らの言葉は、常に「ポジショントーク」であることを、忘れてはなりません。
(参考エッセイ:SMU第182号「ポジショントーク」)

最も面白い議論は、
「日本は、800兆円もの借金がある!」って議論。
このフレーズを聞いた多くの人は、ろくに考えもせず、「そりゃ大変だ」と思うのかもしれません。
ところで、「日本」ってだれ?
ところで、借金である以上、「貸し手」がいるわけだが、それってだれ?

正確には・・・
「日本政府が、日本に暮らす日本人の中で、割と高年齢の方々(=これまで税金を支払うことを頑なに拒み、後の世代に負担を押し付けた代わりに、資産形成した人たち)から、借金をしている」ということです。

よって、「日本」という主語の定義によっては、「日本の借金は事実上ゼロ」と言うことにも成りえます。
「日本が、日本から借金をしている」とかね(笑)
(参考エッセイ:KISS第112号「日本国債の保有者」)

2005年10月16日 板倉雄一郎





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