板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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Deep KISS 第70号「いい投資先を教えてくれる???」

「板倉セミナーに行けば、いい投資先を教えてくれるらしいぜ!」
という話しが、一部のコミュニティーで話題になっている場合があるそうです。

また、
「板倉の投資パフォーマンスはどのぐらいなんだ?」
という詮索も一部のコミュニティーで話題になっている場合があるそうです。

お断りしておきますが、私たちのセミナーでは、
企業価値評価の手法をお伝えするために、個別企業をケーススタディーとして、
毎回新しい企業を採用しています。
が、その企業への投資を「お勧めする」ためではなく、
あくまで、企業価値評価手法をお伝えするためのケーススタディーとして、
個別企業を採用しています。
当然ながら、
明らかな「割高&価値破壊系」を採用する場合もありますし、
明らかな「割安&価値創造系」を採用する場合もありますし、
おそらく「フェアバリュー&価値創造系」を採用する場合もあります。
よって、私たちは、「個別企業への投資斡旋」は一切行っていません。

私たちがお伝えするのは、
「個別のいい投資先」ではなく、
「いい投資先を自ら見つけ評価するための知識」です。

だからこそ、「一生ものの知識」と言えるのです。
この点、誤解のなきように願います。

対象を一生面倒見ることができる(=面倒を見なければならない)ペットの場合、
その教育手法は、「やっていいことと、やっていけないこと」を教え、
ルールを植えつけることが必要です。
しかし、対象を一生面倒見ることが出来ない人間の場合、
その教育手法は、「やってしかるべきことと、やるべきではないこと」を、
判別することが出来る「考え方」を伝えるべきだと思います。

「この企業の株価は○月ごろまでに○円まで上昇する」
などという、「占い」を行い、メディアで披露する人間を、僕は軽蔑します。
そんなことは、「他人に聞くべきこと」ではなく、
「自ら考え、自ら判断すること」であるべきです。
もし、そんな「占い」を頼りに投資するなら、
いっそインデックスファンドに預託するほうが遥かにマシです。
自ら考え、自ら判断できる人間を育てることが、この国の将来のために
「今、最も必要なこと」だと、僕は思っています。

答えは、常に自分の中にあります。
価値把握は、常に人の心の中にあります。
しかし、投じるのもキャッシュ、受け取るのもキャッシュであるところの、
いわゆる金融商品に対する投資の場合、
「ある一定の範囲に、その価値把握は収束」します。
そして、経済価値を測定する手法は、この世にたった一つしかありません。
それは、資本主義経済の原理原則に則った手法に他なりません。
私たちは、「企業価値評価」というアプローチを採用し、
その実、資本主義経済の本質を伝えているに過ぎません。

求めるべきことは、「答え」ではなく、
「答えを導き出すための考え方であり手法」です。

社会のために、伝えるべきこととは、
「どこが儲かるか」ではなく、「どう考えれば豊かになれるか」です。

僕のパフォーマンスに興味ありますか?
そんな「情報」を聞いたところで、一体なんの役に立ちますか?
そもそも、短期または中期のパフォーマンスを比較したところで、何も得るところはありません。
なぜなら、そのパフォーマンスは、
1、同期間のインデックスに対して、どれほど相対的にパフォームしたのか、
2、同期間のインフレ率を考慮して、どれほど実質的にパフォームしたのか、
3、トレード費用や、資本調達コストにどれほどコストをかけた結果なのか、
4、どれほど「価格変動」に神経を払った結果なのか(=心と時間のコスト)、
5、どれほどリスクを取った結果なのか
などなど、パフォーマンスを評価するには、様々な角度からの考察が必要です。
以上を真っ当に理解されている方はおそらく少ないです。
ですから、「誤解」が生まれないように、僕は自らのパフォーマンスを公開しません。
ただし、ひとつだけ言及すれば、
「常にインデックス以上のパフォーマンスを得ている」
ということになります。
それだけで、少なくとも僕は十分です。
何しろ、「損をしないこと」が最も重要だからです。
しかし、そもそも、投資パフォーマンスとは、
「過去の取得価格と、現在の市場価格の差」を、
「時間軸」で除した値に過ぎません。
このとき、比較対象が「市場価格」である点は、すなわち、
「パフォーマンスそのものが、価格変動に対する別な側面に過ぎない」
ということです。
価格が価値に均衡するのは、長期で初めて実現することです。
よって、
長期に渡るパフォーマンスこそ、「その人の能力」を測る手段になりえます。
ウォーレンバフェットのように、60年程の長期に渡り、
安定したパフォーマンスを実現して初めて、「ホンモノ」でしょう。
長い期間の間には、インフレがあり、デフレがあり、世界情勢が変化し、新しい技術が生まれ、戦争があり、人口構成が変わり・・・などなど、ひたすら山あり谷ありです。
その期間の中で、「常に一定上のパフォーマンス」を得られて初めて、「ホンモノ」なのです。
このところの「上げ相場」でのパフォーマンスにおぼれる「なんちゃって投機指南役」は、おそらく3年後にはその大半が淘汰されているでしょう。
何しろ、「インフレを体感している投機指南役」は、ほとんど現存していませんから。

僕が株式投資および企業経営(この二つは本質的に同じ意味です)に接して、
わずか20年ほどです。
他人にそのパフォーマンスを自慢するには、早すぎます。
(というか、一度大変な損失を出したことがあります。
 そのときの投資対象は、ハイパーネットという企業でした。)

自ら捉える人生のパフォーマンスは、「今が幸せかどうか」であり、
客観的に捉えるある人のパフォーマンスは、
その人が「死ぬまでわからない」のです。
そのとき、その人物が「社会に対してどれほどの貢献が出来たか」を、
初めて評価することが出来るのです。

2006年4月3日 板倉雄一郎





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