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Deep KISS 第3号「奪うのではなく、創る」

「欲しければ奪え!」だってぇ!
冗談じゃない、そんな教えが世の中を不幸にするんですよ。
「欲しけりゃ創れ!」
自分の価値を、社会が認める価値を。

「教育」について語ると、どういうわけか批判されることが多々あります。
もちろん、批判されたからといって、批判を読まないわけでも、その考えを最初から否定するわけでも、また、僕自身の考えを合理的な理由無く変更するわけでも、ありません。

僕がこのWEBに書くエッセイの内容を、
「板倉独自の新しい理論や哲学」だと思う方がいらっしゃいます。
しかし、僕が書いていることは、既知の「当たり前」のことばかりです。

たとえば、
価格と利回りの関係、
価値と価格の関係、
価値創造メカニズムと時間経過、および再投資の関係、
配当と株主価値の関係、
投下資本利益率と資本コストの関係、
企業の仕組みと、それぞれの利害関係者の役割、
今日の100万円と、1年後の100万円の違い・・・などなど。

これらは、新しい考えでもなんでもなく、資本主義経済の「基礎」に過ぎないことです。
それなのに、「独自理論」だと思われる方がいらっしゃるのは、やはり「教育」に問題があるのです。
つまり、「当たり前のこと」なのに、今始めてその「当たり前」を見聞きし、その結果が「これまでの自分の常識と違っていた」というだけのことです。
すると反発したくなるんですよね。

なぜ、我々日本人の多くは、「当たり前」を知る機会に恵まれなかったのか?

これまで、「わかっちゃってる人」の多くは、自分自身の利益のために、「わかっていること」を、なるべく多くの人に伝えないようにしてきました。
なぜなら、何度も書いているように・・・
「経済価値は、経済の仕組みを知らない人から、熟知している人の下に移転する」からです。
しかし、ジョン・ナッシュが「ナッシュ均衡」で明らかにしたように、また、僕自身が肌で感じるように、「一人勝ち」は、けして勝った人を幸せにするわけではないのです。

仮に経済の仕組みを熟知した人が、その理解を「経済価値の搾取」に使おうと思えば、割と簡単に銭を稼ぐことが出来ます。
(事実、そういう方がたくさん存在し、かつ、経済の仕組みを知らない方々は、彼らを賞賛していたりもします・・・本来、自分が得てしかるべき経済価値を搾取されているとも気が付かずに。)
しかし、その一方で、「理解の違い」が「貧富の差」を生み出し、全うな労働に勤しむ人が減り、犯罪が増え、結果として「一人勝ち」の人の幸せさせも成り立ちにくくなるのです。

資本主義こそが、人類が生み出した最も合理的な仕組みである・・・なぁ?んて僕が思っているとでも???
僕にはそんな考えはありません。
「今、与えられた環境の中で、その環境について知らない人に教える」
ただそれだけのことです。

サッカーのルールや仕組みを知らずに、ただ漠然とサッカーの試合を観ていた「だけ」の人がピッチに立てば、おそらく、がむしゃらにボールを追いかけることでしょう。
しかし、しっかりサッカーのルールと仕組みの理解を得れば、ただがむしゃらにボールを追うことが、自分や自分のチームのハッピーにつながらないことなど容易に理解できるはずです。

世の中、「華麗なドリブル手法を教えよう!」といえば、人が押し寄せるかもしれません。
しかし僕は、サッカーをやるのなら、「ドリブル手法より、まずは、サッカーのルールと仕組みの基礎」を知るべきだと思うのです。

経済の仕組みを学ぶことと、カネにガツガツすることは、直接関係がありません。
(↑これもしつこく何度も書いていますよね)
むしろ、経済の仕組みを知らないからこそ、カネにガツガツするのだと思います。
カネなんてのは、所詮、人が生み出した価値の「交換媒体」に過ぎないのです。
「自分自身が納得するカネ」を得たければ、社会に対する「価値提供」を増やすしかないのです。
社会に対する価値提供を増やすには、自分自身の価値を磨くことしかないのです。

「経済価値は、他人から奪うものではなく、創り出すものです。」
自ら創り出した経済価値を、社会が認め、その価値に対して価格が支払われるだけのことです。
得られた価格をどう使おうがその人の勝手です。
が、少なくとも僕は、得られた価格を「消費や投資によって」早期に社会に還元すべきだと思っています。
(↑、この部分は僕独自の哲学ですが、これも当たり前のことだと思っています。)
自分自身が行った、社会に対する価値提供の結果の「一時的なプール」が、カネの正体です。

自ら、社会に対して価値を提供し、その見返りにカネを頂く。
社会が大した価値を認めなければ、頂くカネは少なくなり、その逆に、社会が大きな価値を認めれば、頂くカネが多くなる。
その頂いたカネを、消費や投資によって、「行使」する。
全うな努力をしていると思う人から商品を買い、
全うな努力をしていると思う企業や人に投資をする。
つまり、カネは、社会に対する議決権なのです。
議決権を多く欲しければ、社会が認める価値提供に努力すればよいのです。

資本主義そのものについて、云々かんぬん主張する前に、資本主義の基礎ぐらい知りましょうよ。
どんな制度も、どんな仕組みも、それに参加する人の、その制度や仕組みについての理解が無ければ、その制度や仕組みの利点は得られないのです。

それにしても、「他人からの奪い方」を教えるセミナーや記事が多すぎる。
「他人からの奪い方」を教える連中ってのは、「あなたたちをそそのかして、奪い合わせて、自分が儲ける」という連中なのよ。
ちゃんと考えようよ、自分自身と社会のこと。

参考エッセイ:
KISS第33号「お金の仕組みを教える理由」
KISS第31号「お金とは」
(ちなみに、過去のエッセイも、リロード(Windows Internet Explorerでは「F5」)してから読んでくださいね。

2005年10月9日 板倉雄一郎

PS:
お気づきの方もいらっしゃるとは思いますが、以上のようなコンテンツを、僕自身が、当事務所パートナー橋口寛のインタビューに対する返答として表現したDVDが発売開始となりました。
前半4分の1ぐらいは、恥ずかしながら、当事務所セミナーの宣伝のような内容ですが、それ以外は、純粋に資本主義経済の仕組みについて語っております。
ご興味のある方は、是非、ご一読ならぬ「御一視聴」ください。
右フレームの「DVD販売のご案内」というバナーからどうぞ。





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