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Deep KISS 第9号「事実認識」

「善」か、「悪」か。

「役に立つ」のか、「役に立たない」のか。

「道徳的」か「非道徳的」か・・・。

こうした評価は、全く同じ事象の評価においても、評価する人の「価値観や立場」によって、如何様にでも変化します。

例え「殺人」でも、立場が違えば「善」になり得ます。戦争がそうですよね。

「敵は悪い奴らだ」って理屈をでっち上げれば、敵を殺すことは、良いことになるわけです。

しかし、「価値観や立場」によって何かを評価する前に、その何かの「事実認識」を最初に得る必要があるのだと思います。

戦争の場合、立場がどうであれ、戦場で行われている事実は、「人間と人間の殺し合い」に他なりません。

まず、それらの事実を認識した上で、自分の立場や価値観に照らし、評価を行い、その結果に基づいた言論や、行動を行うべきだと思うのです。

僕の場合、「自分の価値観に基づいた主張」が結構強いわけですが、僕の主張さえ、「板倉主義に偏った主張」だと思っています。
(であるからこそ、主張する意味があるわけです)

但し、言論の前の「事実認識」は、しつこくやります。

「それは一体どう言う事なのか?」「誰が創造し、誰が奪い、誰が得をし、誰が損をし、その結果、何が起ころうとしているのか?」を、可能な限り考えるようにしています。

さもなければ、「事実認識の上での評価」ではなく、「一見、真っ当な主張に騙される」ことになります。

以下、例えばシリーズ・・・

例えば・・・

デイトレーダーの現場とは、「経済価値の奪い合い」でしかないわけです。「デイトレード」という行為を通じて、何か他の新しい発見があったとしても、「事実として価値の奪い合い」であることに違いはありません。

間違っても、価値創造への貢献ではありません。

例えば・・・

「株主価値の向上」と一見、真っ当な意見を訴える一方で、やってることは「単なる株主価値の取り崩し」でしかない「配当を迫る」だけの人。

株価が価値に対して本当に低いなら(=割安なら)、配当よりも「自社株買い」により株主へ還元する方が遥かに合理的です。

「目の前にある現金や不動産にしか価値を見出せない人」には、わからないのだろうケレド。というか、「短期トンズラ系ファンド」の場合には、「まとめて高く買ってもらうか」、または、「現金を引き出す配当」の都合が良いのは、よーくわかりますが。

いわゆる一般の方が、「経済や金融のプロ」と思い込んでいる人の中でさえ、「配当=株主価値の増大 ≒ 時価総額の増大」と思い込んでいる人がいるんですから、呆れてしまいます。

【参考エッセイ】
 ⇒ KISS 第108号「配当と時価総額」
 ⇒ KISS 第39号「配当と株主価値」
 ⇒ KISS 第11号「おめでたい経営者」

例えば・・・

法人税の見直し(増税)を迫ることが、労働者の便益を守ることだと勘違いしたどこかの政党の主張・・・企業への税負担を増やすということは、企業の「全利害関係者」に対する増税なのだが、わかっているのかわかっていないのか。

例えば・・・

「ネットとテレビの融合」は、確かに進むだろうし、確かに面白そうだけれど、莫大なコストのかかる「買収」でなはなく、「アライアンス(提携)」の方が合理的なわけだし、「議決権取得による強引な手法」でなければ、提携さえ出来ないのならば、相手にとって提携の合理性がないのかもしれないし、「そもそもあなたじゃなくても、相手はたくさんいる」と相手は思っているのかもしれないわけです。

現在のネット企業の経営者は、自社の株価が、事業価値に比べて「高すぎる」と認識しているのでしょう。

だから焦って、「実態経済価値=テレビ局など」を、「今の内に手に入れよう」とするわけです。「箱と箱をくっつけただけ」で、価値が生まれるなんてことは、ほとんど実例無いのですが。AOL創立者のスティーブ・ケース氏の二の舞にならないように。

「コンテンツを生み出す人たち」と、「誰かが生み出したコンテンツを配信する人たち」って、文化が違いすぎるんです。

ネットメディア(=中間媒体)が、テレビ局(=これはメディアではなく、コンテンツ創出+電波メディア)を欲しがるのは、わからなくは無いけれど。

2005年10月18日 板倉雄一郎

PS:
それにしても、政治家ってのは、便利な職業ですよね。
公私の区別が一人の人間にあるわけですからね。

側近:「首相、昼食は先ほど食されましたよね?」
首相:「いや、さっきのは、私人としての昼食で、今度は公人としての昼食だ」
な~んてね。(笑)

我々民間人にも、そういう便利な解釈が出来る法律でも作ってくださいよ。

女:「あなた、オフィスの彼女と寝たわね」
男:「ああ、あれは、仕事上の僕が寝ただけだよ。今は、私人としての僕だよぉ~」
女:「あらそう、あなた一体いくつ仕事持っているわけ?」
男:「10種類ぐらいかなぁ~」





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