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Deep KISS 第77号「バフェット氏の行動」

またまたバフェット氏発言になります・・・

<投資家バフェット氏、米経常赤字膨張に警告>

 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が、膨張を続ける米国の経常赤字はドルの下落をもたらし、米国でインフレを誘発する可能性があると警告した。6日、同氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイの年次株主総会で株主からの質問に答えた。

 同氏は過去数年間で米国の経常赤字が2倍になるなど不均衡問題が深刻化していると指摘。今後、ドル売り圧力が高まる可能性があり、「ソフトランディング(緩やかな調整)で済むかは疑わしい」と、 大幅なドル安が起こりうるとの見方を示した。

 ドル安対策としては「ドル以外の通貨で利益を稼ぐ企業に魅力を感じる」とし、外国企業へ投資を広げる考えを明らかにした。これまでドル以外の通貨に直接投資してきたが、ドルが強かった昨年は損失を計上した経緯があり、外国株への投資に関心が傾いている。

<米著名投資家のバフェット氏、日本企業買収に意欲>

 米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が、日本企業の買収に強い関心を持っていることを明らかにした。7日の記者会見で、同氏が「世界的に見て優れた企業が数多くあり、我々は日本のビジネスを買いたい」と明言した。

 同氏は日本市場の環境の変化に着目。経営に圧力をかけるアクティビストと呼ばれる株主が力を強めてきたことに伴い、企業側が「安定して経営を支えてくれる先を求めて身売りを考える可能性がある」とし、買収機会が高まるとみている。実現しなかったが、実際に交渉した日本企業の案件が過去にあったことも明らかにした。

 同氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイは、コカコーラやアメリカン・エキスプレスの大株主。買収原資となる手元現金は430億ドル(約4 兆8,000億円)に達する。同氏は株式市場で日本株を売買して収益を稼いだことも表明。「金額は小さいが、過去五年間で少なくとも日本株三銘柄に投資し、利益を上げた」という。

Mr. Buffett said he hopes to buy whole companies someday in Japan. "I think we could very well have something offered to us in Japan because you do have a number of significant businesses," he said, adding "it's not a low probability." He said increased shareholder activism in Japan is leading some managements to consider a sale to foreign companies. He added that Berkshire had worked on a deal with a Japanese company in the past but that it didn't work out.

以上、NIKKEI-NETより。

大切なことは・・・
「ドル以外の通貨で利益を稼ぐ企業に魅力を感じる」
という点です。

「米国企業」とか、「日本企業」という言葉が独り歩きしますが、
そもそも何を根拠に「その国の企業」というのかが不明確なまま議論される場合が多いですよね。

本社所在地?
工場所在地?
商品マーケットの所在地?
株主の国籍?
上場している資本市場の所在地?
従業員の国籍?
????????

たとえば・・・
所在地が日本で、
東証とNYSEに上場していて、
商品マーケットは北米を中心にした世界各国で、
従業員の多くが日本人で、
しかし、株主は米国人だった場合、
一体どこの国の企業と言うことになるのでしょうか?
ねっ、こうしてその定義を探していくと、実に根拠が不明確なことがわかります。

この点、バフェット氏の指摘は極めて明確ですよね。

彼は、「ドル以外の通貨で利益を稼ぐ企業」と言っています。

つまり、その企業の商品マーケットが、「ドルを通常の生活媒介にしていない国」であるとすれば、仮にその企業の所在地が米国であれ、日本であれ、ヨーロッパであれ、彼の投資対象になるというわけです。

と同時に、その企業の原材料や資本の調達は「どんな通貨」で行われているのかという点も吟味が必要です。

この点、単純に「いわゆる米国株」を売り、「いわゆる日本株」を買うという発想になっては失敗します。
(きっと、どこかの「株式評論家」とかいう、ワケの分からないタイトルのオッサンが、「よって日本株を買いましょう!」なんて短絡的なアナウンスをすることでしょう(笑)・・・こういう短絡的な発言には要注意です・・・注意しなくてもいずれその人のブランド価値はなくなるでしょうけれど)

マクロ経済に限らず経済は常に「フロート」しています。

たとえば「円高」と一言で表現されても、それは「ドルが弱くなったのか、はたまた円が強くなったのか」という点は議論を要します。

経済に絶対的な基準はありません。

また企業は上記のように、様々な経済圏の影響を受けます。

「お金の流れ方」を頭の中で描いてみれば、楽しく迷宮入りできますので、皆様も是非一度考えてみてください。

2006年5月9日 板倉雄一郎





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