板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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Deep KISS 第45号「インチキ撲滅のためには」

(昔から、このブログを読んでいただいている方にとっては、重複する内容であることをお断りしておきます。)

例えば・・・サギマガイ工業の「インチキ一号」という商品のインチキさを多くの消費者が見抜けず、「インチキ一号」を多くの消費者が買ってしまえば、サギマガイ工業は、経済的に発展します。

サギマガイ工業が経済的に発展すれば、サギマガイ工業は、「インチキ二号」という商品を世に送り出し、更に消費者から、経済価値を搾取することができるようになります。

インチキを見抜けない消費者は、「単に自分が損をした」ということ位は、それが表面化することで、後に気が付くとは思いますが、気が付いたその時には、既にインチキが世の中に蔓延っているのです。

メディアは、「当局」の動きによって、「手の平を返す」がごとく、一時は持ち上げていたライブドアの経営陣を、今は批判しています。呆れてしまいます。(僕の姿勢は、極めて一貫しています。昨年の今頃の僕のブログや、それを読んでいた読者がいくらでも証明してくれるでしょう。)

違法か適法か?という、下品な判断基準の遥か以前に、ライブドアの経営がインチキであることなど、少しでも金融や経済について知識のある人間なら、彼らの有価証券報告書を見れば5分で分かることです。

その証拠に一般個人投資家より、金融や、企業価値についての理解のある機関投資家の資金は、ライブドアには注がれていません。

メディアに限りません。政府自民党「竹中平蔵大臣」は、確か「経済学者」ですよね。しかも、日本経済を担っている人間ですよね。

他人に「経済を教える立場の人間」が、日本の経済を担う人間が、ライブドアの「極めて子供じみた」インチキを見抜けなかったとしたら、経済学者としても、政治家としても明らかに「失格」でしょう。

 政治家にしても、メディアのコメンテーターとしても、彼らは、広く一般に対し、重大な責任を負う立場です。そして、政治的な議論にしても、国家財政にしても、外務戦略にしても「経済」を抜きに語れることは、何もないのです。

全ての人に経済は、毎日関係するのです。なのに、その責務を認識できない連中が、経済的な知識を教えて貰えなかった人、又は、自ら積極的に学ぼうとしなかった人によって、賞賛されたりするわけです。

僕や、板倉雄一郎事務所のパートナーの基本的な哲学は、

「インチキを撲滅するためには、インチキをした人間を罰することより、インチキを見抜く知識を多くの人が得ることが根本的なインチキの予防となり、結果として、インチキを排除できるという考えの下、多くの人に、経済、経営、金融について、正しい知識を提供することによって、社会に対して貢献する。」

ということです。インチキが判明してから、法規制などによって対処するという「対処療法」では、いつまでも、インチキは発生し続けてしまうのです。

最も大切な事は、「教育という予防」なのです。

例えば・・・株式分割そのものは、違法ではありませし必要な制度です。しかし、株式分割が、単なる「両替」に過ぎないことを理解しないまま、大切なはずの資金を「投機」してしまう人がいるから、価値に対して、相当に高い価格(=株価)が付いてしまうのです。

インチキ連中は、個人投資家がそのマジックに気がつかないことを逆手に取って、個人投資家から、経済価値を搾取する「奇策」を披露しているに過ぎないのです。

制度がどうであれ、以上のことを、多くの方々が理解しすれば、1の価値しかない株式を、100という価格で買う人が居なくなるのです。

そうすれば、この例のような「株式分割マジック」は、通用しなくなるのです。

インチキが蔓延ると言うことは、「風が吹けば、桶谷が儲かる」がごとく、結果的にインチキに加担してしまった人自身にも、回りまわって、よろしくない影響が及ぶのです。

つまり、知識と品格のみが、自分と、自分の暮らす社会を、インチキから守るのです。

「源流対策」として、最も重要なのは、彼らの手口の具体性を大衆メディアで語ることではなく、基本的な経済の仕組みについての教育と、本来日本人が持っているはずの「人間としての品格」を生活者全体が「自分自身の心」に問いかけることなのです。

人に起こる現象は、全てその人の過去の行いの結果です。

全ては、「鏡」なのです。

2006年1月21日 板倉雄一郎





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