板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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Deep KISS 臨時号「株式評論家」

またまたテレビのコメンテーター批評です。
たった今、テレビ東京の「ニュース マーケット イレブン」を観ていました。

で、ご出演の「株式評論家」様が、フリップを作られて、村上ファンドによる阪神電鉄株大量取得のその後についてのコメントをされていました。

「増配による株主価値の向上」というこれまたわけのわからないフリップ。
さすが、企業価値評論ではなく、「株式評論家」ですね(笑)

正しくは、
「村上ファンドは、早期に投資便益を得るために、配当を迫る場合が多い」、
または、
「増配によって、極めて短期的には、株価が上昇する場合があるのでその状態で売り抜ける可能性がある」
であって、
「増配による株主価値の増大」なんてことは、ありません。

しつこいようですが、配当は、株主価値の取り崩しです。
詳しくは、KISS第108号「配当と時価総額」をご参照ください。

テレビだから、有名新聞だから、だから内容を信頼できる・・・こういった思い込みは、自らの損失に結びつきます。
くれぐれもご注意ください。
「それは本当か?」と、常に「自分で考えてみる」ことを忘れずに。

なぜ、マスメディアに、インチキコメントを出す人が存在できるのか?
なぜ、「株主様のため」と発言しながら、株主を毀損するオペレーションを行う経営者が存在できるのか?
なぜ、大した成果の期待できない政策を、さも「これが肝だ!」的な発言をするだけで、圧勝できるのか?
そしてなぜ、経済価値を創造しようとせず、他人から奪おうとする者が、富を得るのか?

これらすべてに共通するその原因は・・・
「ハゲタカ」のせいでもなく、
「制度」のせいでもなく、
「多くの国民のフィナンシャルリテラシーの欠如」
つまり、「教育」の問題なのです。
(戦後、我々日本人の教育を担ってきたのは、どのような方々であるか、考えてみれば簡単にわかります。資本主義国家なのに、教育現場を担っているのは少なくとも「資本主義」に根ざした方々ではないのです。)

「経済の仕組みを学ぶこと」と、「カネにガツガツすること」は、一致しません。
むしろ、経済の仕組みを知らないから、カネにガツガツするのだと思います。
経済の仕組みをしっかり教えることなく、ただひたすら「カネの話をするのはいやらしいことだ」と教わってきたように思います。

たとえば、サッカーのルールをしっかり教わった上でピッチに立てば、
「ひたすらボールに食らえ付く」ことは合理的ではない、ということも、
「多くのゴールを奪う」ことが、必ずしも勝利に結びつかないこともわかるでしょう。
(サッカーのルールでは、「相手に奪われたゴールより、一つでも多くのゴールを奪うこと」が勝利です。つまりディフェンスが大切ってことです。)

もし、多くの投資家が、企業価値についての十分な理解があれば、「価値に対して相当に安い株価」も、「価値に対して相当に高い株価」も、成り立ちにくくなります。
結果、カネに物を言わせる買収行為によるメリットは少なくなります。

たとえば、企業の買収防衛策の最も合理的な方法は、新株予約権の発行でもなければ、買収防衛策を定款に書き込むことでもなく、「資本効率が良く、かつ、適正株価を維持する」に尽きます。
市場から見て、高くも安くも無い株価が維持されれば、誰も買収しようなどとは思わないわけですし、これ以上資本効率を上昇させる余地が無いほどの経営手腕を持つ経営者を追い出そうとは誰も思わないでしょう。

たとえば、多くの国民が、経済価値と経済の仕組みについての理解を持つことができれば、経済価値の搾取はされにくくなるでしょう。

僕は評論家ではないですから、以上の「理想」に向け、自分が可能な範囲で、「実効性」のある手段を「実現」し続けます。

2005年10月7日 板倉雄一郎

PS:
とはいえ、以上の「実行」における、今年度の目玉(と本人は思っている)「おりおば」は、11月まで待たなければ、皆さんの御手元に届きません。
ごめんなさい。





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