板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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Deep KISS 第43号「違法か適法かという低次元の議論」

「株価変動に着目して、値幅取りをするつもりはありません。
仮に株式を購入した翌日に、市場が閉鎖され、
その後5年間、取引が行われない事態になっても、
私は一向に構いません。」
by Warren E Buffett.

株式投資に限った話ではありませんが、「本質的な利益」は、買った株を売却したとき(=利益確定のとき)に決まるのではないのです。
株式を購入した瞬間に、「本質的な利益(まはた損失)」が確定するのです。
一株あたりの価値が100の株式を、50で買えば、買った時点で50の内在利益が生まれ、一株辺りの価値が100の株式を、200で買えば、買った時点で100の「本質的損失」が生まれるのです。
「価値」を把握できない対象に、大切な資金を投じるのは馬鹿げています。

されらにバフェットの言葉を引用します・・・

「リスクとは、自分が何をやっているか良くわからないときに起こるものです。」
by Warren E Buffett.

昨日、東証が大引け時間前に「取引全面停止」しましたよね。
正直な話、今朝まで知りませんでした。
価値に対して投資していれば、「短期の」価格変動なんて、どうでもよいのです。
(強いて言えば、買うタイミングを見極めるために価格を見るだけです。)
しつこいようですが、価格は、いずれ、価値に対して均衡するのです。

ライブドアショックという、「風説」なのか、「事実」なのか、「定義」が曖昧な号外ニュースが流れいているようです。
はっきり書いておきますが・・・

「下がったのは、『価格』であって、多くの企業の『価値』が下がったのではない」のです。

確かに、ライブドア社の価値は、相当に下がったでしょう。
しかし、元々(少なくとも僕の価値算定では)、
同社の価格(=株価)は、その価値に対して、今回の強制捜査が入ろうが入らなかろうが、相当に高い価格が付いていたわけですから、下がって当然です。

しかし!
企業というのは、社会の中の仕組みです。
よって、社会からの影響は、多かれ少なかれ受けるわけです。
たとえば、「他社の株式を大量に保有している企業」は、今回の事件で、その企業自体の価値にも影響が出ます。

今、「ライブドアショック」を受け、
「価値に大きな下落変動が出る企業」を見つけるには、
その企業の「有価証券報告書」が頼りになります。
「保有株式」の部分です。
その企業の「資産」に占める「他社の株式」の割合が相当に大きな比率の企業は、今回の事件によって、大きな価値破壊を起こしますから、サイナラしたほうがよろしいわけです。
(厳密には、その企業が保有している他社の企業価値評価をする必要があります。)

この有価証券報告書こそが、「価値に対して投資をする」全うな投資家の「最も重要な書類」です。
ちなみに、偽造された有価証券報告書の正しい発音の仕方は、
「ユウカショウケンホウコクショ」ではなく、
「ユウカショウケンホウコクソ」(笑)
ですので、あしからず。

「違法か適法か」と議論されていますが、そんなことは非常に次元の低い議論です。
もちろん、違法はいけませんし、有価証券報告書に虚偽を記載するような経営者は、とことん叩きのめす必要があります。
当たり前です。
しかし、しつこいようですが、
「投資活動」において、また、「社会の一員」として、
「違法でなければ、なんでもあり」という考えは、非常に低レベルなことです。

たとえば・・・
「真剣に株主価値を最大化しようと努力する経営者」
と、
既存株主を毀損するMSCBによる資金調達を平気で行ったり、
株式分割直後の株主価値に対して相当に高い価格で、個人投資家に自社株を売りつけたりする、
「積極的に株主を毀損しようとする経営者」
と、
そのどちらも、「適法」であるからという理由で、同じカテゴリーの経営者ってことではないでしょ。
「違法じゃないから、OKでしょ」ってことなら、上記のどちらも同じカテゴリーに入ってしまうわけです。

上場企業の経営者とは、
「広く一般から資本を調達できる立場」=「多くの人の経済価値に対する責任のある立場」なのですから、「違法か適法か」などという低次元で評価すべき対象ではないのです。

「違法か適法か」というくだらない議論が、昨年のライブドア騒動のときから続いています。
企業価値について(←実践・企業価値評価セミナー)も、
資本市場メカニズムについても、
企業の経営オペレーションが企業価値に与える影響について(←アドバンスセミナー)も、
有価証券報告書の読み解き方(←今度新しいセミナーでやります)も、
良く理解している僕は、上記に該当する企業の経営は、
「違法か適法かという以前に、インチキ経営である」
ということが良くわかります。

「適法なら何でもあり」という考え方は、
その人の行動規範を、他人が作った法律に依存するということなのです。

そんな人間に、なりたくないですよね。

たとえば、MSCBを過去に発行した企業を調べてみてくださいね。
あのビルの住人や、IT企業と呼ばれるが実は単なるマネーゲーマーの経営する企業の多くが、(転換価格下方修正条項付き&10%以内の有利発行付きの)MSCBを発行しています。
彼らにどんな意図があろうが、MSCBは、既存株主を明らかに毀損するオペレーションです。
これは、価値観の違いなどではなく、明らかなことなのです。
よって、MSCBを一度でも発行した企業の経営者が、いくら口先で「株主を大切にしています」と言っていたとしても、それは「嘘っぱち」なのです。
僕は、僕自身の知識と人格をかけて、上記のことを訴えさせていただきます。

(ちなみに、何度も書いていますが、米では、MSCBなどと表現しません。
「Death Spiral Convertible」と表現します。)
MSCBだけでも、十分に「インチキ」ですが、その上MSCBの引き受け証券会社に、「貸し株」までする経営者は・・・それこそ本当の「社長失格」です。

株式分割そのものは、全く違法ではありません。
しかし、株式分割(=両替に過ぎない)ことを理解できない「なんちゃって投資家」によって、価値に対して劇的に高い株価が形成されてしまうのです。
そのような「なんちゃって」から経済価値を搾取しようとする経営など、「経営」とは呼べません。
つまり、インチキを見抜けない(=知識がない)「なんちゃって個人投資家」が増えるということは、インチキ企業が蔓延るということなのです。

貴方自身の経済的な損得も重要でしょうけれど、
あなたの行動は、間違いなく社会に影響を与えるのです。
企業価値に対する理解のないまま、株式投資をするべきではないのです。
貴方自身と、あなたの暮らしている社会のために。

経済について、経営について、金融について学びましょう。
これらを学ぶことと、カネにガツガツすることとは、基本的に関係ありません。
むしろ、知らないからこそ「価格変動」を追いかけることになってしまうのです。

2006年1月19日 板倉雄一郎

PS:
当事務所が開催するセミナーの中で、最も基礎的な経済とお金に関するセミナー受講を募集中です。
詳しくは、左フレームの活動内容から「おりおばオープンセミナー」をご覧ください。
当事務所の哲学は、
「多くの方に、今いる環境=資本主義経済の仕組みを伝えることによって、インチキを排除し、個人が社会に対して提供した価値に応じて、経済価値配分がなされる社会の実現」です。
インチキを撲滅させるためには、インチキをやる人間を捕まえることではなく、インチキを見破る知識を多くの人が持つことだと、当事務所は考えています。

PS^2:
たまーに、読者から、「板倉さんは、ホリエモンが嫌いなんですね」なんてメールが届きます(笑)
もちろん、嫌いです。
しかし、嫌いな理由は、

お金儲けているからとか、
マスゴミにですぎとか、
顔がガマ蛙ににているとか、
カイテン・カイテンとCMに出ているからとか、

(以上、Nagoya濱ちゃんのブログより)
そんな理由で、嫌いなのではないのです。

「株式投資について良く理解しないまま、株式投資を始めた人を、(適法であっても)食い物にしていることが、僕には良く見えるから」嫌いなのです。

この点、誤解のなきように。

PS^3:
あの頃、を思い出しますね。
あの頃のエッセイをご覧いただければ、僕の主張に一貫性があることがお分かりいただけるでしょう。
僕は、マスコミと違って、「風見鶏」ではありません。





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