板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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Deep KISS 第12号「問題解決方法」

「問題は、それを具体的に意識したときに解決している」
By Yuichiro ITAKURA.

当事務所主催「実践・企業価値評価シリーズ」セミナーでは、毎回、セミナーの最終コマにて、参加された受講生が3,4名のチームになり、特定の上場企業の企業価値評価を行います。
いわゆるワークショップです。
それまでの2日間の講義内容を基に、「自力」で理論株価の算定?Sell or Buyの判断までやっていただくわけです。
これまで9回行われた合宿セミナーでは、理論株価の算出まで時間内に到達できなかったチームは一つもありません。
もちろん、トンチンカン理論株価は、毎回少なくとも一つのチームが出してくれるわけですが(笑・・・おかげで、どこが間違っているのかまで講義できるので幸いです)

トンチンカン株価が算出される場合の主な原因は、設定数値の相関関係を意識できなかったと言うものです。
将来業績予測を行うときの、たとえば・・・
減価償却費(DA)と、資本的支出(=投資キャッシュフロー=CapEx)の関係、
資本的支出と、翌期以降の売上高の関係、
売上高の変動と、変動費の関係(固定費と変動費の分解)
高効率事業への資本的支出と、投下資本利益率の関係
投下資本利益率と、株主資本コストの関係、

まあつまり、子供教育に置き換えて簡単に言えば・・・
教育費を増加させたのに、成績が一定であるとか、
食費を増やしたのに、体重が増えていないとか、
大きくなったのに、食費が一定だとか、
小さい頃養育費がかかったのに、大きくなっても仕送りをいただけないとか(笑)
つまり、数値そのものは講義で作成したエクセルシートに埋め込むものの、様々な数値の「関連性」にまで考察が及ばず、結果、トンチンカン株価が算出される場合があるわけです。
(もちろん、その場で指摘して、「ああ、なるほどぉ!」となるわけですが)

特に、毎度問題になるのが、減価償却費と資本的支出の関係です。
企業の価値創造とは、営業活動上得られたキャッシュフローの内、どれほどを資本的支出(=再投資)にまわし、資本的支出の結果、将来の売上高にどれほど影響を及ぼし、また一方で、資本的支出が増加すれば、数年遅れて減価償却費も増加するという循環関係にあるわけです。
ところが、この点を講義中に少なくとも一度は説明しているにもかかわらず、毎度、資本的支出と減価償却費の関係の数値設定ができないチームがあるというわけです。

第8回合宿セミナーのワークショップでも同じ間違いがありました。
僕は、「これって、教え方がまずいんじゃないか!」と思ったわけです。
(↑ 8回もやる前にもっと早く気がつけよ!ってか)
つまり問題を意識したわけです。
次の瞬間、パートナー全員に提案をしました。
「DAとCapExの関係を、企業価値創造基礎のコマ、財務補助コマ、そして将来業績予測の基礎コマのすべてでしつこくやってみよう!」と。

その後迎えた第9回セミナーのワークショップでは、どのチームもこの間違いをやってしまうチームはありませんでした。

すべての問題が、それに気がつくことによって、直ちに解決されるとは限りません。
しかし、問題が継続的に発生する場合、それには根本的な問題があるはずで、それを見つけることが出来れば、問題はほぼ解決しているといえます。
要は、「それが本当に本質的な問題なのか、もっと根本的な問題が他にあるのではないか?」をしつこく考えることが大切というわけです。

株式投資で儲けられない・・・
「あの時売ってしまったからだ」とか、
「ああ、買うタイミングが早かったからだ」とか、
そんなことが儲けられない本当の原因でしょうか?
おそらくそれは表面的な問題に過ぎません。
本質的な問題は、企業価値算定が出来ていないことが問題なのです。

子供や犬の教育がうまく行かない・・・
「しっかり叱らなかったからだ」とか、
「ちゃんと監視していなかったからだ」とか、
そんなことは表面的な問題でしょう。
本質的な問題は、「管理より教育に力を注がなかったから」ではないでしょうか。

事業がうまく行かない・・・
「もっと売上を伸ばす営業努力をしなければならない」とか、
「あの社員の働きが悪いからだ」とか、
そういうことは、経営者自身の問題です。
本質的な問題は、そもそも儲かるビジネスモデルなのか、売れる商品なのかってことです。

素敵な異性をゲットできない・・・・
「私がちょっと太めだからだ」とか、
「互いに忙しくて時間が避けないからだ」とか、
そういうことじゃないでしょ(笑)
あなたが「欲しい欲しい」と、相手を所有することばかり考えているからです。
好きな異性がこの世に居るだけで幸せじゃないですか。

あらゆる問題には、原因があります。
その原因の本質にたどり着ければ、
それを発見しただけでハッピーになります。
それを発見できれば、あとは体が勝手に動くものです。
問題は、その根本的な原因を発見できたときには、既に解決しているのです。

「問題の原因は判明したのだけれど、解決しないよ」という方、
その場合、そもそもあなたの欲求そのものが実現不可能という問題を抱えているのではないでしょうか?

2005年10月26日 板倉雄一郎

PS:
いわゆる、ニート族と、それを話題にするメディアとかに言いたい。
ニート族へ・・・
何もしたくないなら、何もしなければいいじゃないですか。
何もしないことが、あなたたちのやりたいことなのでしょうから。
そのうち、体が勝手に動き出します。
(↑ って、ニートがこのWEB観るわけ無いか(笑))

ニート族を扱うメディアへ・・・
誰かの問題を他人が解決することなど不可能です。
問題は、その本人が気づき、行動を始める以外に解決不能です。
ほっとけばいいのです。
かまいすぎるから、調子に乗って、「何もしないと、話題にされる」と勘違いするのです。

僕は、現在のビジネスの告知を、ほぼ100%このWEBで行っています。
押し付け広告(メルマガ、WEBバナーなど)は、一切使っていません。
その結果、「今日も知りたい、明日も知りたい」と能動的な知的好奇心を持つ方だけがこのWEBにいらっしゃいます。
結果、「ファイナンスなんて、世の中の仕組みになんて、特に興味が無い」という人を、僕は相手にしなくて済むわけです。
「知りたい・・・きっと自分への投資になる・・・きっと将来豊かになる」と積極的に思う方だけを相手に出来るのです。
これほど効率が良く、やっていて気持ちよく、自身の励みになることって他にないですよ。
社会に対する価値提供は、気持ちのいいものですよ。





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