ライブドア広報の乙部女史がインタビューの答えの中で、泣きながらに「堀江は純粋で、誤解されやすいんです。」とのたまう。
疑惑の下、株価が暴落している上場企業の広報なら、そんなことより、まずは「社会に対する謝罪」を言うべきではないか。
百歩譲って、彼らの手口に「違法性」が無かったとしても、まずは、「多大なご迷惑をおかけしています。」という出だしから、イイワケを始めるべきだろう。自分の彼氏をかばっている場合ではないはずだ。
堀江君のブログは、一切見ていないが、読者から送られてくる情報の限りでは、「私は身に覚えがない」と訴えているらしい。
この件で既に、人ひとりが亡くなっている。自分の仲間が死んでいるのだ。
自社の株主や、自分の仲間のことを「慮る心」を彼は持っていないのだろうか?
自らの行いが、社会に対して非常に大きなインパクトを与えている。
この件で、(価値に対して価格が非常に高いことを認識できなかった個人投資家の自業自得ではあるが)個人投資家が大きな損失を被っているのは事実だ。
千歩譲って、堀江君が本当に「何も知らなかった」としても、先ずは、「株主の皆様に、多大なるご迷惑をおかけしています。」という言葉が、あってしかるべきだろう。
彼らは、常に「自己防衛」と「自己利益」しか考えていない。
こんな連中が上場企業として認められるのならば、証券市場は、合法賭博場でしかなくなってしまう。
企業価値の最大化が経営者の最も重要な仕事であって、その結果として、市場がその価値を認め、株価が上昇し、時価総額が増大するのが市場原理であり、企業経営だ。
上場企業の経営者が、価値より、価格(=時価総額)に、唯一の成果基準を設けてしまうのは、それこそ「価値と価格の違い」を理解しない個人投資家にも、責任がある。結果として、投資家の責任は、株価下落というカタチで取らされるわけだが。
誰か他人の運転する車に、お金を払って乗り込むとき、運転手が安全に運転できるかどうかを見極めるべきは、行政なのか?運転手を雇っている会社なのか?違うだろ、自分自身だろ。
ライブドアに関しては、証券取引法違反があろうが無かろうが、十分に「投資対象から外れる企業」である。違法か適法かを議論する遥か以前に、平気で自社の株主を毀損する経営者である。こんなことが見抜けないのなら、株式投資などするべきではない。
全ての関係者が、「自らの防衛」ばかりを考えている。
多くの人が、「自らの金儲け」ばかりを考えている。
それでも、「何かおかしい」と感じていた人が、この世に実はたくさんいるのだと僕は信じたい。
事件の真相をニュースで追いかけるだけではなく、今こそ、投資対象である「企業経営と企業価値」について学ぶべき時であり、投資活動が社会に与える影響について学ぶべき時なのである。
価格変動だけを頼りにした個人投資家が、堀江君を生み出してしまった原因の一つである。企業価値についての理解も無いまま、調子に乗って「株式投資入門書」や「価格変動分析」などを出版する人間もまた、原因の一つである。
ろくに調べもせず、ただ単に有名だからという理由だけで、堀江君を選挙に利用した(=お墨付きを与えてしまった)政党も、原因の一つである。
今回の事件に「結果的に」加担した人間は、実はたくさんいるのだ。
自己防衛の前に、己の社会に対する責任を少なくとも自分の中で評価してみるべきではないだろうか?
2006年1月23日 板倉雄一郎
PS:
「サンデープロジェクト」では、投資の意味、価値把握の重要性を訴えたかった。しかし残念ながら、田原さんの得意な領域に引っ張られてしまった。
「次回」は、そんなことが無いように、僕の主張をしっかり伝えたいと思う。