(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
板倉雄一郎事務所の渋谷です。
このサイトのエッセイの読者の方には起業家志望の方も多いと思います。
実際僕の周囲でも、起業したい、経営する会社をIPOさせたい、会社を大きくしたい、といった夢のある話をよく聞きます。
ここでまたまた質問ですみません(笑)・・・では、起業やIPOの目的は何でしょうか。別の言い方をすれば、「何のために」、起業やIPOしたいのでしょうか。
こ
こ
は
考
え
る
時
間
で
す。
一般的な回答として、以下のものが考えられると思います。
1. よく分からないがとにかく起業したい。
2. 自己実現のため。
3. 短期間で大金を手にしたいから。
4. 上場企業の経営者という「名誉」が欲しい。
5. 自分の得意分野で、世の中に貢献したい(できそうだ)から。
6. とにかくその仕事が大好きで仕方ないから。
7. ある分野で世の中を良くしたい、社会貢献したいという
「強い思い」がある。
多少意味がかぶっている部分もあるかもしれませんが、大枠として上記のようなところではないでしょうか。
これらのうち、1~4が(建前でなく)、「本音」としての目的ならば、起業についてはもう少し考え直した方がいいのではないかと思います。
では、上記が本音で何がいけないのでしょうか。
1つづつ解説してみましょう。
まず1は「起業」自体が目的化してしまっています。
通常、真っ当な「起業」というのは、それ自体が目的なのではなく、「起業」という「手段」を通じて、何か本来の目的があるべきだと思います。
それは「お金」であったり、「やりがい」であったり、「社会貢献」であったり、人それぞれですが、「起業」そのものが目的というのは、ちょっとおかしいと思います。
「起業」や「会社経営」自体が目的の人は、実は「会社ごっこ」がしたいだけの可能性があります。
僕の知人で、親から譲り受けた不動産からの家賃収入で、全く問題なく生活できる人がいます。
その人は「会社ごっこ」をしていて、株式会社の形態で事務所を構え、毎日出勤しては朝から晩まで机にすわって、「ボーッと」新聞や週刊誌を読んでいます。
そして必要もない社員を雇い、その社員も毎日その経営者と同様に過ごしています。
当然ながら毎月毎月、赤字を垂れ流し続けているのですが、家賃収入の範囲内なので、倒産もせずにやっていけています。
まあ、それは極端な例としても、本来の目的がなければ、「会社ごっこ」になってしまう可能性は大なのです。
次に2の「自己実現のため」はどうでしょうか。
これも1と同様、目的が曖昧ではっきりしません。
その「自己実現」の中身が何なのか、具体的に明確化する必要があります。
では3の短期間で大金を手にしたいというのは、どうでしょうか。
お金を手にしたいというのも、実は最終的な目的にはなりえないのです。
なぜなら、お金を何かに使うことによって初めて、その人にとって有用な「価値」が得られるのであって、お金それ自体は単なる紙切れだったり、コンピューターシステム上の数字の羅列だったりするだけです。
ではさらに、お金を得る目的を考えてみましょう。
高級外車に乗りたい、豪邸に住みたい、毎晩「銀座」や「新地」で豪遊したい、お金を武器に理想の異性をモノにしたい・・・etc
人それぞれ、色々あるでしょうね。
しかしそれらの「欲しいモノや状況」も突き詰めて考えたり、実際に手にしてみると、実は本当に求めていたものとは、違ったりする場合が往々にあります。
そのあたりについては、また別途機会があれば詳しく書こうと思います。
またお金を得たからといって、実際に人が必ず幸せになるかといえば、そうではないのです。
例えば一例を挙げると、これまた僕の知人女性の話です。
中堅企業の経理課に勤めていた彼女は、高卒にもかかわらず一生懸命仕事をして、取締役経理部長にまでなりました。
そして、その会社が上場を目指すことになり、CFOとして必死に仕事をして、結果的に上場に成功します。
上場後、元々の持ち株やストックオプションで、自分独りなら一生暮らせるぐらいの大金を手にしました。その後、上場に至るハードワークで疲れた彼女は、仕事を辞め、気楽に海外旅行に行ったり、自由気ままに暮らしていました。
そんな彼女に、僕は「悠々自適でいいですね」と尋ねたところ、「全然良くない」との返答が返って来たのです。
彼女曰く、必死で仕事ばかりを追いかけたため、旦那との関係がこじれて離婚に至ってしまい、折角買った家も元旦那にあげたそうです。その上子供もいなかったため、完全に一人ぼっちになってしまい、毎日退屈を持て余しているそうです。
以前はあんなに行きたかった旅行も、自由に行けはするけど、一人で行っても虚しいだけで、全然楽しくないということでした。
つまり彼女が本来求めていたものは、「家族との楽しい時間」であり、それはお金では買えない訳です。
少し話がそれましたがお金によって、本来得たいものが、本当に得られるのかはよくよく考える必要があり、お金は万能ではないという事です。
そりゃそうですよね。
仮に人の100倍お金を持ってて、100倍の値段の高級料理を食べれたとしても、100倍美味しくて100倍幸せな訳はないですし、100倍魅力的な異性と付き合えて100倍幸せな訳ではないです。さらに100倍の人数の異性と寝れて、100倍幸せな訳ではないですよね。(時間をかければ、人数をこなすのは可能かもしれませんが、少なくとも100倍幸せとはならないと思います。)
話を本題に戻します。
それでも、どう考えても「お金」によって欲しいものや幸せが得られるとしましょう。
その場合でも、「起業」や「会社経営」が、その目的に最適な手段かどうかは、まだ疑問の余地があります。
起業や会社経営というのは、決して「楽チン」なものではなく、相当に厳しく大変で、苦労が多いものです。つまりそれだけの「苦労」をしてでも「起業」することによって稼ぎたいのかをよく考える必要があります。
手にしたいお金の額にもよりますが、お金を得る方法は「起業」以外にも色々あります。例えば自分の好きな仕事や、得意分野を活かした「労働」。
それから、「資産運用」や「投資活動」。それらはきちんと勉強して、真面目に、真っ当に行えば、「起業」より遥かに苦労が少なかったり、楽しみながら目的のお金を手にできる可能性があり、むしろその方が合理的なケースも多々あると考えられます。
「お金」を得たいという事に対して、全面的に否定するつもりはありませんが、その真の目的や、実際に必要な金額はいくらなのか、また、その時期はいつまでなのか、などをよくよく考えた上で、起業を選ぶのか、それとも別の方法を選ぶのかを決定したほうがいいと思います。
また、大金を得られる場合でも、その裏で(合法・違法にかかわらず)社会に提供した「価値」より遥かに大きな金額を得ようとすることは、極論すれば他人の金を「奪う」ことに他ならないので、そこまでしてお金を得たいのかもよく考える必要があると思います。
つまり、突き詰めて考えれば、「お金」が目的の場合や、特に「大金を得ることだけ」が目的の場合、「起業」が最適で合理的な手段とはなりえないケースが多々あるのです。
ちょっと長くなってしまうので、続きの4~7についての解説は、2週間後の次回10月25日に書こうと思います。
2007年10月11日 T.Shibuya
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