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セミナー卒業生のその後 第8回「トップアナリスト」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

こんにちは。パートナーの渋谷です。

先週末のG7で発表された行動計画を受け、欧州各国を皮切りに米国も矢継ぎ早に金融機関への公的資金注入を発表しました。その後暴落相場は一時落ち着いたようにも見えますが、昨夜はまた欧米とも市場は軟調のようです。当面の危機は回避したようにも見えましたが、それだけの資金量で本当に十分なのか、また不良債権の金額がさらに増加する可能性、さらに実体経済への影響等、今後とも予断を許さない状況はまだ続きそうですね。

ところで、ここのところ金融不安や暴落や恐慌一歩手前などの暗いニュースが多い中、今回は少しでも明るい話題をご提供しようと思います。

今回は、当事務所セミナーを受講後、証券会社のアナリストに転身された方が「トップアナリスト」として投資情報誌で紹介されたという話です。

その方(以後Sさんとします)のアナリスト転身についての話題は、以前のエッセイで少し触れた事があります。

それをお読みいただいた方には少し繰り返しになりますが、Sさんは元々理系出身で、東証一部上場のある製造業の会社に勤務されていました。そして当事務所セミナーを受講いただいた後、証券会社の入社面接を受けられたのですが、その際セミナーの知識をご活用いただき、面接での受け答えをされたそうです。

するとその面接官は、これまで数多くの面接はおろか、社内においてもあまり聞いた事がない高度な、企業・株式・ファイナンスに関する知識に対して、非常に驚かれたそうです。

そしてその結果Sさんは、即アナリストとして採用となり、その証券会社に入社されました。その会社では、他業種出身のアナリスト未経験者が、入社して即アナリストとなるのは異例の事であり、通常は同業他社でのアナリスト経験がある場合か、もしくは社内の他部門で現場経験を積んだ人でないとアナリストにはなれないそうです。

入社後、建設業界などを担当したSさんは、着実に経験と実績を積み上げていきました。

そして最近、米スターマイン(StarMine)というアナリスト格付け会社による、推薦銘柄パフォーマンスランキング、他産業部門の「2位!」に見事ランクインしたのです。

その結果を受けて、誰でも知っている某著名経済系出版社の出している、経済・投資専門誌に「トップアナリスト」として紹介されています。
(ご本人の希望により、個人が特定できない書き方をしています)

経済誌での紹介の話を知って、僕も早速その本を購入して読みました。
するとその記事には、鋭い切り口でかつ説得力のある、Sさんの分析が紹介されていました。

そのポイントを要約すると、
・ 建設業界のうち、ゼネコンは構造的問題を抱えて今後も厳しいが、サブコンと呼ばれる分野のうち、空調工事と通信工事に注目している。
・ 空調工事分野は、省エネルギー、CO2削減への社会的関心が益々高まりつつある環境に加え、2009年4月に省エネ法改正を控えている事もあって、今後、ビルのリニューアルにおける「省エネ化」空調事業が有望である。
・ 通信工事分野では、ベルによる電話機発明から100年以上続いた交換機から、全ての通信をIP化するという技術的な大転換期に来ており、景気の先行きが不透明な中でも、通信キャリア各社などの安定的な設備投資が期待できる。
・ それら有望分野の会社には、バリュエーション面で相当に割安な銘柄が多くあり、その中で特に有望と考える銘柄を何社か紹介し、各社の概要と注目理由を明記している。
といった感じの内容です。

紹介銘柄の中には、ここのところの暴落中にも、あまり値を下げずに踏ん張っている会社や、以前から僕自身が長期保有目的で投資しる銘柄も入っていました。
ですからさらに、紹介されている他の銘柄も詳しく調べてみて、投資を検討しようかという気持ちにもなります。

このように、セミナーを受講いただいた方が、その後素晴らしい活躍をされているのは、もちろんご本人の実力と努力によるものが大部分だと思います。
にもかかわらず、Sさんからいただいたこの件に関するメールのコメントには、「これは確実に、板倉雄一郎事務所の皆さんによるセミナー受講のおかげですので、私としても大変感謝しております。」との一文がありました。

事務所のセミナーが少しでもお役に立っているとしたら、非常に嬉しく、喜ばしい事だと思いました。

ご意見ご感想、お待ちしています!

2008年10月16日  T.Shibuya

PS)
最近、僕もプット買いで少々利益が出たのですが、日本株全体の下落に張るのは、あまり気分がよいものではありません。
そこで実は先週末に、ヤバイと言われている会社を色々調査しました。その中で、CDS値が破綻前のリーマンの値を大きく上回っていて、かつ経営オペレーションがインチキで・・・という会社2社について、注目しています。
そしてその2社について、何より注目している理由は、日本社会に必要かどうか、また場合によっては不要どころか、「社会悪」じゃないかという観点からの判断です。
そういう理由より、これらについては、心置きなく下落方向に張れるため、個別銘柄のプット買いを検討しています。

PS2)
米国の金融不安の解消には、最低でも300兆円程度の資金投入が必要という説もあります。
アメリカ政府は25兆円の公的資金注入を発表しましたが、これは金融機関の総資産に対して、わずか0.026%。それに対して、日本が金融危機の際に投入した公的資金9.3兆円は、金融機関の総資産に対して1.8%だそうです(ソース;TV東京系の経済ニュースより)。

25兆円で本当に足りるのでしょうか。またもし本当に300兆円必要で、そこまでの金額をいずれ注入するとなった場合、その300兆円は誰が出すんでしょうか。
仮にどこかに出す人がいたとしても、元々薄い通貨を、これ以上希薄化して大丈夫なんでしょうか。

そこである通貨のプットを・・・・いや、これ以上書くのは止めときます(笑)。
しかし日本がこれ以上引き受けさせられるのはゴメンですから、そうならない事を祈ります。





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