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会計ばなし 第4回「引当てられる?」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの大橋です。

会社の経理部門でよく聞かれる言葉に
「これ引当金とっておくか」
「これ引当金とれるかな?」
なんてものがあります。

まさに業界用語。
会計に携わっていない人が聞いたら「!?」ですね。

引当金とは、
将来に発生すると見込まれる費用や損失を貸借対照表に計上するものです。
毎年見積もって既に計上している額を超える部分は
損益計算書上で認識しますが、
先の費用ですから当然現金支出はありません。
引当金も貸倒引当金、退職給付引当金など色々です。

貸倒引当金というのは、
売掛金、貸付金などの債権を回収し損ねたときのために
一定の割合で予め損失を計上しておくものです。

退職給付引当金というのは、
現在の従業員が退職したときに支払う退職金費用を
先に計上しておくものです。
どちらも実際に現金を積立てることはしません。

なかなか面白い引当金もあります。
トヨタの平成17年3月の個別貸借対照表を見ると、
「愛・地球博出展引当金」
とあります。

最初見たときには
「えー、それあり?」
と驚きましたが、
博覧会の規模と沢山の資金提供をしたトヨタだからこそ
認められる引当金なのだと思います。

ところで個人で考えると引当金に相当するものはありませんね。
ですから馴染みがないのだと思います。

個人は将来の支出のために資金を蓄えておくことはできます。
例えば、子供の教育費であったり、
海外旅行の費用であったり。

ただし、これら蓄えは今使えるキャッシュを使わずに
将来のために取っておくということです。
キャッシュアウトではないもののそれに近いような感覚です。

これに対して企業は費用を計上できます。
費用計上できるということは利益が減るということです。
利益が減るということは支払う税金額が減るということです。
(ただし税法上は費用(正確には損金)として認められないものもあります。)

冒頭の言葉に戻ります。
「これ引当金とれるかな?」

引当金として認められるかな、という意味ですが、
これを聞くたびに個人も引当金を計上できればいいのに!
と思ってしまいます。

個人は給与額にいきなり課税される仕組みになっています。
企業で言う売上に課税されてしまうことと一緒ですから
そう考えるときつい。

ですから、
仮に個人が引当金計上できて、
かつ、引当金控除後に課税されるとしたら、
個人は支払う税金は少なくなりますね。

「年末諸経費引当金」

こんな感じの費用を計上できたら有難い!

年末はふと忘年会のお誘いがあったり、
プレゼントをしてみたくなったり、
諸々の支出がかさみます。
クリスマスに支出予定だったのに、
その支出が突然必要無くなるという逆パターンもありますが(涙

ということで上記引当金計上。
ってそんなの無理か、、、(笑

なぜって、引当金計上の要件の中に、
その金額を合理的に見積もることができる、
とあります。
合理的に見積もれません。
少なくとも僕は(笑

そんなこんなで引当金。
またまたキャッシュアウトしていない費用が
差し引かれているものですから
会計の利益はキャッシュフローから離れていってしまいます。

困ったものです。

さて次回は「会計と税法」の話をしたいと思います。

2006年12月9日 N.Ohashi
ご意見ご感想、お待ちしております!

P.S
こんな面白い引当金があるよ!とか
個人的にこんな引当金を計上したい!
なんてものがありましたら教えてください(笑

次回のパートナーエッセイは12月12日(火)に石野さんが担当します。

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