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会計ばなし 第5回「なんで違うんだ!」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

板倉雄一郎事務所パートナーの大橋です。

いきなりですが、
会計の利益より算出される税額と、
税法の利益より算出される税額が、
なんと違う!
ということはご存知でしょうか?

違うのは知っていますが、
このことについて僕はいつも

なんで違うんだ!

と思います。

なぜかと言うと仕事上この差を計算する必要があるからです。
結構手間がかかります。
つまり面倒くさいのです(笑

世の中には立場によって意見が異なることが多々ありますが、
上記税額の違いについても同様のようです。

今、会計は国際会計に合わせようという方向に向かっています。
税法は、税金を徴収する人の目的に合わせられて考えられています。
目指す方向が違うので差が出てきてしまうのでしょう。

そして僕は仕事上で面倒な作業が増えるので
そんな差が出ないような仕組みにしてくれ!
と勝手ながらに思うわけです。

さて、会計の利益がどうであろうと
企業は税法に則って算出された税金を
支払わなければいけません。

例えば、資本金1億円の会社における
会計上の税引き前当期利益が3,000万円だとします。
通常であればここに税率40%を乗じて税額1,200万円。
この税額を差し引けば税引き後利益は
1,800万円ということになります。

しかし会計では費用として認められた
石野部長の接待交際費500万円が
税法ではなんと費用として認められないことがあります。
(当事務所パートナーの石野さんとはなんら関係ありません)

そんなに飲んだんですか石野部長、、、というのは置いといて、、、(笑
この費用として認められない500万円を足し戻すと、
利益(課税所得)は3,500万円となります。
ここに税率40%を乗じて税額1,400万円。

この税額1,400万円を会計の利益3,000万から差し引くと
税引き後利益は1,600万円となります。

税引き前利益  3,000万円
法人税     1,400万円
税引き後利益  1,600万円

会計上の利益から算出した税額は1,200万円だったのに、
税法上の利益(課税所得)を前提とした税額は
1,400万円になってしまいました。

この税額200万円の差は、
会計上の利益(3,000万円)と税法上の利益(3,500万円)の差から生じています。

接待交際費というのは当期のみならず来期以降も
税法上の費用としては認められないので、
この差が調整されることはありません。

ところが引当金や減価償却などの一部の費用は
将来費用として認められる場合があり、
そうなると話がややこしくなります。

いわゆる「税効果会計」というものであり、
損益計算書では「法人税等調整額」という勘定が生じ、
貸借対照表では「繰延税金資産又は負債」という勘定が生じます。
思わず胸焼けしそうな用語です。
会計の人はすぐ難しい言葉を使いたがりますね。(笑)

幸か不幸か企業では接待交際費だけではなくて、
色々な科目が出てきます。
ですから決算時期になると、
僕のような面倒くさがりは税法と財務会計を指して、
「なんで違うんだ!」
と頭を抱えるわけです。

今回もお約束の結論になりそうです。

会計の利益とキャッシュフローは違い、
今回の話で言うならば、
やっぱり実際に支払う税額と会計上の税額ってのは違うんだ。
ていうか、一緒にして(涙

2006年12月22日 N.Ohashi
ご意見ご感想、お待ちしております!

PS
石野さん、偶然とはいえややこしい名前を使ってごめんなさい。

次回のパートナーエッセイは12月26日(火)に石野さんが担当します。

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