板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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実践バリュエーション 第5回「年末ジャンボ宝くじ」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

皆様こんにちは。パートナーの高村です。

「実践バリュエーション」第5回です。
日々の生活の中で面白いと思った事例について、ファイナンスや
バリュエーションの観点も取り入れてエッセイを書きたいと思います。

今回は、「年末ジャンボ宝くじ」を取り上げてみましょう。

昨日20日が年末ジャンボ宝くじの発売期限でしたが、皆さんは
購入されましたか?

今年の年末ジャンボでは、なんと370人もの億万長者が誕生するそうです。
(発売総額が2,220億円の場合の1億円以上の当選者数)

かなり多くの人が当選するイメージですね。

過去の宝くじの高額当選者数を考えると、結構な人数の億万長者が
誕生しています。そのわりには、自分の周りに宝くじ億万長者がいないと
思いませんか。

この話が、先日の板倉雄一郎事務所のパートナー飲み会で話題に
なりました。まわりに当選者がいない理由として、

自分以外のまわりの人は結構当選しているが、堅く口止めされているとか、抽選機を操作して、ある「特定」の番号が当選するようになっているとか、巨大な利権が絡んでいて、深く詮索すると、ゴルゴ13に撃たれるとか、(笑)色々なアイデアが出て盛り上がりました。

ゴルゴ13に撃たれるリスクを覚悟の上、ちょっと調べてみました。(笑)

「宝くじ長者白書」なるものを発見しました。データは若干古いですが、
平成16年度の1億円以上の当選本数は、534本でした。

また、宝くじの歴史を見てみると、平成元年11月の年末ジャンボで、
1等6,000万円と前後賞各2,000万円で1億円の賞金が誕生しています。

上記の数字を使って、ざっくり計算してみます。
平成元年から平成18年の17年間で、毎年534人の当選者が誕生する
とすると、(導入したての頃はもっと少ないと思いますが、保守的に)
9,078人(=17×534)います。

17年間で、日本の人口1.2億人がほとんど変化しないとすると、
13,219人(=1.2億人÷9,078)に1人は1億円当選者がいます。

このウェブサイトのユニークユーザー数を考えると、複数の当選者が
読者にいても良さそうですね。

数字を使ってもう少し考えてみましょう。

知り合いの知り合い、その知り合いの知り合いという風に知り合いを
たどっていくと、6回で世界人口をカバーできると言われています。
例えば、1人につき43人知り合いがいると仮定します。
6人たどれば理論上は、世界人口約63億人(=43の6乗)を
カバーできます。(お互いの知り合いが重複しない前提です。)

しかし、もしあなたが仮に1億円の宝くじを当選した場合、そのことを
話せる人は、何人ぐらいいますか?

奥さん? or 愛人? (セミナーで聞いたフレーズですね。)
せいぜい1人か2人ですよね。

仮に2人とすると、先ほどの前提、13,219人に1人は1億円当選者なので、
1億円当選した人を探すためには、14人も知り合いを経由する必要が
あります。(2人の14乗=16,384人)

仮におしゃべりな人がいて、重複しない5人にしゃべるとすると、
6人の知り合いを経由する必要があります。(5人の6乗=15,625人)

結局のところ、宝くじあたった人は、その話を他の人にほとんどしない
ので、自分の知り合いに当選者がいないということでしょうか。

前置きはこれぐらいにして、ようやく本題です。(笑)

宝くじの還元率は約50%です。すなわち、平均的には、購入した金額の
半分しかもらえないことになります。
金融商品として考えると、期待収益率がマイナスの商品ですね。

では、なぜ、多くの人が宝くじを購入するのでしょうか?

臨時ボーナスが欲しいという人もいるかもしれませんし、
公共事業に寄付したいと考えている人もいるかもしれませんし、
自分は強運の持ち主だと考えている人もいるかもしれません。

例えば、
0.001%の確率で1億円もらえて、99.999%の確率で何ももらえない場合と、
必ず3千円もらえる場合とどちらを選択しますか?
(確率はあくまで仮の数字です。)


期待値は、前者千円で、後者3千円となり、期待値で考えると、
後者の方が良い選択といえます。

しかし、「1億円」という響きに惹かれて、その確率を過大評価し、
また、「3千円」という金額を過小評価して、前者を選択した人も
多いとおもいます。(=宝くじが売れる理由)

人間の心理をうまく利用していますね。
実際、最高賞金額が大きくなるほど、宝くじの売上は上昇するようです。

コツコツと日銭を稼ぐより、短期でドカンと一山あてたいという思いは、
理解できますが、相当リスクが高い(=成功確率が低い)ことを
認識する必要がありますね。

事を急いだり、欲を出したりして、成功確率の低いことに手を出すよりは、
ある程度の確率が読めて、リスクコントロールできる年率30%ぐらいが
ちょうどよいのではないでしょうか。
年率30%という数字は人それぞれで異なると思いますので、
なかには年率10%や50%の人もいるかもしれません。

成功確率の低い困難なことに立ち向かうなと言っているわけではなく、
そういった局面に遭遇した場合は、十分に調査し、準備することで、
可能な限り成功確率を高める努力をすることが重要だと思います。

「失敗の本質は、スタートアップ時に潜んでいるのです。By板倉雄一郎」

参考エッセイ:ITAKURASTYLE「必要条件≠十分条件」

2006年12月21日  Takamura
ご意見ご感想、お待ちしています。

PS.ということで、私は-50%の期待収益率の商品を買うのをやめました。

次回パートナーエッセイは、12月23日(土)に、Ohashi氏が担当します

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