板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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実践バリュエーション 第8回「巨大詐欺グループ」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

パートナーの高村です。

先日の日経新聞を読んでいると驚くべき記事を見つけました。
沈船から財宝を引き揚げる事業に投資して、投下資本が半年で2倍に
なるという詐欺事件です。日経によると、1万3千人から5百数十億を
集めたらしいです。一人あたり約400万円の投資金額ですね。

半年で2倍になるということは、1年で4倍、すなわち、
年率300%(=400/100-1)のリターンです。

結果を見て詐欺だというのは非常に簡単です。(過去のチャートを見て、
ここで買って、ここで売ると説明するようなものですね。)

しかし、目の前に投資案件があって、投資対象が明確な場合、
どれが詐欺で、どれが真っ当な投資なのか、判別するのは非常に難しい
と思います。

今、皆さんが投資している商品であっても、あとから振り返ってみると、
詐欺だったということがあるかもしれません。
その投資が、詐欺ではなくて、真っ当な投資であるということを、
どのようにして、説明できますか?


それを感じた面白い事件がありました。

2005年11月頃に、某アメリカブランドのクレジットカードを取得しました。
通常550ドルする年会費が1年間無料になるキャンペーンでした。
(現在、キャンペーンは終了。)

同等のサービスを有するクレジットカードを日本で申し込むと年会費として
10万円弱も取られます。好奇心旺盛な私は、1年間無料という甘い
言葉に誘われ、早速申し込みをしました。

カードデスクを通じて、特定の航空会社のチケットを買うと、
アップグレード、または、もう1人分チケットがもらえたり、
ホテルやレンタカーの上級会員になれたり、世界中の空港ラウンジが
使えたり、色々なわがままを聞いてくれるサービスデスクが使えたり、
などの充実したサービスがありました。

期間中、海外出張に行く機会が何度かありましたが、会社指定の
旅行代理店を使う必要があったり、航空券にラウンジがついていたりと、
このカードを有効に活用できる機会がほとんどありませんでした。
また2年目からは550ドルの年会費を支払うことになるので、
2006年11月頃に電話で解約しました。


すると、2006年12月頃に請求書が来るではありませんか!
早速、高い顧客満足度を売りにしているサービスデスクに
電話しました。さすが、非常に素晴らしい対応です。
何らかの理由で、解約手続きがうまくいっていなかったが、
すぐに対応してくれるとのこと、安心しました。


しかし、何日たっても、ウェブ上にある年会費の請求額が消えません。
若干不安になりながらも、この世界的に有名なクレジットカード会社を
信頼していました。


2007年新しい年になり、やっと、その日がやってきました。
ウェブ上の年会費の請求が無事消えました。
これで、ひと安心です。


しかし、よく見てみると、なんと銀行口座から550ドル差し引かれて
いたのです!
カードが解約されたのではなく、年会費の引き落としが完了したので、
ウェブ上から年会費の請求額が消えていただけでした。


またまた、高い顧客満足度を売りにしているサービスデスクに
電話しました。さすが、非常に素晴らしい対応です。
すぐに対応してくれるとのこと。しかし、もうその言葉は信用していません。

ここから、2-3日に1回は、国際電話です。(もちろんコレクトコール(笑))

もしかして、初年度無料で、一生、解約できないクレジットカードなのか、
とも思いました(笑)。


約1ヶ月の粘り強い交渉の結果、ようやく返金してもらえました。
普通であれば、海外・英語という壁もあり、あきらめていたはずです。
おかげで、英語でクレームを言うスキルが向上しました。

普段は温厚な私ですが、交渉中、血液の温度が2度ほど
上がっていたような気がします。


ここでふと思いました。

1998年に外為法が改正されて、個人で海外に銀行口座を
もてるようになり、口座を作る人が急増しているそうです。

確かに、日本の預金金利と比較すると、海外の預金金利は
非常に魅力的です。

こういった人達は、基本的に日本から海外口座に入金しているだけで、
現時点で、海外口座から日本へ出金している人は少ないと思います。

将来、海外口座から日本へ出金しようとしても、できなかったら。。。
冒頭の事件のようになるかもしれません。


こういった海外投資にしても、株式投資にしてもそうですが、
その投資案件、投資対象会社が真っ当かどうかの判断をするのは
非常に難しいと思います。

結局、その投資案件の運営者、もしくは、会社の経営者が真っ当か
どうか、言っていることと、やっていることが一致しているかどうかという
判断に集約できるのかもしれません。

参考エッセイ:Deep KISS 第63号「株式投資は人への投資」

2007年2月15日  Takamura
ご意見ご感想、お待ちしています。

次回パートナーエッセイは、2月17日(土)に、Ohashi氏が
担当します。

実践バリュエーション 第7回「Give and Given」